ウィザーズ

写真=Getty Images

調子を上げてきたサンズを僅差で振り切る

先日のトレードでトレバー・アリーザとケニー・ウーブレイを交換した形になったウィザーズとサンズによる注目の対戦は、トリプルオーバータイムにもつれる大熱戦となりました。リードが入れ替わること24回、同点になること26回。最大でも8点差にしかならず、最初から最後まで一進一退の攻防が続きました。

西カンファレンスで唯一プレーオフ争いに参加できていないサンズですが、4連勝と波に乗っています。ルーキーのディアンソニー・メルトンとミカル・ブリッジスがスターターに定着し、チーム全体のディフェンス力が向上したことで安易な失点が減るとともに、簡単には抜かれなくなったことでディアンドレ・エイトンのゴール下での存在感が生きるようになりました。

そこに加わったディフェンスの良いウーブレイはエースキラーとしての役割を果たします。ベンチスタートだったウーブレイですが、その能力を期待され勝負どころでエースを止める役割として試合に出続けました。相手はルーキーシーズンから同じチームでプレーしてきたブラッドリー・ビール。手の内を知り尽くしたウーブレイのしつこく、読みの鋭いディフェンスにビールは簡単に得点することができません。

一方でサンズのエースであるデビン・ブッカーもアリーザとビールによる激しいディフェンスを前にして、得意のシュートをなかなか打たせてもらえません。特にアリーザは自分がブッカーのマークについていなくても、ドライブに対して横から手を出してボールを弾いたり、キックアウトパスを読んでカットしたりとチームディフェンスの面でも貢献します。

トレードされた注目選手のディフェンスによって、双方のエースが止められる展開になりますが、ビールもブッカーも自分にディフェンスが集中したのを見るとしっかりとパスを出し、ビールは15アシスト、ブッカーは14アシストでチームメイトに的確に得点させ、互角のオフェンスとなっていきました。

こちらも成績の奮わないウィザーズですが、実はパスに触れるディフレクションやチャージングを奪う回数はリーグトップであり、本来はディフェンス力を誇れるはずが、リバウンドの弱さとトランジションディフェンスの悪さでイージーシュートを許してしまい守れていません。ジョン・ウォールやオット・ポーターが欠場した影響もありますが、スモールラインナップを長時間使うため、インサイドの弱さが目立ちます。

この試合でもサンズに20点の速攻を許し、さらにエイトンにはセカンドチャンスから11点を奪われます。しかも接戦が続いた第4クォーターにインサイドの要として20点を奪ってエイトンに対抗していたマーキーフ・モリスがファウルアウトで退場に。何とか同点に追い付いてオーバータイムに持ち込んだものの、不安要素が大きくなってしまいました。

ここで登場したのが2年目のトーマス・ブライアント。ドラフトされたレイカーズをオフにウェイブされてウィザーズにやって来ると、ドワイト・ハワードのケガもあってスターターに抜擢されていますが、プレータイムは15分程度と重要な局面はベンチが多くなっています。

しかし、この21歳のセンターがオーバータイムだけで18得点6リバウンドでチームを救います。スクリーナーとしてしっかりとディフェンスを引き離すとゴール下に走り込み、高さを生かしてパスを呼び込んではダンクを連発しました。ブライアントのオフボールの動きにサンズは対応することができません。

また見逃せないのはオーバータイムで3回すべてのジャンプボールに勝ってウィザーズのオフェンス機会を増やしたこと、そしてオフェンスリバウンドでは自分で取り切れないときでも、懸命に手を伸ばし、マイボールにしていったことです。5分しかないオーバータイムの中でオフェンス機会を増やすことは非常に重要で、トリプルオーバータイムになった試合の中ではブライアントが作ったわずかな差がウィザーズを救いました。

キャリアハイの31点をとったブライアントはフィールドゴール14本すべてを成功させましたが、これは1試合ですべてのシュートを成功させた記録としては伝説のセンターであるウォルト・チェンバレンの15本に続く史上2番目の記録です。ドラフト1位を前に、既にクビを経験した2年目のセンターがまさかの大活躍をしました。

そんな偉大な記録を達成されてもサンズは食い下がりました。そもそもブライアントがすべてのシュートを成功させた最大の理由は、サンズのディフェンスが彼をゴール下でフリーにしてもビールを止めることに神経を注いで、イージーシュートばかりになったからです。スクリーンでマークマンが引き剥がされてもエイトンがカバーし、簡単には打たせませんでした。

実際に1回目のオーバータイムでビールが打った「決まれば勝利」のブザービーターシュートは、最後まで手を伸ばしてプレッシャーをかけてきたエイトンにより、わずかにリングに嫌われています。ブライアントにやられるのを覚悟してでも、徹底してビールを止めたことでサンズは勝機を見いだしました。

しかし、そのエイトンが2回目のオーバータイムでファウルアウト。26点17リバウンドのセンターがいなくなったことはディフェンス面で大きく響きました。得点が止まっていたビールでしたが、エイトンのいない3回目のオーバータイム5分間で10点を奪い勝負を決めたのです。粘り強いディフェンスでウィザーズを苦しめたサンズでしたが、ゴール下の核がいなくなったことであと一歩届きませんでした。

トリプルオーバータイムにもつれ込み48分以上プレーした選手が5人もいた試合は、お互いに疲労が目立ち、足がついていかなくなる場面も多く出てきました。そんな中でも最後まで動き続けたビールは40点15アシスト11リバウンドでキャリア初のトリプルダブルを達成。プレータイムが比較的短く元気だったブライアントがハードワークと100%のフィールドゴール成功率でチームを救い、元チームメートのウーブレイのディフェンスに苦しみながらもアシストを重ね、最後は自分で得点をとって試合を決めたビールが輝いた試合でした。