栗原のプレーをきっかけにメンタルを切り替えた後半は大健闘
オーストラリアと3試合を戦う「バスケットボール女子日本代表国際強化試合2016 三井不動産 BE THE CHANGE CUP」は2日目。初戦では41-80と大敗した日本代表は、舞台をアオーレ長岡から代々木競技場第2体育館へと移し、2戦目を迎えた。
まずはディフェンス。試合開始からゴール下に簡単にボールを入れさせず、リバウンドを取れないまでも最後まで競ってアウト・オブ・バウンズを狙う、追い込んで相手のトラベリングを誘うなど、積極的な守備で相手の出足を止めようとする。
だが、それはオーストラリアの想定内。高さのミスマッチがあるためインサイドの強さが目立つが、アウトサイドからの攻めも決して苦手ではない。第1ピリオドだけで9本打ってきた3ポイントシュートを4本決められ、日本はこの試合でも後手に回った。
第2ピリオドも流れは変わらず。吉田亜沙美を中心に素早くパスを回すも、相手守備ブロックの外でボールを動かすだけでは崩せない。相手の逆を取ってのインバウンドパスがゴール下に通った時は得点になるものの、相手を越す形で狙うシュートはプレッシャーを受けてことごとく入らない、という時間帯が続いた。
ディフェンスでもオーストラリア代表の巨漢センター、205センチのキャンベージ・エリザベスを抑えられず、失点を重ねた。リバウンドで相手に圧倒され、激しい接触プレーで長岡萌映子がプレー続行不能となるアクシデントも重なり、前半は良いところなく16-42、大きなビハインドを背負って終わる。
迎えた後半、流れを変えたのは栗原三佳だった。無得点に終わった前半、「行けると思っても相手の手が届く、それで打てなくなる」から意識を切り替え、「ブロックされてもいいから、という思い切りが必要。流れが来ていない時は我慢し、行けるタイミングにはちゃんと行く」と積極性を取り戻し、2本連続で3ポイントシュートを決める。さらにはチーム一丸となった激しいディフェンスで相手のポストアップを許さずに24秒バイオレーションを誘うと、またも栗原が3ポイントシュートを決めて9-0のラン。
ところがその直後、キャンベージとのマッチアップでファウルを重ねていた栗原が5ファウルで退場に。さらには同じくインサイドを担っていた間宮佑圭がケガで続行不能となってしまう。
これで日本代表の勢いは潰えたかに見えた。それでも、栗原の思い切りの良いプレーは、チームの停滞していたメンタルを切り替えさせる刺激となっていた。そこまで無得点だった髙田真希が、打てるタイミングで素早く放つジャンプシュートを立て続けに決めて、チームを再び勢いづかせる。髙田はこの第3ピリオド後半だけで10点を記録した。
ベンチ組が短い出場時間でも自分らしいプレーで存在感を発揮
収穫は他にもあった。重心の低いドリブルからパスを繰り出す藤岡麻菜美のゲームメークから、ミドルレンジのジャンプシュートが次々と決まる。篠崎澪はハードワークで攻守を支え、強気で切り込むドライブは明らかに相手をいらだたせた。栗原が退場した後、王新朝喜もファウルトラブルに陥ったところで投入された赤穂さくらはキャンベージとのマッチアップで奮闘、三好南穂も攻撃を組み立てつつ自らも積極的にシュートを放つなど、ベンチメンバーが短い時間で存在感を見せたのだ。
後半のスコアは39-39。後半は大健闘と言える。ただ、前半の大きなビハインドを埋めるには足りず、最終的に55-81で敗戦。これで2連敗となった。
試合後、内海知秀ヘッドコーチは試合をこう振り返った。「組織的なプレーの中でトランジションに持ち込むことはできています。ハーフコートオフェンスやセットプレーの部分でノーマークになる動きはしています。ただ、決め切れていない部分が大きい」
オーストラリアに圧倒された前半と互角に競り合った後半。どこに差があったかと言えば積極性の部分だろう。最終的に14得点8リバウンドと、第1戦に続き活躍した髙田だが「前半の内容が悪くて、チームに悪い流れを持っていってしまった。前半からしっかりゲームを作れるように修正していきたい」と語っている。
もっとも、オーストラリアの指揮官、ジョイス・ブレンダンは次のような言葉で日本代表を称えている。「激しいディフェンスをしてくるチーム。後半はオーストラリアが落ちたわけではなく、日本が良くなった。絶対あきらめないチームで常にリスペクトしている」
オーストラリアも選手選考の真っ最中で、どのメンバーも生き残りのために必死にプレーする中、後半だけでも互角に戦えたのは収穫と言える。しかし、リオ五輪で本気でメダルを取りに行くのであれば、限られた時間帯で善戦するのでは意味がない。勝つために、まだまだチームとしても個人としても向上が必要だと感じさせられる試合だった。
また、U-23日本代表はKDB生命ウィナーズ相手に66-57で勝利。第1戦は10本の3ポイントシュートが勝利の決め手となったが、この第2戦では近平奈緒子、西岡里紗を軸とするインサイドを起点とする攻めで試合の主導権を握った。KDB生命ウィナーズはポイントガードのアン・ヘジが闘志溢れるプレーで状況を打開しようと試みるが、日本のディフェンスは揺さぶられても崩れず、リバウンドでも負けずに勝ち切った。
勝つというミッションをクリアしながら、第1ピリオドから選手を多く入れ替えながら戦い、若手に国際マッチの経験を積ませることもできた。U-23日本代表にとっても収穫の多い大会となっている。