石井の『メッセージ付きのパス』から3ポイントシュートに成功

4月15日、中地区3位のサンロッカーズ渋谷はホームで同地区のシーホース三河と対戦。セカンドチャンスポイントを中心に連続得点すると、第3クォーターに26点の大量リードを奪い、94-87と逃げ切った。

SR渋谷は前節の川崎ブレイブサンダース戦を75-103と大敗。第3クォーターにはB1最多となる46失点を喫するなど、ディフェンスの課題が浮き彫りとなった。その中で迎えたこの試合、浜中謙ヘッドコーチは「前節はゾーンオフェンスについて考えすぎてしまい、自分たちの強みであるトランジションを発揮できなかった。良いディフェンスから速いペースでオフェンスを仕掛ける『サンロッカーズらしいバスケ』を再認識しました」と話すように、プレッシャーディフェンスで三河にタフショットを打たせ、リバウンドを回収してからの速攻など、テンポの速いバスケでリードに成功した。

ディフェンスのマインドチェンジを行い、52-36で前半を終えたSR渋谷だったが、後半は42-51と下回ったことに指揮官は課題を感じている。「オフェンスの終わり方が良くありませんでした。悪いオフェンスになると、カウンターを食らい自分たちのディフェンスができなくなります。相手がどうこうというわけではなく、自分たちのオフェンスでの共通理解が足りなかった。ここが追い上げを許した一番の問題だと思います」

浜中ヘッドコーチが話すように、SR渋谷は第3クォーターの中盤から単調なオフェンスでリズムを崩し、三河に走られてしまう。しかし、その悪い流れを途中出場の津屋一球が断ち切る。三河のラストポゼッションでシズ・オルストンとマッチアップした津屋は、相手のドライブを読みタフショットを打たせてミスを誘うと、すぐさま相手陣内の左ウイングへ走り込み、石井講祐からのパスを受け取ってオープンスリーでのブザービーターに成功し、リードを19点に広げた。

津屋はこの一連のプレーについて、次のように振り返る。「1対1で止めないといけない状況で止めることができたので、すごく手応えがあるシーンでした。(相手が)ノーマークにならないようにスイッチする判断ができました。また、守ってから走っている時に時間を見て、自分が打ちやすい定位置に走り込むことができたので、絶対打つと決めて打ち切ることができました」

この日の津屋は、前半にも3ポイントシュートを2本沈めており、いずれも石井のパスからキャッチ&シュートで放ったものだった。「打てるっていう感じもありましたし、石井さんからのメッセージ付きのパスだと感じました。『打て』っていう感じだったので、『打たせてもらいます』って気持ちで打ちました」

大逆転でのCS出場へ「同じミスを続けないという意識を持ち、あと8試合を戦います」

この日、日本人選手ではチームハイとなる11得点をマークした津屋は、9日に行われた新潟アルビレックスBBとの第2戦でも2桁得点を記録し、昨シーズンは44.0%と高確率だった3ポイントシュートも復調の兆しが見え始めている(現在32.8%)。特にこの試合では、フィールドゴールを66.7%と精度高くシュートを決め続けた他、外国籍選手とマッチアップする中でも1ファウルのみと奮闘。わずか11分の出場で貢献度を示す±でシーズンハイ(タイ)の11をマークした。

前半に3ポイントシュートを決めて好調だった中、今シーズンの平均16.2分以下のプレータイムに留まった理由にディフェンスがあったと津屋は振り返る。「もっと出たい気持ちがありましたが、自分の中でこのプレータイムに納得していました。(オフェンスで)調子が良くてもディフェンスがフィットしていないなと。サンロッカーズがディフェンスチームである以上、ディフェンスができていないと試合に出れないのがチームスタイルなので。逆に、オフェンスで0点でもディフェンスが良くて20分、30分出場できる試合もありました。明日はオフェンスの攻め気を失うことなく、ディフェンスの意識を高く持ちたいです」

津屋の起用について浜中ヘッドコーチは、「短い時間で自分の力を最大限に発揮し、やるべきことを全うしてくれました」と評価し、本人も振り返ったディフェンスについてこう話す。「僕の選手起用における判断基準はディフェンスです。もちろん選手個人で判断しているわけではなく、チーム全体を見たり、マッチアップの相性もあります。津屋と相性の良い選手もいましたので、ディフェンスからサンロッカーズを盛り上げてほしいという思いを込めて、彼を送り出しました」

この試合に限らず、相手のエースや外国籍フォワードともマッチアップすることの多い津屋は、「考えすぎることなくシンプルな気持ちで守ることを意識しています。自分自身の役割をはっきりさせています」とディフェンスの秘訣を語り、この日の課題をこう振り返る。「良いシーンもありましたが、全体的に細かいところでディフェンスに寄るか寄らないかの判断に迷いが生じてしまいました。ケニーさん(浜中ヘッドコーチ)は迷いのある選手を気にすると思うので、トラップなどの状況判断を良くしたいです」

そして、中地区3位をキープする勝利に貢献し、大逆転でのチャンピオンシップ出場の望みを繋ぐ活躍を見せたことについて、「チームを勢いに乗せることが自分の役割なので、今日のパフォーマンスを継続していきたい」と先を見据えるとともに、この試合で見つけた課題を胸に残りシーズンへ意気込んだ。「反省点が明確になっていることは良いことで、明日同じミスをしないという細かい目標も生まれます。同じミスを続けないという意識を持ち、あと8試合を戦います。CS出場の可能性はゼロではないので、出場を目指すためにも、明日も勝利して、信州(ブレイブウォリアーズ)戦、琉球(ゴールデンキングス)戦や月末の横浜(ビー・コルセアーズ)戦に繋げられるようにプレーします」

オフェンスが好調の中でもしっかりとチームのアイデンティティであるディフェンスに目を向けて、課題の克服に努める津屋の存在がSR渋谷を望む位置まで連れて行くかもしれない。