星杏璃

昨シーズンにENEOSの主力として大きく飛躍し、4年ぶりの王座奪還に貢献

先日、6月下旬に開幕する女子アジアカップ2023に臨む12名の代表メンバーが発表された。髙田真希を筆頭に代表経験の豊富なメンバーが多い中、世代別も含めて今回が初めての日本代表となるのが星杏璃だ。

23歳の星はENEOSに加入後、出場機会に恵まれない日々を過ごしてきたが、4年目となる2022-23シーズンに大きく飛躍する。前年まで一度も先発機会がなかったのが、レギュラーシーズン全26試合中23試合、そしてプレーオフの全6試合に先発とENEOSの主力選手となり、4年ぶりのWリーグ優勝に大きく貢献したのは記憶に新しい。

ここでの活躍が評価され代表候補の強化合宿メンバーに招集されると、激しいサバイバルレースを勝ち抜き、FIBA公式戦デビューの切符を勝ち取った。「これまで日本代表に呼ばれたいという気持ちでやってきました。初めての代表で不安、プレッシャーとかもありますが、呼ばれた時は率直にうれしかったです」

このように星は、強化合宿に招集された時の気持ちを明かす。そして代表でもENEOSで磨いた武器で存在感を発揮したいと続けた。「選ばれた理由はENEOSで1年間やってきたことが評価されたからだと思います。ENEOSでやってきた持ち味のディフェンスやドライブを発揮することに加え、周りの動きやディフェンスの動きを見て自分で判断してプレーする。頭を使ってプレーすることを、もっとやっていかなければいけないです」

所属チームでのプレーが代表選出に繋がったが、一方で代表ではENEOSでの役割と変わる部分はある。星も「代表では点を取れる人がいっぱいいるので、シュートを狙いに行くだけでなく、味方のシュートチャンスを作り出すことが一番になってきます。そこは正しい選択をしていかないといけないです」と言う。

星杏璃

ワールドカップで課題となったガード以外の攻撃の起点になれる存在

グループリーグ敗退に終わった昨年のワールドカップで日本にとって大きな課題となったのは、ポイントガード以外の選手がドライブなどで仕掛けていく戦いができなかったこと。その結果、司令塔が前からの激しいプレッシャーやディナイなどで徹底マークを受けると、セットオフェンスの始動が遅れたことで崩しきれずにタフショットを繰り返し、それが外れて相手にトランジションを許す悪循環に陥っていた。

星は2番ポジションだが、ENEOSでは状況に応じてボールプッシュもそつなくこなしている。また、スピードに加え密集を滑らかな動きで突破していく巧さを持ち、ペイントタッチからのキックアウトなど、チャンスメーカーにもなれる。他の2番ポジションの選手に比べてサイズ面での不利はあるが、クリエイターとして司令塔の負担を軽減できる特徴を持っており、日本の課題解消に打ってつけの存在と言える。

初めての日本代表であり「代表に来てみると自分の実力のなさとかをすごく実感します」と壁にもぶつかっている星だが、一方で高いレベルに身を置くことの充実感も得ている。「この中でやれている事は成長にも繋がります。周りのレベルが高くて自分の成長を感じられないかもしれないですが、身体も強くなっていると思うので、もっと自信を持ってプレーしていきたいです」

カナダでの遠征を経験したとはいえ、星は他の選手以上にWリーグでは経験できない海外勢の高さ、フィジカルへの慣れが必要だ。ただ、この部分にうまく適応さえできれば、他の代表メンバーと比べて海外勢に知られていないアドバンテージもあり、新たな活力を与えるXファクターになれる可能性もある。それだけに、星の存在はアジアカップ6連覇の実現に向け大きなポイントとなりそうだ。