デビン・ブッカー

プレーオフの11試合で平均41.7分、33.7得点と突出したパフォーマンス

ナゲッツの2連勝で始まった西のカンファレンスセミファイナルは、サンズが連勝して追いついたものの、第5戦、第6戦はともに大差でナゲッツが制しました。クリス・ポールとディアンドレ・エイトンの離脱、4勝2敗という結果以上にチーム力の差は大きく、ケビン・デュラントの獲得というシーズン中の大型トレードは、多くの前例に漏れずチームとしての機能性を欠きました。

チーム力に差があったからこそ、デビン・ブッカーの個人能力は大いに輝きました。デュラントの存在さえ霞ませてしまうブッカーの信じられない得点力は、機能していたはずのナゲッツディフェンスを混乱させ、サンズが勝つための唯一の武器に見えました。実際、第2戦まではディフェンダーを並べていたサンズはロースコアの展開では分が悪いと感じ、第3戦からはオフェンシブな選手を並べてハイスコアゲームで対抗したことが連勝の大きな要因になりました。

ブッカーは第3戦でフィールドゴール成功率80%の47得点、第4戦はフィールドゴール成功率78%で36得点と1人だけ別世界にいるかのように簡単にシュートを決めました。ナゲッツは時には二コラ・ヨキッチがシューターのマークをするなど、フリーの選手を作らないことを優先した守り方をしており、特にブッカーに対してはチェイス能力が高いケンテイビアス・コールドウェル・ポープを中心にプレッシャーを掛けましたが、ブッカーは何の影響もないかのようにシュートを決め続けました。

ブッカーが3ポイントシュートをオープンで打てることはほとんどなく、アテンプトの半分近くがディフェンダーからプレッシャーを受けているタフショットだったにもかかわらず、6試合を通して驚異の55%という成功率を残しました。ブッカー以外の選手はトータル28%と、ローテーションが早くオープンにしてくれないナゲッツディフェンスに苦戦していただけに、1人だけ高確率で決めるブッカーには違和感を感じたほどでした。

早々にあきらめることになった第6戦の36分を除けば、ブッカーのプレータイムはすべて40分を越えました。ファーストラウンドの5試合も含めると11試合で平均41.7分と、疲労困憊で集中力が途切れてもおかしくない状況が続きましたが、そのパフォーマンスは落ちるどころか、むしろ上がっていきました。チームは敗れましたが、ブッカーの凄味が強調されたシリーズでした。

今オフのサンズは様々な選択を迫られます。高額サラリーの主力が多く、サラリーキャップが苦しい中でほとんどのベンチメンバーの契約が切れるため、エイトンやポールの放出も含めてチームの再編成が必要になります。これまで選手の個性を取り込んだオフボールとコンビプレーなどのチーム戦術で構築してきましたが、このプレーオフのようにブッカーとデュラントの個人技中心で考えるならば、周囲を固めるロールプレイヤーに求める要素も変わってきます。チームとしては完敗しながらも、エースとしてのブッカーは輝きを増しただけに、優勝するためにはチーム全体の変革が必要になりそうです。