富樫勇樹

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

パーカーを称賛「無敵のスターをゲットしたマイク」

千葉ジェッツとアルバルク東京による強豪同士の一戦は、81-79で千葉が勝利し、今シーズン2度目の10連勝を達成した。ディフェンスから一気に走る、千葉のトランジションオフェンスが効果的に決まり、第3クォーターを26-12と圧倒したことが勝因となった。

「ファストブレイクだったり、ディフェンスもかなり堅く、かなり苦しんだ立ち上がりでした」と富樫勇樹が振り返ったように、一時は2桁のビハインドを背負うなど、前半はA東京のペースで試合が進んだ。それでも「臆せず1点、2点と少しずつ追い上げていけるチームになった」と、我慢の時間帯を乗り越えてビッグクォーターを作り出した。

そして、「マッチアップゾーンの頻度を増やした」という大野篤史ヘッドコーチの指示が功を奏し、A東京のオフェンスを停滞させた千葉は、アウトナンバーからのアーリーオフェンスやターンオーバーからの速攻を連発した。富樫は試合を通して12得点7アシストを記録したが、そのうち7得点3アシスト2スティールが第3クォーターに集中している。

それでも、この第3クォーターに富樫以上の活躍を見せたのがマイケル・パーカーだ。富樫が「マイクが乗りに乗ってた気がします。その時は1人で5人分の役割をする選手だと思っていて、無敵のスターをゲットしたマイクだった(笑)」と称賛したように、パーカーは12得点2スティール2ブロックショットを記録し、貢献度を表すefficiencyの数値は脅威の18を示した。

トランジションオフェンスが千葉の強みであるとはいえ、A東京を相手にそれを体現できたのは大きな意味を持つ。もちろんパーカーの高いアスレチック能力は称賛に値するが、それを全面的に引き出した富樫の貢献度も評価されるべきだ。それでも富樫は「彼らはアウトナンバーができた時に、常に走るというメンタルが出来上がっている選手です。ガードとしてそれは見逃さない、それだけです」と、サラリと言ってのけた。

富樫勇樹

天皇杯を思い起こさせる、終盤の失速

千葉は第3クォーターで試合をひっくり返し、最終クォーター残り3分15秒には、この日最大となる14点のリードを奪った。この時点で千葉が勝利を手中に収めていたと誰しも思ったはずだが、ここからA東京に猛追された。

慢心があったようには見えず、丁寧に時計を進めようとした結果、プレーがソフトになった印象を受けた。バスケット・カウントを連続で許してリードを吐き出し、残り7秒には馬場雄大のダンクを浴びて、ついに1点差まで迫られた。最終的に逆転を狙ったミルコ・ビエリツァの3ポイントシュートが外れて逃げ切った千葉だが、そうした展開に持ち込まれたことに問題がある。

この光景は天皇杯の準々決勝、川崎ブレイブサンダース戦と酷似している。残り59秒で10点をリードした千葉だったが、前線から激しいプレッシャーを食らい、連続でターンオーバーを犯した。そして、ラスト2秒、藤井祐眞の3ポイントシュートが外れたことで千葉が勝利した。ターンオーバーの内容に違いはあれど、同じ轍を踏んだと言っていい。

富樫も「時間がなく10点差開いている中で詰められて、最後決められたら負けるショットまでいかれたのは確実に反省しなければいけない」という。それでも「個人で解決できることだと思っているので、あまり大きい課題には感じていない」という言葉にはいささか驚かされた。

富樫勇樹

「意識を変えられれば、あのミスはなくなる」

残り13秒、富樫はファウルを受けたと思いプレーを止め、自らサイドラインを割るターンオーバーを犯した。またその直後には、サイドラインからのリスタートの場面で、5秒バイオレーションを取られポゼッションを明け渡した。富樫はそうした2試合の終盤のミスをこのように振り返った。

「5秒バイオレーションも、他の選手が空いたと思ってしまい、そこにパスが行くだろう、そしてファウルをするという思いがあり、動かなければいけないところで動かなかったです。ベースラインからインバウンドの時に、だいたい2人のディフェンスが自分についてきます。もう一人が1対1の状況なので、そっちにボールを受けてもらいたいという気持ちは少しありました」

終盤の失速は弱気なメンタルや、コミュニケーションミスが原因で起こったことだという。「自分の意識を変えられれば、あのミスはなくなる」と話し、変える自信があるからこそ、富樫はそれほど大きな問題と捉えていない。

「終わり方の部分はもちろんガードとして反省はありますけど、勝ってその反省ができるのは良かった」と総括した富樫。課題と収穫の両方が見えた試合で勝ち切ったことは、チャンピオンシップを見据える上でも大きな1勝となったはずだ。