ジョーンズ「今日の雰囲気は本当に素晴らしかった」
4月15日、群馬クレインサンダーズと宇都宮ブレックスの第1戦が開催された。この試合は群馬の新アリーナ『OPEN HOUSE AREA OTA(以下、オプアリ)』の柿落としとなったが、群馬が79-71で勝利し、オプアリで最高のスタートを切った。
オプアリは2026年に構想される新B1リーグ基準の1つの要件となる「アリーナ基準」を完全に満たす本州初のアリーナであり、群馬のブースター以外からの注目度も高い。収容人数は5,000人と、2021年4月に開業となった琉球ゴールデンキングスの沖縄アリーナに比べると少ないキャパシティーではあるが、このスモールアリーナが売りの1つである。
実際、群馬が前半に背負った13点ビハインドを第3クォーターで逆転する試合展開も相まり、この日の会場は熱狂の渦となった。アリーナを包み込むようなすり鉢状の観客席は、これまで感じたことがない一体感を生み出し、エースのトレイ・ジョーンズも「今日の雰囲気は本当に素晴らしかったです」と試合後に振り返った。
雰囲気を作り出す演出のメインとなるのが日本最大級の可動式センタービジョンである。キャパシティーとは不釣り合いと思えるほどの大迫力のビッグビジョンに、会場に足を踏み入れた観客からは「すごい!」、「うわぁ!」という、言葉で表現できないほど驚きの声が上がっていた。
試合直前にはセンタービジョンと音響、さらに光を駆使した演出が行われ、観客の多くが高揚状態となった。この演出が試合中の熱狂に繋がったことは明らかで、さらにその熱狂が選手を強く後押しした。マイケル・パーカーは「(会場から)エネルギーを感じて、エキサイティングにプレーできました」と語っている。
並里「自分たちのホームコートじゃないと思うくらい変わっていた」
新型コロナウィルスが流行する以前、群馬の2019-20シーズンの平均観客人数は1,263人だったが現在は3,000人に迫る勢いだ。コロナ禍の2020-21シーズンにB1昇格するとともに、現在の太田市にホームを移転したことを考えると、群馬はコロナ以降に新規の観客が急激に増えたチームの1つと言える。
今年3月より声出し応援が全面解禁となったが、声出し応援を経験したことがない新しいブースターが多い会場において、声出し応援が定着している印象はなかった。しかし、オプアリでは多くの観客が声を出しチームを後押ししていた。並里は「一瞬、自分たちのホームコートじゃないと思うくらいファンの皆さんが変わっていて、僕らも気合いが入ったのですごく良い試合になりました」と振り返る。
多くのブースターが待ち望んだオプアリの柿落としは、演出や試合展開など様々な要因が相まり、エネルギーとなって会場を爆発させ、選手を後押しした。それにより選手も勢いに乗り、逆転勝ちをおさめた。チームとブースターは表裏一体であることをあらためて体感した試合だった。
水野宏太ヘッドコーチが「非日常的な空間で群馬クレインサンダーズとして戦っていくこと、そこに一緒になってファンの皆さんも戦ってもらって、それが積み重なっていくことで非日常が日常になった時にここが聖地になっていくのではと思っています。価値や結果、内容を突き詰めていくことや、試合で最高の瞬間を皆さんと共有できるように戦い続けていくことが僕らのやる使命ではないかと思っています」と話した通りに、その歩みの一歩目がこの試合から感じられた。
オプアリで目指す「バスケットボールの聖地」
群馬はオプアリを新B1リーグ基準をクリアするためだけのアリーナととらえていない。水野ヘッドコーチが就任時から口にしている「文化を創る」というキーワードからも分かるように、チームは太田市にバスケを根付かせる覚悟で臨んでいる。
吉田真太郎GMも「国の課題である地方創生を太田市を軸にチーム、アリーナ、企業でどうやって解決するのかというのが私のモチベーションになっています」と語るように、オプアリを太田市の誇りにして街を発展させていく考えだ。
オプアリは群馬のホームアリーナとして役割を担っていくが、レギュラーシーズンの試合が開催されるのは年間わずか30日だけである。よりバスケ文化を根付かせるためにも、今後は他カテゴリーの誘致も視野に入れている。
「オプアリでの試合やエンターテイメントが魅力的なものになることによって、いろんなものを招致できると思っています。まずは私たちの価値をどれだけ上げられるかというところにフォーカスしています」と吉田GMは展望を話し、「バスケットボールをやるのに特化したアリーナとして『バスケットボールの聖地にしよう』というところから始まっています」と、意気込みを見せた。
水野ヘッドコーチも「この場所がチームやファン、そして群馬県の聖地になっていけるようにチームみんなで歩んでいきたいと思います」と足並みを揃えている。
オプアリが開業してチームとして一つの節目を迎えたが、あくまでスタートである。目指す場所に行き着くためにも、いくつもの階段を上がっていく必要があるだろう。そのためにもチーム、ファン、自治体など多くの人が一丸となって盛り上げていくことが不可欠となる。まずは多くの人にポジティブに受け取られて船出は成功したため、さらなる飛躍を遂げることを期待したい。
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