ダンカン・ロビンソン

「NBAファイナルという舞台を楽しまない手はないよ」

NBAファイナル第2戦、第1クォーターにマックス・ストゥルースが3ポイントシュート4本を決めてヒートは最高のスタートを切った。それでもナゲッツにすぐ逆転されたのは、前半のベンチメンバーの低調なパフォーマンスが原因だった。カイル・ラウリーは8分半、ケイレブ・マーティン、ダンカン・ロビンソン、コディ・ゼラー、ヘイウッド・ハイスミスもそれぞれ6分前後のプレータイムを与えられたが、ベンチユニットは前半で5得点しか奪えず、ナゲッツのセカンドユニットに圧倒された。

第3クォーターもその流れは変わらず、ゼラーではニコラ・ヨキッチを全く止められないことがあらためて証明されただけだったが、ヒートのセカンドユニットはその後に試合を変える決定的な働きを見せた。第4クォーターにプレータイムを与えられたのはラウリーとマーティン、ロビンソンの3人。序盤に大活躍したストゥルースをベンチに置いてでも、その時にリズムをつかんでいた選手がコートに立った。

流れがヒートに行ったりナゲッツに行ったりとせわしない試合展開で、ダンカン・ロビンソンは第3クォーターまで7分しかプレータイムがなく、シュートを1本も打たず、アシストも記録せず、ただ繋ぎの役割でコートに出てはすぐに下がっていた。その彼が勝負の第4クォーターに入ると2分あまりで10得点を挙げて13-2のランの主役となり、試合に大きなインパクトを与えた。

「第4クォーターに入る前に何か特別なことがあったわけじゃない。ナゲッツは優れたチームだから苦戦は避けられない。でも試合は僕たちの流れで進んでいて、いずれ一気に僕たちのペースになると思っていた。だからまずディフェンスから取り掛かったんだ。チームみんなで辛抱強く、頭を使ってプレーできた」とロビンソンは言う。

「第1戦もこの試合の前半も、個人的には正直良いプレーができていなかった。オフェンスではアグレッシブにプレーし続けて、自分らしさを出したいと思っていたけど、チャンスが来るかどうかは分からない。でも、大事なのは良いプレー選択をして、積極的にプレーすることだと思っている」

13-2のランを締めくくり、ナゲッツにタイムアウトを取らせた得点は、オフボールスクリーンでディフェンスを引きはがした後、3ポイントラインで待つのではなくリングへと飛び込んでパスを引き出す、キャッチ&シュートを得意とする彼にしては珍しいゴール下のシュートだった。

いつもはクールなロビンソンが、この得点を決めた時はガッツポーズを見せたのは「あれは咄嗟に出たプレーなんだ。シーズンを通して僕がそういうプレーをすることは滅多にない。だからこそ決めたかった」からだ。

今シーズンのロビンソンは不調の時期が長かった。年末に足首を痛め、今年に入ってすぐ右手の指を手術することになって6週間の戦線離脱があり、その後はローテーションになかなか戻れずに平均プレータイムは16.4分へと激減している。チームの武器である3ポイントシュートを引っ張るべき彼の不在と不調は、ヒートの出来に大きく響いた。

それでも、プレーオフの最初の試合でタイラー・ヒーローが手首を骨折した後、ロビンソンはその穴を埋める働きをコンスタントに見せている。彼は言う。「僕はいつもプレーを楽しもうとしているし、そういう時こそ活躍できると思っている。どの選手も夢見る舞台に今僕らは立っているんだから、NBAファイナルという舞台を楽しまない手はないよ」

柱となるジミー・バトラーとバム・アデバヨ以外にも日替わりヒーローが次々と出てくるのがヒートの強み。ロビンソンもレギュラーシーズンの大苦戦を乗り越え、NBA優勝を争う勝負どころで本領を発揮している。