ニック・ケイ

「後半にしっかり持ち直し、勝利の方法を見つけ出すことができました」

8月20日、ともにワールドカップ優勝候補であるフランスとオーストラリアによる強化試合が有明アリーナで行われ、オーストラリアが78−74で競り勝った。

試合は出だしに猛攻を見せたフランス代表がリードを奪うが、後半に入るとオーストラリアが反撃を開始。ディフェンスリバウンドをしっかり取り切ってトランジションに持ち込むと、そこからコートの5人が連動した動きでイージーシュートのチャンスを作り出して得点を重ねた。拮抗した展開になったが、オーストラリアが試合終盤の決定力でわずかに上回り激闘を制した。

この試合、オーストラリアは28本中6本成功、フランスは21本中6本成功と、ともに3ポイントシュートが不発に終わったこともあり、両チームともにゴール下を強調したオフェンスを展開した。その結果、接触プレーも増えたことが影響したのか、試合が進むにつれてフィジカルコンタクトが増加し、強化試合とは思えないような激しい削り合いとなった。そして複数のアンスポーツマン・ライク・ファウルを喫したフランスと比べ、より冷静にプレーしたオーストラリアに軍配が上がった。

オーストラリアはロケッツのジョック・ランデールが来日前の強化試合で負傷し無念の欠場となったが、それでも多くのNBA選手を擁している。この試合でもサンダーのジョシュ・ギディ、ホークスのパティ・ミルズ、マーベリックスのジョシュ・グリーンが先発すると、トレイルブレイザーズのマティース・サイブルがシックスマンを務めた。

そんなタレント集団においても、中心選手として定着しているのが島根スサノオマジックのニック・ケイだ。銅メダルを獲得した東京五輪に続き、コアメンバーの一角を占めるケイは今日の試合でも12得点5アシストを記録。残り1分半にはギディのナイスアシストから勝ち越しのレイアップを決めると、直後にはルディ・ゴベアの肘打ちによるアンスポーツマン・ライク・ファウルを誘発する身体を張ったディフェンスを見せるなど、ここ一番での活躍も光った。

「スタートで出遅れてしまいましたが、後半に入ってしっかり持ち直し、勝利の方法を見つけ出すことができました。これからも試合を重ねるごとにチームとして成長することが、金メダルを取ることへの手助けになると思う」

ニック・ケイ

「こういうフィジカルな試合こそ求めているモノです」

このようにケイは試合を総括し、あくまでも目標は頂点に立つことで、そのためには大会を通して進化を続けることが大切と語った。また、先発センターを務めるランデールの離脱によって、本職は4番ポジションながら、この試合でも要所でゴベアら相手のセンターを守ったように、インサイドの守備の要としてより大きな存在となっている。

ただ、ケイ本人はチーム全員でランデールの穴を埋めていくと強調する。「ジョックがいないのが大きな痛手であることは間違いないです。全員がステップアップする必要があり、今日はみんな良いプレーができていました。彼が不在でも、良いパフォーマンスを続けていくだけです」

冒頭で触れたように、この試合はフィジカルコンタクトの激しい一戦となった。ワールドカップ開幕まで1週間を切っている中、両チームとも熱くなってプレー強度が必要以上に高くなってしまったのではないかと感じたが、ケイは「良い準備になりました。こういうフィジカルな試合こそ求めているモノです」と、むしろ歓迎している。

それが口だけではないのは、終盤にゴベアとの接触で目の上を切って出血しながらも、止血のための包帯を巻いてすぐにコートに戻ったことが何よりも示している。「トップチームを倒すには今日のようなプレーが必要です。ソフトな試合では難敵に勝つための準備にはなりません。タフな戦いだったからこそ良い準備となりました」

オーストラリアはグループリーグで日本、ドイツ、フィンランドと同じ組に入った。今シーズンが島根3年目となるケイは、日本代表のこともよく分かっている。だが、日本と対戦するのはグループリーグ最終戦であり、「毎週、日本で試合をやってきているので、もちろん日本代表のことはよく知っています。日本は良いチームで勝つのはタフです。ただ、日本戦の前にタフな試合が待ち構えています」と、ホスト国への敬意を示しつつ足元をしっかり見つめている。

この日、有明アリーナにはケイを応援する島根ファンの姿も見えた。ケイは存在をしっかり認識しており、その事を聞くと「I love it!」と、笑顔を見せた。「島根のファンは本当に素晴らしいです。リーグでベストのファンである彼らのためにも、良いパフォーマンスをして勝ちたい。ゴー・マジック!」

日本戦で大暴れされるのは避けてもらいたいが、Bリーグでプレーを続け、日本に敬意を持ってくれるケイのワールドカップでの活躍も願わずにはいられない。