「このオフ、フロントは本当に良い仕事をしてくれたよ」
マーベリックスはルカ・ドンチッチというスーパースターを擁しながらプレーオフ進出を逃した。最後の2試合はドラフト上位指名権を得るべくフロントから「負けろ」の指示が出され、これを受け入れがたいチームとの雰囲気が悪化した。悔しさ、悲しみ、屈辱と、そこにあった感情はすべてネガティブなものだった。
それでも来週に迫ったチームの本格始動を前に、少なくとも指揮官のジェイソン・キッドは気持ちを新たにしている。『97.1 The Freak』に出演したキッドは、5カ月以上も試合から遠ざかっている今オフを「人生で最も長いオフだ。現役時代にプレーオフ進出を逃したのは数回だけ、コーチとしてはバックスで1回、そして今回だけ。だから滅多にないことだけど、今回のオフはいろんな意味でポジティブだった」と表現する。
「ドラフトで成功し、フリーエージェントで成功し、若くてエキサイティングなチームを作ることができた。長かったオフもこれで終わりだ」
1巡目指名権を10位から12位へと交換し、不良債権となっていたダービス・ベルターンスをサンダーに送るとともに、これで得たトレード選手例外枠を活用してキングスからリショーン・ホームズを獲得。しかも、もともと欲しかったデューク大のセンター、デレック・ライブリー二世を1巡目12位で指名し、さらにキングスからは1巡目24位で指名したオリビエ・マクセンス・プロスパーの交渉権も得ている。
センターのライブリー二世は身長216cm、ウイングスパンは231cmの本格派センター。プロスパーは機動力があって守れるウイング。キッドは「プレシーズンでは2人を先発させたい。ルカやカイリー(アービング)、グラントと一緒にね」と、2人のルーキーをいずれも即戦力として見ている。「若手はこの何週間か、ワークアウトで良い動きを見せている。スター選手と一緒にプレーさせて、そこでどんなプレーができるのかを見たい」
フリーエージェントではプレーオフで大きなステップアップを果たしたグラント・ウィリアムズをセルティックスから迎え入れ、実績あるシューターのセス・カリーは2年800万ドル(約11億円)という格安の条件で獲得できた。
カイリーとドワイト・パウエル、マーキーフ・モリスとの契約を延長した一方で、レジー・ブロックとジャスティン・ホリデー、クリスチャン・ウッド、ジャベール・マギーは放出。こうしてマブスはチームの若返りを進めるとともに選手層を厚くし、その過程で1巡目指名権を手放すこともなかった。昨シーズンは屈辱的な終わり方をしたが、再起の準備は整ったと言える。
残る心配事は絶対的なエース、ドンチッチのコンディションだ。ワールドカップを戦い抜いた彼は足を痛めており、「大丈夫とは言えない」との言葉とともに大会を終えている。それでもキッドは、ドンチッチからは足の状態についても報告を受けているとし、こう続けた。「我々のキャリアでは時に100%ではなく、99%か95%でプレーしなければならない。試合数が増えれば増えるほど、キャリアが長ければ長いほど、100%と言える選手はいなくなる。今のロスターを見る限り、ルカを40分プレーさせる必要はない。このオフ、フロントは本当に良い仕事をしてくれたよ」
「ルカが良いコンディションでシーズンに臨み、彼の目標へと突き進むのが楽しみだ。もちろん、目標とはNBAで優勝することだ」