文=松原貴実 写真=B.LEAGUE

ギャレット、ギレンウォーター、田中の得点ラッシュ

中地区1位の川崎ブレイブサンダースと東地区2位のアルバルク東京の第2戦は12月24日、川崎のホームとどろきアリーナで行われた。前日の観客動員数4789人には届かなかったが、それでも3727人を集めたアリーナは試合前から大きな熱気に包まれていた。
一戦目は走るバスケットでA東京を振り切った川崎が93-81で快勝。年内最後のホームゲームで連勝記録を伸ばすのか、それともA東京がその勢いに待ったをかけるのか。年明けのオールジャパンの戦いを占う上でも見逃せない一戦となった。

辻直人のジャンプシュートで幸先の良いスタートを切ったのは川崎。辻は開始わずか2分で2本の3ポイントシュート含め8点を稼ぎ好調ぶりをアピールした。だが、A東京も負けてはいない。すかさず田中大貴が3ポイントシュートを決め返し、トロイ・ギレンウォーターが同じく3ポイントでそのあとに続く。

出場停止処分で前日のコートに立てなかったギレンウォーターはその分のエネルギーを発散するがごとく連続4ゴールを決めて6分半には12-9とA東京が一歩前に出た。川崎は前日39得点をマークしたニック・ファジーカスにようやく当たりが来たのは残り4分半。27-25と2点差にして第クォーターを終了した。

しかし、わずか2点のビハインドであっても川崎にはやや不安が残る内容だったかもしれない。というのも、このクォーターでA東京が挙げた27得点の内訳はディアンテ・ギャレット10点、ギレンウォーター9点、田中8点。川崎の北卓也ヘッドコーチが言う「抑えなければならない3人」に集中して得点を許していることが、点差以上にA東京のペースであることを示していたからだ。

続く第2クォーター、A東京が先行する形でゲームは進み、その差をじりじりと開いていく。残り5分のオフィシャルタイムアウトを挟んで川崎はファジーカス、永吉佑也がゴール下で踏ん張り、38-36と再び2点差まで詰め寄るが、ディフェンスの隙間を高速で駆け抜け抜けるようなギャレットのドライブで40-36。

そして、そこから田中の怒涛の攻めがスタートした。スティールからの速攻を皮切りにドライブ、3ポイントシュート、ミドルレンジのジャンプシュート、相手のファウルを誘ってのフリースロー、バスケット・カウントのワンスローを1本のミスもなく決め切って約3分間で17得点をマーク。「シュートが入るか入らないかではなく、ボールを持ったらシュートを狙いに行くという姿勢は貫けたと思う」という田中は前半だけで25得点。流れを完全にものにしたA東京が57-46と2桁リードで前半を終了した。

逆転の可能性を残した場面、流れを失う痛恨のミス

後半に巻き返したい川崎だったが、波に乗るA東京の勢いは止められず第3クォーター終了時には82-65と差が開く。「追いかける立場なのにゴール下のイージーシュートを落としたり、フリースローを落としたりとミスが目立ち、なかなか追い上げムードに持っていけなかった」(辻)。

中でも悔やまれるのは最終ピリオドの1本のミスだ。92-69とこの日最大の23点差をつけられた残り8分半からライアン・スパンクラーの連続シュートなどで流れを呼び込み94-80、5分以上ある残り時間を考えればまだ逆転の可能性も残されていた。攻撃権は川崎、だが、ここでギャレットが藤井祐眞のボールをスティールしてそのまま軽々とレイアップを決める。会場から湧き上がった歓声とともに流れが再びA東京に傾いた瞬間だった。

その後も点差は縮まることなく106-92で試合終了。両チームともに高確率でシュートを決める速い展開のゲームとなったが、勝利したA東京はハイスコアをマークしたギレンウォーター(32得点)、田中(30得点)、ギャレット(16得点)のみならず、要所での得点でチームを引き締めた正中岳城、地道なディフェンス、リバウンドで貢献したザック・バランスキー、竹内譲次などの働きも光った。個々の能力の高さはリーグ一、二を争うと言われるA東京だが、それが一つになったときの『破壊力』を見せつけた一戦だったと言っていいだろう。

田中大貴「チームとして伸びしろがあるのはウチ」

試合後、敗れた川崎の北卓也ヘッドコーチはこう語る。「前半からギャレット選手、田中選手、ギレンウォーター選手の高い個人能力にやられてしまった。今日は立ち上がりからギレンウォーター選手のシュートが乗っている感じで、そこから流れを持っていかれたような気がする。昨日抑えることができたギャレットも今日は1段階ギアを上げてきた感じだった。チームで守ろうとしたんですが、粘ってはいたのだが第4クォーターで14点差まで詰めた時にミスが出てしまった。ああいう場面できっちりシュートで終われる精度があればもっと強いチームになっていけると思う」

10月末から続いていた長い長い連勝は15でストップ。100失点を喫したのはBリーグになって初だ。「長いリーグの中には本当にシュートが入らなかったり、こうして106点取られたり、いろんなゲームがある。そこでいかに我慢して流れを自分たちに持ってこられるか、そういったコントロール力が重要となる。ウチはまだまだそこが足りないので、今後の課題としてステップアップしていきたい」

そして前日の大敗から見事に巻き返したA東京の伊藤ヘッドコーチは「今日は内外に積極的に攻めて得点する、我々がやりたいバスケットに一歩近づけた試合だった」と振り返る。「でも、それはあくまでもオフェンス面のことであり、ディフェンス面では川崎さんをロースコアに抑えることができなかったということでも課題が残った試合だった。今年はBリーグになりチームも選手もいろんなことが変化した年。その変化についていけない部分もあって、それがチームとしての波になってしまったが、それは決して悪いことではなく、経験して学んでいくことでチームは成長していく。その一つの結果として今年最後の試合をこういう戦い方で終われたことは良かったと思う」

田中大貴はシーズンハイの30得点を記録。フィールドゴール13本中10本(76.9%)と絶好調だった試合をこう振り返る。「相手のディフェンスが自分に寄ればトロイやディアンテが空くし、ディアンテに寄れば自分が空く。相手にとっては守りにくいチームだし、今日もそういった部分を生かして攻めることができた。今までは個人の力で無理してねじこもうとするシーンも見られたが、今ではうまくシェアすることで自分がオープンで打てる場面が増えた」

勝ったとは言え、川崎は依然としてリーグ最高勝率をキープしている。レギュラーシーズンでの対戦はこれで終わりだが、Bリーグ優勝を狙うA東京にとっては意識しなければいけない相手だ。

田中は言う。「この2戦を戦って、やはり川崎はそれぞれが自分の役割を理解して徹底してやるいいチームだと感じた。だからこそ常に安定したパフォーマンスができ、それが強みになっている。でも、個人的にはチームとして伸びしろがあるのはウチだと思っている。最後に自分たちがもっといいチームになれるよう、積極的にゴールに向かう姿勢を忘れず頑張っていきたい」

A東京はこれで年内のスケジュールをすべて消化。だが元旦から新潟アルビレックスBBとのホームゲームがあり、オールジャパンには5日の3回戦から登場と気の抜けない試合が続く。