ジュリアン・ストローサー&ジェイレン・ピケット&ハンター・タイソン

29位でストローサー、32位でピケット、37位でタイソンを指名

NBA初優勝を果たしたばかりのナゲッツは、NBAドラフトで3人の選手を指名した。29位でゴンザガ大のジュリアン・ストローサー、32位でペンステイト大のジェイレン・ピケット、37位でクレムソン大のハンター・タイソン。2024年の1巡目指名権をペイサーズに、2029年の1巡目指名権をサンダーに譲渡するトレードで、今年の指名権を3つ手に入れた。

通常、優勝したチームはドラフトによる補強に重きを置かない。上位指名権はプレーオフに出ていないチームに行くし、円熟期にあるチームに若い選手の成長を待つ余裕はない。そんなセオリーの逆を行く3選手の指名を行ったのには、ナゲッツらしい理由がある。

ナゲッツは『バブル』の2019-20シーズンの時点で優勝できる力を備えており、ジャマール・マレーとマイケル・ポーターJr.のケガでその後の2シーズンを無駄にした。今回が初優勝ではあったが、チームは成熟期を迎えつつあり、サラリーキャップの新ルールも見据えると、ニコラ・ヨキッチ、マレーとポーターJr.を抱えながら競争力のあるロスターを維持するには、ルーキー契約の若手がローテーションに食い込むことが望ましい。

ナゲッツには成功のノウハウがある。41位指名と注目されていなかったヨキッチを見いだしてMVPへと育て上げ、腰のケガを抱えて他のチームが指名に踏み切れなかったポーターJr.を14位で指名して主力に据えた。昨年に21位で指名したクリスチャン・ブラウンも即戦力として、プレーオフでもローテーションの一角を務め上げた。

今回ナゲッツが指名した3選手は、いずれも指名された順位よりも評価の低かった選手だ。それでもナゲッツは指名権があるから彼らを獲得したのではなく、彼らを獲得するために指名権を取りに動いている。

ストローサーは204cm、タイソンは207cmとサイズがあって身体能力の高いシューター。ストローサーはよりシュートの確率が良く、タイソンはハードワークができる選手とタイプは違うが、身長とウイングスパンがあれば、あとのスキルは自分たちで育てるというナゲッツらしい指名であり、まさにクリスチャン・ブラウンに続くべき選手だ。ピケットはバスケIQに優れたガードで、今のロスターにはいないタイプの司令塔だ。

カルビン・ブースGMは言う。「サイズのあるシューターは今NBAのあちこちで成功を収めている。真のポイントガードは他で見つけ出すのが難しく、ルーキーから育てる。今いる選手とは少しずつ異なる特徴を持つ選手を獲得できた」

ドラフトを終えてデンバー入りした3人は入団会見を行った。ストローサーは「ナゲッツはお互いのためにプレーし、今の時代では忘れられがちな正しいバスケをやっている、そんなチームに参加できてうれしい。きっと楽しくプレーできる」と言い、ピケットは「ジャマール・マレーのような選手に続いてプレーすることで多くを学べる。とにかく早くスタートを切りたい」と、タイソンは「ナゲッツは優勝したばかりで、勝利のカルチャーの中に身を置くことができる」と語る。

今回のドラフトでナゲッツは予想外の選手ばかり指名しており、ストローサーを29位で指名した時には、「この選手なら、32位か37位の指名で十分だっただろう」との意見も評論家からは出たが、ナゲッツはコート上と同じようにドラフト会場でも自分たちの信じるスタイルを貫いた。ブースGMは満足そうにこう語る。「今回のドラフトでは、フリーエージェントやトレードで獲得できないタイプの選手を取ることができたよ」