金近廉

強心臓ぶりを発揮し、10本中6本の3ポイントシュートを射抜く

東アジアスーパーリーグ(EASL)の開幕戦で千葉ジェッツはTNT Tropang GIGA(フィリピン)を93-75で下した。

千葉Jはインサイドで存在感を放ったアイラ・ブラウンと内外バランス良く得点を重ねたディー・ジェイ・ステフェンズの2人がともに19得点を挙げてオフェンスを牽引したが、2人に負けず劣らずのインパクトを残したのが金近廉だ。ベンチから出場し、20分49秒のプレータイムで10本中6本の3ポイントシュートを射抜き、日本人選手トップとなる18得点を記録した。

金近は積極的にゴールを狙い続けたが、試投数が10本まで伸びたのは相手のマークが甘かったことに起因する。金近も「ボールマンのプレッシャーがほとんどなかったので、自分としてはほとんどフリーの状態でシュートを打てて、それを決められたので良かった」と振り返っている。

Bリーグに限らずだが、オフェンスを展開する際にセットプレーの遂行を優先し、打てる間合いであってもパスを選択する場面はよく見られる。そこでシュートを打たないと判断されれば、マークマンはヘルプに専念することができ、セットプレーに対応されてしまう。だが、今回の金近のようにシュートを狙い続ければ、マークマンは否が応でもシュートチェックに行く必要が出てくるため、『打ち続ける』ことは大きな価値がある。

ただ、実際にマークを離された状態で打ち続けることは簡単なことではない。それでも彼が打ち続けることができたのは、それだけ自分のシュート力に自信を持っているからだ。そして金近は「疲れがあったのかあまり詰めてこなかったので、自分としては本当に気持ちよく打つだけでした。そこまでやりづらさはなかったです」と言い、的確な状況判断の結果ととらえている。

金近廉

「去年のメンバーが抜けたので、誰かがそこを補っていかなきゃいけません」

千葉Jはジョン・パトリックヘッドコーチが「クリエイティブにやってほしい」と語っているように、ルールを守りながらも自由にオフェンスを展開するスタイルを取っている。だからこそ、金近は躊躇せずに3ポイントシュートを狙い続けられたともいえる。期待に応える結果を残した金近だが、指揮官は「シュートが得意なのは間違いないですが、シュートだけの選手にはなってほしくない」と、より万能的な選手への成長を願っている。「ハンドリングからドライブなど、強く身体を使ってファウルをもらってシュートを打つシーンも出てくると思います。現在、彼のシュート力にチームは助かっていますが、ドライブやペネトレーションが次のステップです」

金近も自身がシュータータイプではないことを分かっていて、ドライブとアウトサイドシュートのバランスを模索している。開幕節の長崎ヴェルカ戦でのプレーを例に出し、このように語った。

「長崎との初戦はある程度シュートが入って、ドライブが少なかったので、もうちょっとドライブを増やしていいかなと思って、2戦目に臨みました。突っ込み過ぎてしまい、フィニッシュも決まらなかったので、そこのバランスをもっと考えていかないといけないと思っています。今日みたいに引いてくれるんだったら、ずっと打ち続けるだけなので。 逆にその後詰めてくるんだったら、もっと抜きやすくなると思うので、これからもっと経験をしていって、バランスをつかんでいけたらと思います」

千葉JはEASLの開幕戦を勝利で飾ったものの、Bリーグではまさかの開幕2連敗を喫している。ロスターが変わったが、最高勝率記録を塗り替えた昨シーズンのような成績を残すには、個々の大きなステップアップが求められる。金近はその筆頭となる覚悟をすでに持っている。

「去年のメンバーが抜けたので、誰かがそこを補っていかなきゃいけません。チームメートからももちろん期待されていますし、ルーキーという言い訳はできないので、 1日でも早く良くなっていきたいという気持ちです。チームとしての完成度はまだまだですが、最後の最後で勝てるチームになっていきたいと思っています」