「3日間を通して自分はゲームコントロールを意識してやっていました」
バスケットボール女子日本代表は6月18日、デンマーク代表との強化試合の最終戦を実施。序盤から強度の高いディフェンスで主導権を握ると、持ち味である機動力を生かしたトランジションからオープンシュートのチャンスを次々と作り出し、102-49と快勝した。
これで日本はアジアカップ前の大事な実戦機会でデンマークに3試合連続で圧勝した。デンマークは現在開催中である女子ヨーロッパ選手権に出場できていないように、欧州では中位以下の実力。そのため、今回の3連勝によってアジアカップに向けて大きな弾みがつくと言える訳ではない。それでも、昨年9月のワールドカップで露呈した課題に対し、明確な改善策を持っていることを示すなどポシティブな面が多かったことは間違いない。
中でも目立った活躍を見せていたのが、ポイントガードの山本麻衣だ。3試合ともに先発を務めて、すべての試合で2桁得点をマーク。持ち味の3ポイントシュートを確率良く沈め、この3連戦のMVPを受賞した。
「今日の試合は、昨日の反省を生かし出だしからしっかりと自分たちのバスケができたと思います。ディフェンスもいろいろなことを試し、そこで出た課題をアジアカップまでに修正していきたいです」。このように今日の試合を総括した山本は、3試合を通しての自身のプレーへの感触を次のように続けた「3日間を通して自分はゲームコントロールを意識してやっていました。その中ですごく収穫が得られたので、アジアカップでも生かしていきたいです」
山本といえば、3ポイントシュートを筆頭とした非凡な得点力が大きな武器のスコアリングガードで、その持ち味を今回の3連戦でも存分に発揮した。所属するトヨタ自動車アンテロープスと同じく、日本代表でもエーススコアラーとして期待したくなるが、本人にその意識はない。「点を取ることでチームを引っ張りたい訳ではないです。周りに点を取れる選手がいっぱいいるので、まずはペイントアタックをすることを考えてやるようにしています。その結果、相手が下がっていたらシュートを打つ。今大会は余裕を持ってしっかりと状況判断ができたので点数に繋がったと思います」
「自分たちのやりたいことをやらせてもらえなくても次のオプションがあります」
また、先発として何よりも意識するのはディフェンス面と続ける。「スタートとして、自分のディフェンスがチームのスタンダードになります。まずは自分がボールを持った選手にプレッシャーをかけることで、ディフェンスの強度を設定したいと思っています。オフェンスではしっかりボールプッシュをしてリズムを作ること。出だしは初めての相手でバタつくこともあると思いますが、しっかりと一本オフェンスを作って攻める時は落ち着くなど、ゲームの流れをしっかり読むことを意識しています」
山本は昨年9月に行われたワールドカップの5試合で合計わずか10得点(3試合で無得点)と持ち味を全く発揮できなかった。当時のチームは攻撃の起点をポイントガードに依存しており、そこで激しいディナイなどで徹底マークを受けると、ハーフコートオフェンスが全く機能しなかった。その結果として、山本も武器であるシュート力を披露できなかった。
しかし、その反省も踏まえ今の代表は、ツーガードを採用したり、5人全員が積極的にドライブを仕掛けるなど、全員が攻撃の起点となることに取り組んでいる。山本もそこに手ごたえを感じているという。「自分たちのやりたいことをやらせてもらえなくても次のオプションがあります。ワールドカップの時は、どちらかというと1番がボールを絶対にもらっていました。起点が一つだったのを分散させ、いろいろなところからペイントアタック、シュートを打てることを練習しています」
こうしてオフェンスの起点が増えたことで、山本がシュート力をより発揮しやすい状況になったのは間違いない。アジアカップで対戦するオーストラリア、中国、韓国といったライバルは、今回のデンマークより明らかに格上であり、山本も「アジアカップでは、こんなにうまくいくことはないと思います」と強調する。
ただ、それを織り込み済みでも、今回の3連戦での山本はアジアカップで得点量産を期待してしまうだけのパフォーマンスを見せた。6連覇達成に向け、山本が自分のリズムでシュートを打てる状況を作り出せるかは、日本の明暗を分ける大きな鍵になるはずだ。