富永啓生

文・写真=鈴木栄一

前半だけで31得点の大爆発も、後半は沈黙

ウインターカップの男子準決勝で桜丘は福岡第一と対戦。チーム、そしてエースの富永啓生にとって天国と地獄と形容できるようなあまりに正反対な前半、後半となり、72-103で敗れた。

試合序盤こそ相手にいきなり9点を連取されるなど出遅れた桜丘だが、すぐに富永を中心とした3ポイントシュート攻勢で巻き返す。第2クォーターに入っても富永の勢いは止まらず、前半だけで31得点をマーク。富永の大爆発もあって桜丘が48-46と、優勝候補の本命相手と真っ向から渡り合って試合を折り返す。

この前半について富永は次のように振り返る。「スクリーンを使うと留学生が守備に来てしまうので、1対1を仕掛けていきました。途中から自分がもっとアグレッシブに攻めないといけないと、シュートを積極的に打ち出したら入りだして、自分のペースになりました」

「こんなにも多くのお客さんがいることで、シュートを決めると歓声が上がります。それで自分も燃えてきて、もっとやってやろうと思いました」と歓声をエネルギーに変えることで試合を支配した。

富永啓生

「明日はしっかりとフルパワーを出して終わりたい」

ところが、後半に入ると桜丘は福岡第一の仕掛けたゾーンプレスに沈黙。前から積極的にプレッシャーをかけて来る福岡第一の鋭い出足に対し、ガード陣が思うようにボールを運ぶことができずにターンオーバーを連発してしまう。その結果、富永はボールを持つことすらできず。後半に限ってしまえば6得点と失速し、チーム全体でも24点しか挙げられずに大敗を喫した。

「後半の出だしで、相手のゾーンプレスにはまってしまい自分たちの思ったようなプレーができず、それが負けに繋がってしまいました。もっと相手をしっかり見て、安全に攻めていかなければいけなかったです」と富永もゾーンプレスを攻略できなかったことを敗因に挙げた。

そして、自身のプレーについても「点数が離れていく中で、もっと積極的に打っていかなければと思いましたが、相手のディフェンスも簡単に打たせてはくれず厳しい展開でした。ディフェンスが2人、3人と自分に来た中で、もっと周りを生かしていかなければいけないと思いました」と、後半は相手の勢いに飲み込まれた状況で、自分で打開する気持ちが強すぎたと反省した。

悔いが残る一戦となってしまったが、富永のウインターカップはまだ終わりではない。明日には3位決定戦が残っている。ここまでの得点量産で大会最注目選手の一人となっているが、本人はここまでのパフォーマンスについて「1試合通じてどこかのクォーターで点数が取れなくなってしまうので、あまり出来が良いとは思いません」と全く満足していない。

だからこそ「明日はしっかりとフルパワーを出して終わりたいです」と意気込む。帝京長岡との3位決定戦、圧倒的な個人技による富永の得点ショーを再び見たいと朝10時から会場に足を運ぶバスケファンの期待にどこまで応えてくれるだろうか。