カイリー・アービング

写真=Getty Images

「チームの力を引き出すのは、簡単な仕事ではない」

セルティックスのカイリー・アービングは、先週末のマジック戦に敗れた後、メディアの前で、チームの若い選手の経験不足を叱責した。しかし、面と向かって言われるのならまだしも、メディアの前で批判されて気分が良い人間などいない。みんなをまとめなければいけないリーダーとして不適切な行動を取ったことに気づいたアービングは、後日チームに謝罪した。そんな時、彼はリーダーの責任の重さも理解した。そして、キャバリアーズ時代を振り返り、自己中心的だった自分を引っ張ってくれたレブロン・ジェームズに電話をかけ、当時の振る舞いを謝罪した。

117-108で勝利した1月16日のラプターズ戦で27得点、そしてキャリアハイの18アシストを記録したアービングは「自分にとっても大きなことだったけれど、(レブロンに)電話して、謝った。何もかも欲しがった選手でいてしまった自分を侘びた。自分は、チームを優勝に導く選手になりたかった。リーダーになりたかった。世界のベストプレーヤーにのし掛かる責任、チームを引っ張る役割は、多くの選手に与えられるものではないからね」と語った。

「ブロンは、クリーブランドに帰ってきて、優勝する方法を自分たちに示してくれた。大変だったと思うよ。チームの力を引き出すのは、簡単な仕事ではないからね」

2010年から4年間所属したヒート時代に2度の優勝を成し遂げたレブロンは、フリーエージェントになった2014年の夏にキャブズ復帰を決断。地元に優勝をもたらすため、アービング、ケビン・ラブとのビッグ3を結成した。しかし、レブロンと共闘するまで、アービングもラブもプレーオフでの経験がゼロだった。いくらレブロンと言えども、彼らとのトリオを優勝レベルにまで持っていくのは、簡単ではなかったに違いない。

「チームを引っ張れる選手というのは、限られている。こういう話をするのに最適だと思ったのは、彼(レブロン)だった。だって、彼は今の自分と同じ状況を経験した人だから。まだ若かった自分と一緒にやってくれたんだ。俺は、若かった。22歳の子供で、とにかく全てを欲したよ。今すぐにでも全てを勝ち取りたいと思った。(2014-15シーズンは)オールスターゲームで先発出場した翌年で、彼のような選手がチームに戻ってきた。その彼に自分のプレーを合わせないといけなかった」

「ムキになった部分もあった。でも、最終的に彼が求めたものは、ベストな結果だった。彼には遺したい功績もあって、成し遂げたい目標だってあった。そういうことを思い返したら、『どうすれば、昨シーズンのチームが収めたような成功にみんなを導けるんだろう』、『どうすれば、優勝に必要なことをみんなに伝えられるんだろう』と思った」

アービングが2017年のオフにキャブズにトレードを求め、レブロンからの『独り立ち』を希望した理由の一つは、チームリーダーとしての役割に就くためだった。今もリーダーとして試行錯誤を続けているという彼は、過去の経験を踏まえ、助言を求めるならレブロンしかいないと考えた。

「今のポジションは、自分が求めたもの。責任のある役割を求めたのは自分だ。全力で取り組んでいるけれど、助けを求めることも大事。過去の行いの責任を取ることも大事。過去を振り返って、『あの時は自分が若かった。間違いも犯したよ。アンタと同じ絵を描けていなかった。シーズンが終わった時のことを想像できていなかった』と言えるのが、真の男だと思う。当時は自分のスタッツのことばかり気にして、オールスターゲームに出場することばかり考えていた。当時のレブロンにとって、そんなことは大したことではなかったんだ。彼と話せて良かった。これで、自分がやるべきことに集中できる。もちろん、彼を含めて対戦相手とは全力でぶつかるけれど、話せて良かった」

レギュラーシーズン後半戦では、リーダーとして一皮剥けたアービングが、どこまで今のチームのポテンシャルを引き出せるかに注目したい。