各校の新チームがスタートして間もない4月29日、30日に福岡県飯塚市総合体育館の落成記念として『飯塚カップ2023』が開催され、福岡第一(福岡)、福岡大学附属大濠(福岡)、開志国際(新潟)、東山(京都)の強豪4チームが集結した。昨年のウインターカップで新潟県勢初の優勝を成し遂げ、追われる立場となる開志国際だが、今年の目標はインターハイ、ウインターカップの2冠を掲げている。高校No.1の監督であり、日本を代表するポイントカードの富樫勇樹(千葉ジェッツ)の父親でもある富樫英樹監督は、日本のバスケットボール界の盛り上がりを期待している。

「どんどん子供達が自信をつけてきている」

──昨シーズンはとても注目を浴びた1年だったと思います。1年を振り返ってみてどうでしょうか。

そうですね。その前の年のウインターカップで大濠さんにコテンパンにやっつけられてから、子供たちの意識が変わったと思います。我々はウインターカップであまり良い結果を残せていなかったですが、昨年は3年生がウインターカップ優勝を最初から目標として掲げていました。ウインターにすべてを賭けていたことで、結果が物語る通りの良い1年になりましたし、子供たちのおかげで本当に良い思いをさせてもらいました。

──今年はどのようなスタートとなりましたか?

ウインターカップが終わって、目標を達成したら落ちるのかなと思っていたんですけど、練習が始まったら意外に気合いが入っていて、インターハイとウインターカップの両方で優勝したい、今年の目標は2冠って言ったんですよね。それに向かっていこうとスタートしたら、本当に子供たちは自信を付けているような戦いぶりだったんです。だから今のところ順調に来ているかなって感じですね。

──特別指定選手や代表候補への選出がありますが、今年はどういったチームを目指していますか?

留学生の1年生が昨年からいますが、プレータイムはあまりなかったです。その中で残っているガード陣を中心に、今年はサイズダウンしましたが、みんなで守ってみんなで取ってというバスケットになっているなって感じですね。

──注目選手は誰になりますか?

新しい顔ぶれとしてはやっぱり留学生の(ネブフィ)ケルビン(シェミリー)と2年生の千保(銀河)です。この2人が新しく出た顔なんですけど、あとはダブルキャプテンの1人である中島(遙希)がチームを引っ張っています。彼のリバウンドだったりルーズボールという泥臭さは、チームに流れを持ってきてくれますね。

──新チームになって、カップ戦では福岡第一に大差で勝利しました。実際に手応えはいかがでしょう?

新人の北信越大会でも本当に圧勝だったんですよね。その流れで平良(宗龍)が特別指定選手としてBリーグに参加したりして、そんなにチーム練習をできなかったですが、カップ戦も全部圧勝でちょっとびっくりしている状態です。どんどん子供たちが自信つけて、うまくなっているのが正直な感想です。

──今回、福岡で開催された飯塚カップに参加してすごく刺激もあると思います。

福岡はどっちも(福大大濠、福岡第一)強くて、本当にずっと苦しめられた2チームです。その地に呼んでいただいて、こんな素晴らしい環境の中でゲームさせてもらえることに感謝ですね。

レギュラーが5、6人いるんですが、 ケガで来れず今回はベストメンバーではなかったです。 なので、その他の子たちを鍛えたいイメージだったんですが、ケルビンもちょっと怪しい状態でした。逆に1人2人欠けている状態でも、勝てるチーム層にしなきゃダメかなって感じはありますね。

今、力を持つチームと対戦することができているのですが、今年はサイズのあるチームが少ないです。なので、サイズをどうするかではなく、今のスタイルでインターハイに向けて強化していく感じです。層を厚くして、10人くらいはとっかえひっかえできるようにしたいと考えています。

──少し話は変わりますが、高校生から特別指定選手が出てきたり、大学生も卒業を待たずしてBリーグに行くなど時代が変わってきました。日本バスケ全体をどのように考えていますか?

そこは自分の中でもなかなか答えが見つかっていません。ただ、自分で決めていることには間違いないし、自分がやっていることなのでどこのカテゴリーがどうのこうのじゃなくて、日本全体がレベルアップするためには何がいいのかなっていうのを協会やBリーグが模索しながら、NBAのようにルールを決めていた方が良いのかなと。最近急にそういう流れができているので、難しいですね。

──個人的に、もっとこうしたら日本のレベルが上がると思う施策などはありますか?

そうですね、まずはミニと中学校のマンツーマンは早く廃止にしてほしいというのが1つあります。あとは若年層で育成と強化、どちらを優先するかという難しさもあります。たとえば、今U16とかU18の日本代表がアジア大会を突破するために一生懸命やっていますけど、それは強化なのか育成なのかという部分です。育成は育成で進めるべきでもあるだろうし、強化は強化でっていうところが男子は特に難しいのかなと思います。

最終的には、Bリーグと日本代表が盛り上がれば、バスケの拡大に繋がると思います。代表が勝ち上がることも必要だし、Bリーグが盛り上がることも必要で、この2つをどうやって盛り上げて強くしていくかは、上のカテゴリーの人たちが考えるべきです。大学と高校は育成だと思うので、そこに右にならえがいいのかなと感じています。

──息子さんの活躍をどのように見ていますか?

親バカじゃなくて指導者の目線からすると、ああいうふうに小さくてもやれるということは誇らしいです。でも一方で小さい選手が代表になっている時点で日本は弱いのかなとも思います(笑)。

指導者の目線からすると、日本でも190㎝の子たちがポイントガードをできるような時代が来ればと考えています。そのためには小中高で連携しなきゃ無理ですよね。ここが難しいんですよ。あの身長は親にも責任があるので、あの身長でよくやっているなと。だから逆に言えば、小さくても世界で通用するというのは見せてほしいですし、人様に感動を与える選手になってほしいです。人から愛される人間であってほしいなというのは親の思いですね。

──家庭を持ちながら指導者をやっている方は多くの悩みも持っています。何かアドバイスはありますか?

ウチの家庭はもう特殊な家庭で、子供と僕の会話はほぼない家庭なので(笑)。
ただ、心で繋がっていればいいのかなと思います。よく保護者会で言うんですけど、親っていう漢字は、木の上に立って見守るって書くんです。親は口がないんですよね。ここを理解しながら子育てをするのがいいのかなって最近は思います。

──では、最後にファンへメッセージをお願いします。

昨年もそうでしたが、今年も本当にとても明るく、元気よくはつらつとしてチームの雰囲気も明るいです。バスケットを楽しんで良いチームを育てるために、明るくみんなで取り組んでいる中で、自由の中に厳しさがあるチームを目指しています。そのところを見てほしいです。