「追い掛けて逆転したあっちに勢いがある最後の5分間」
天皇杯の準決勝第2戦、Bリーグ王者のアルバルク東京と天皇杯前年優勝の千葉ジェッツが、最後の最後まで勝敗の見えない激闘を繰り広げた。ラスト1秒で放ったマイケル・パーカーのシュートで逆転した千葉が、80-79で劇的な勝利を挙げた。
立ち上がりに主導権を握ったのは千葉ジェッツだった。開始直後にオフェンスリバウンド3つを立て続けに取ったように、勢いで相手を上回った。富樫勇樹が開始から5分半で7得点4アシストとオフェンスを牽引し、千葉が第1クォーターで20-13とリードを奪う。それでもA東京も簡単には引き下がらない。攻守で効くアレックス・カークを軸に千葉の勢いを止めると、馬場雄大が思い切りの良いアタックで流れを呼び込む。
「特別な空間で硬いところがあったので、思い切ったプレーで切り込もうと思いました」と馬場は自身のプレーを振り返る。行けるタイミングでは迷いなくリムにアタックする馬場がチームに勢いを与え、劣勢を覆す。2桁のビハインドを背負うこともあったが粘りに粘ったA東京は、第4クォーター残り7分48分、馬場のフリースローでこの試合初めてのリードを奪った。
ここからはリードチェンジを繰り返す一進一退の攻防に。ジャワッド・ウィリアムズが3ポイントシュートを沈めて突き放したかと思えば、ギャビン・エドワーズがセカンドチャンスポイントを決めて追いすがる。富樫の3ポイントシュートに対して安藤誓哉がすぐに決め返すなど、千葉は終盤になってもプレー強度を高く保つが、A東京のディフェンスがインサイドをきっちり締めて、攻め手が富樫の個人技一辺倒という苦しい状況に。富樫も「追い掛けて逆転したあっちに勢いがある最後の5分間」とタフな終盤を振り返る。
「勝ち切ったことがチームの成長」と誇る富樫勇樹
残り1分、千葉が最後のタイムアウトでデザインした攻めは、封じられたインサイドをこじ開けてのエドワーズを狙った攻め。それでも余裕を残すA東京はファウルで止め、フリースローが得意ではないエドワーズは2本中1本成功に終わり、千葉の狙いを外す。この時点で79-76とA東京が圧倒的に有利だったが、続くポゼッションで馬場が痛恨のターンオーバー。千葉はこれを確実に得点に繋いで、残り31秒で78-79と1点差に肉薄する。
ここでA東京に時間を使われるも、隙を与えずにタフショットに追い込み、これをパーカーがブロック。残り5秒から速攻へと転じる。ボールを持つ富樫は、時間がない中で前を走るパーカーにふわりと浮かせたパスを送る。「あそこで前を走るパーカーに出せたのは信頼、今までの積み重ねかと思います」と富樫が振り返るパスがパーカーに渡る。不十分な体勢で放ったシュートは一度は外れたが、パーカーはこれを自ら拾ってゴール下をねじ込んだ。これで千葉が80-79と逆転、直後に試合終了のブザーが鳴った。
最後の最後までどちらに転ぶか分からない大接戦、昨シーズンのBリーグファイナルで敗れたことも踏まえ、富樫は今回の勝利をこう語る。「ファイナルの気持ちはもちろん忘れていませんし、昨シーズンを振り返るとほとんどの試合でA東京には接戦を落としているイメージがありました。今日も接戦になりましたけど、そこを勝ち切った。それがチームの成長だと思います」
勝った千葉は、明日の天皇杯決勝で栃木ブレックスと対戦する。
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