富樫勇樹

「自信が持てているのは、一度優勝した部分で気持ちに余裕があるから」

5月27日、千葉ジェッツは琉球ゴールデンキングスとのBリーグファイナル第1戦に臨んだが、ダブルオーバータイムにもつれる死闘の末93-96で敗れた。

ダブルオーバータイムという結果が物語るように、どちらが勝ってもおかしくない展開だった。千葉Jの指揮官、ジョン・パトリックは序盤に食らったビッグランと、琉球の強みであるオフェンスリバウンドを止められなかったことを敗因に挙げた。「0-17のランが第1クォーターに合って、追いかけるのに力を使ってしまった。その後(アレン)ダーラムの1対1でやられたと思う。オフェンスリバウンドを取られ、ギャビン(エドワーズ)が11分しか出ていないウチにとって難しいところがありました」

パトリックヘッドコーチが言うように、エドワーズのファウルトラブルは千葉Jにとって想定外だった。結果的に琉球の強力なインサイド陣に対して後手に回ることになり、オフェンスリバウンドは24本も奪われ、ジョン・ムーニーが44分、ヴィック・ローが約39分とタイムシェアができなかった。それでも「ギャビンがいなくてスモールラインナップで同点に追いついた」と指揮官が振り返るように、
ゲームハイの31得点を挙げた富樫勇樹を軸に2度の延長に持ち込むなど地力の高さを証明した。

そして、スモールラインナップ時、この大舞台に臆することなく約20分間もプレーした小川麻斗の存在は一つの収穫だったと言える。結果的に6本放ったフィールドゴールはすべて失敗に終わったが、タフなディフェンスでコー・フリッピンから8秒バイオレーションを奪うなど、千葉Jが最も大事にするディフェンス面で輝きを放った。

小川は言う。「ディフェンスでフルコートから思い切ってプレッシャーをかけることが自分の役割だと思ったので、フリッピンに思い切ってプレーさせないようにしました。このファイナルの舞台で良い流れを持ってこれなかったのは自分にとって残念というか。悔いが残る試合だったので、明日はしっかり流れを持っていきたいです」

パトリックヘッドコーチも「麻斗はディフェンスのプレッシャーのところで大事なターンオーバーをさせて、ファストブレイクでレイアップも積極的に行った。シュートは入っていなかったけど、アグレッシブにやって、ルーキーにとっては良かった」と一定の評価を与えた。

追い込まれた千葉Jだが、エースの富樫は「2勝したほうが優勝というルール」と言い、慌てる様子は見られない。「第1戦が大事なことはもちろん理解していますけど、まだ自信があります。それぐらいのことを今シーズンにやってきたので。なかなかリズムに乗れずに終わったメンバーもいるので、全員で戦えればと思っています」

今シーズンの千葉Jは天皇杯で優勝し、レギュラーシーズンでは最高勝率を塗り替える圧倒的な強さを誇った。しかし、ポストシーズンに入ると、広島ドラゴンフライズとのチャンピオンシップクォーターファイナル第1戦を落とす波乱の幕開けとなった。それでも、すぐにアジャストしてそこから広島に連勝すると、アルバルク東京とのセミファイナルでは攻守ともに圧倒してファイナルの舞台まで駆け上がった。富樫はこれまでに培った経験があるからこそ、自信に満ちている。「広島との経験もありますし、一回負けても自信が持てているのは、一度優勝した部分で気持ちに余裕があるからかなと思います」

そして、「落としてしまったことに悔しさがありますけど、ここでギブアップするチームじゃないので。自分達がやってきたことを信じて、もう一度チームで一つになって明日戦いたいと思います」と必勝を誓った。