ロスター枠を空け、高額の贅沢税を削減するために放出を決断
新オーナーを迎えたサンズは『超アグレッシブ』にロスターの刷新し続けている。昨シーズン途中にはケビン・デュラントを、今オフにはブラッドリー・ビールを獲得した。トレードには代償が必要で、貴重なロールプレーヤーや将来のチーム作りに必要な指名権は根こそぎ放出することになったが、それでも新たなオーナーのマット・イシビアは「普通のやり方ではチャンピオンになれない。勝つために必要な手はすべて打つ」と宣言し、その言葉を行動に移してきた。
ミニマム契約でボル・ボルを獲得したのと同時に、年俸650万ドル(約8億8000万円)のキャメロン・ペインを放出して、選手年俸の総額を削った。チーム作りが仕上げの段階に入った今、「金に糸目は付けない」とベタ踏みだったアクセルをやや緩めた形だ。
とはいえ、この削減の意味は大きい。ペインがいたら8000万ドル(110億円)だった贅沢税は5300万ドル(72億円)まで下がったが、それでもこの金額は、チーム一番の高給取りであるデュラントの年俸(来シーズンは4770万ドル)を上回る。
サラリーキャップを超過するチームへのペナルティである贅沢税はこれほど重い。イシビアは自分のポケットマネーからこれを出す覚悟だが、どこかで線引きは必要となる。2番手のポイントガードとして650万ドルで働いてくれるペインは『コスパの良い選手』だが、贅沢税まで含めて考えれば高すぎる。ポイントガードの層が薄くなる懸念はあるが、オンボールでプレーすべき選手がデュラントにビール、デビン・ブッカーの3人、ベンチにエリック・ゴードンとジョーダン・グッドウィンも控えるとなれば「十分」との考えは理解できる。
サンズのジェームズ・ジョーンズGMはボル・ボルの獲得をこう説明している。「最高のチームにはすべてのポジションに良い選手がいて、なおかつ複数のポジションをこなす良い選手もいるものだ。NBA優勝という目的を果たすには、他とは違う選手が必要になる。ボル・ボルはとてつもない才能の持ち主で、素晴らしい選手と一緒にプレーすることでさらに成長することを期待している」
勝てないチームだったサンズが優勝候補へと駆け上がる過程をともにしたペインの放出は、ジョーンズGMにとっても辛い判断だったに違いない。それでも時に非情な選択をするのが彼の仕事だ。「キャム(ペイン)はこの3年間、素晴らしい戦力として活躍してくれたが、我々はチームのアイデンティティを変え、違うタイプのガードが必要になった。彼にもその役割はこなせただろうが、新たな選手を加えることも常にオープンに考えていく」
ジョーンズGMは言う。「良いチームになったと思うが、決して完全ではないし、決して満足しない。レギュラーシーズンを通してチームは成長していかなければいけない。健康を維持し、大事なことに集中し、日々改善を続けていければ、良い位置に行けるよ」