辻直人

河村勇輝に30得点されながらも、チームで戦った群馬が今シーズン初勝利

10月14日、群馬クレインサンダーズのホーム開幕となる横浜ビー・コルセアーズ戦がOPEN HOUSE ARENA OTAにて行われた。

群馬は前節に2連敗、横浜BCは前節に2連勝と対照的な開幕節だったが、この試合は前半から優位に試合を進めた群馬が100-91で横浜BCに勝利した。

群馬は開始早々にトレイ・ジョーンズと並里成を起点にして、ケーレブ・ターズースキーのゴール下、辻直人の3ポイントシュートと続けざまに得点。横浜BCは杉浦佑成の3ポイントシュートで反撃するも、群馬のディフェンスの前にターンオーバーを連発しリズムに乗れない。しかし、河村勇輝がノールックパスでジョシュ・スコットのバスケット・カウントを演出し、続いてのポゼッションでは自らドライブでアタックしてフリースローを獲得するなど食らいついていく。群馬はリードを保つべく、ペイントアタックを強調して着実に得点を重ねていく。セカンドユニットになっても勢いが衰えない群馬は、菅原暉の3ポイントシュートや野本建吾のアタック、八村阿蓮のセカンドチャンスポイントなど猛攻が続き、30-24とリードして第1クォーターを終える。

第2クォーターに入っても流れは変わらない。ペイントでの得点、テイクチャージと野本が好プレーを連発しチームを盛り上げる。さらにディフェンスでもインテンシティ高く守り、横浜BCに最初のタイムアウトを取らせた。流れを変えたい横浜BCだったが、攻め手が見つからないオフェンスが続き、ディフェンスでもピック&ロールに対応できずに苦戦。逆に攻撃の手を緩めない群馬のスコアが伸び、18点のリードでオフィシャルタイムアウトを迎える。その後、河村がドライブを主体にしたプレーメークで反撃しを許し43-54と点差を詰めて前半を終えた。

後半に入り、群馬は立て続けに辻とマイケル・パーカーが得点を挙げるなど、ボールと人が連動してリズムの良いオフェンスを展開。しかし、徐々に横浜BCの3ポイントシュートが決まりだし、リードを広げられない我慢の展開となる。5ファウルとなった横浜BCに対してオフェンスリバウンドやペイントアタックを激しく行っていった群馬がリードを広げた。しかし、タイムアウト後に2-3ゾーンとオールコートのゾーンプレスを敷いてきた横浜BCに対して、攻めあぐねた群馬はディフェンスでも後手に回ることに。キング開のアタックやジェロード・ユトフの3ポイントシュートにより、ついにリードを1桁にされた。たまらず辻とジョーンズをコートに戻して立て直しを試みるも、点差は変わらず群馬の8点リードで最終クォーターへ。

一進一退の攻防となった最終クォーター。ミスもあったものの、互いに長所を生かしたプレーが続き、10点前後の点差で試合が推移した。この拮抗した展開を打ち破ったのが辻だった。3ポイントシュートを成功させると、続けざまにドライブからのプルアップも成功させ、残り5分36秒でリードを14点に広げる大仕事をやってのける。その後、点差が詰まる場面もあったものの、並里がハーフコートバスケでゲームをコントロールし、ジョーンズが河村にマッチアップして起点を潰す。オフェンスが単調になった横浜BCに一度もリードを許さずに押し切り、今シーズン初勝利を飾った。

辻直人

辻「自分の存在価値や強みを生かせるように、チームメートとコミュニケーションを取った」

昨シーズン、2ポイントシュートでの得点割合が高かった群馬にとって、得点の伸び代と考えられるのが3ポイントシュート。リーグを代表するシューターとして注目を集め移籍してきた辻は、この試合で3ポイントシュートを9本中4本成功させて、100点ゲームでの勝利の立役者の1人となった。

水野宏太ヘッドコーチも「今日は本当にアグレッシブで、これぞ辻直人!というプレーだった」と評するように、大事なホーム開幕戦で日本人最多の17得点をはじめ、2リバウンド4アシスト3スティールと大活躍だった。

前節の宇都宮ブレックスとの対戦では「開幕戦ということもあり、フワフワしてしまった」と辻は反省を語り「チームにおける自分の立ち位置で難しい部分があったのですが、自分の存在価値や強みを生かせるように、前節から今日までチームメートとコミュニケーションを取りました。そのおかげで、今日は本当に自分自身に責任を持てたので、やるしかないという気持ちで臨みました」と新加入選手としての難しさと、1つ壁を乗り越えたことを話した。

実際、日本人最多得点のみならず、ハンドリングからのプレーメークで4アシストも記録したことは、チームメートとの連携が良かったことを物語っている。水野ヘッドコーチは「クリエイトする力を見せたときにディフェンスが寄ってくるので、パスをさばくことで、オフェンスの流れを良くする潤滑油のような役割をしてくれた」と辻を評価する。

辻自身も「プレーメークできるのが、自分の強みだと思います。前節はシューターの動きだけで終わってしまって、潰されてしまい、なかなか本来のプレーができなかったこともありました。自分はスコアをするだけが仕事ではなく、アシストで味方を生かすことができるからとコミュニケーションを取りました。それで今日はみんなが信頼してくれて、ボールを集めてくれたので、責任を持ってプレーできて結果が出たので、すごいハッピーです」と自身のプレーを振り返った。

辻が天皇杯2次ラウンドでオプアリでのプレーを経験しているものの、レギュラーシーズンでは初めてだった。5,330人と超満員だった観客を前に「(雰囲気は)めちゃくちゃ良かったですね。お客さんとの距離が近いですし、盛り上がりを肌で感じることができました。緊張感のある試合でしたけど、楽しくプレーすることができました」と、ホーム戦で感じた充実感を話す。

キャリアも長くベテランと呼べる領域に入ってきた辻だが、群馬での挑戦で新たに発見することも多いだろう。『お祭り男』と称されながらも、連敗できないプレッシャーを強く感じていたのは間違いない。しかし、そのプレッシャーを自身のプレーで歓喜に変えてみせた。今シーズンも辻がブースターと『ハッピー』を共有する瞬間が何度も訪れることに期待したい。