「2点ビハインドで終えられたことがウチの成長」
1月10日、天皇杯3連覇を目指す千葉ジェッツは、川崎ブレイブサンダースを3点差で振り切り、ベスト4進出を決めた。
千葉は川崎ディフェンスを崩しながらもシュートが決まらず、前半を2点のビハインドで折り返した。目の前の試合にただ集中しているつもりでも、どこかにプレッシャーがかかっていた。「最初に打った3ポイントは入ったと思ったのですが、ショートでした」と西村文男にも違和感があった。「普段なら入っているようなシュートがポロポロと落ちて、みんなうまくいっていない状態でした。そういう意味では3連覇への難しさ、そういう空気感があったのかと思います」
シュート確率が上がらなかったのは、プレッシャーだけが理由ではない。第2クォーター途中、川崎のシェーン・エドワーズがワンマン速攻でボールをファンブルするなど、どちらの選手もボールの滑りを気にしていた。そして、協議の結果、試合中にボールの交換が行われた。
レギュラーシーズンでもあまり見られない光景だが、昨年のBリーグファイナルでも同様の光景が見られた。結果的に千葉はアルバルク東京に大敗して優勝を逃しており西村も「ちょっと思い出しました」と苦い思い出がよぎったという。
それでも、イレギュラーがあっても集中力を切らさなかったことを西村は強調した。「それ(滑り)のせいにしてもというところはあるので、気持ちを切り替えました。ミスが多かったにしろ、前半を2点ビハインドで終えれたことがウチの成長だと思います」
ラスト1分からの試合運びに課題
後半に入ると、自慢のトランジションオフェンスが機能し始め、千葉が試合の主導権を握った。
西村は第3クォーターの終盤にコートに戻ると、チームの勢いを加速させる。ボールをプッシュし、アウトナンバーになった状況でゴール付近を固める川崎ディフェンスを翻弄するかのようにジャンプシュートを沈めた。また最終クォーターには千葉のピック&ロールを防ごうとするゾーンディフェンスに対して3ポイントシュートを沈め、この日最大となる14点へとリードを広げた。「大事な時間帯を任されているので、チームとして結果を残せて良かった」と西村はそのシーンを振り返る。
だが「川崎さんのすごいプレッシャーにウチが守りに入ってしまった」と言うように、残り1分、10点差の状況から川崎の怒涛の反撃を浴びた。ボール運びの段階からプレッシャーを掛けられ、千葉は連続でボールを失った。
「(富樫)勇樹が一番キープ力があるので、少し任せがちになっています。ボールをもらう段階で勇樹にマークマンが多い時に、自分だったり他のプレイヤーが繋がなければいけませんでした」と西村は課題を挙げた。千葉を指揮する大野篤史も「みんなボールをもらいたくないような動きになり、余計にテンパってしまった」とそのシーンについて言及している。
そうした消極的なメンタルは、やはりプレーに悪影響を及ぼす。「バスケットのあるあるなんですけど、ウチのオフェンスが消極的になったから、それがディフェンスに影響してしまった。向こうの攻め気に対して、もう少し声を掛けて、コミュニケーションが取れていれば流れも変わったかもしれないです」
「最後は良くない流れでしたけど、勝ちは勝ち」
最終盤に課題を残す結果となった千葉だが、トーナメントでは勝つことが最も重要で「最後は良くない流れでしたけど、勝ちは勝ちなので」という西村の言葉は正しい。
ベスト4に駒を進めた千葉は決勝進出を懸けてA東京と対戦する。もちろん、千葉の強みであるトランジションオフェンスの成否が勝敗を分けるカギになる。そこで西村は、あらためてチームバスケットの大切さを強調した。「個々でやらずにチームでやることが大事です。ハーフコートバスケットでも、しっかりパスを繋いで良い流れを作れば、今日みたいに勝てると思います」
川崎戦はディフェンスで我慢しトランジションで突き放す、千葉の強さを示すと同時に、勝利への執念がもたらす圧力の怖さを実感する試合となった。西村にとってもチームにとっても、今回の経験は3連覇への大きな自信になったに違いない。
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