サンドロ・マムケラシュビリ

ヨキッチはシーズン26回目のトリプル・ダブルで初の黒星

ニコラ・ヨキッチはスパーズを相手に37得点11リバウンド11アシストを記録した。今シーズン26回目のトリプル・ダブルで、3シーズン連続のMVPへと突き進む彼のトリプル・ダブルにはもう誰も驚かない。驚くべきは、彼がトリプル・ダブルを記録した26試合目にしてナゲッツが初めて黒星を喫したことだ。

前半はナゲッツが優位な試合展開だったが、後半になって逆転され、第3クォーター途中にザック・コリンズとマイケル・ポーターJr.が乱闘を起こした。コリンズは負けん気の強い選手で、ヨキッチとのマッチアップで劣勢を覆そうと必死だった。その彼がポーターJr.にポスタライズダンクを食らってカッとなり、ディフェンスに戻るポーターJr.を背後から押す。ここまではコリンズが一方的に悪かったが、ポーターJr.が振り返ってコリンズを引き離そうとする際、彼の腕がコリンズの首に入ったことで両者退場となった。

試合前から、西カンファレンス首位を快走するナゲッツに対し、ロッタリー狙いのスパーズに勝ち目はないとの予想が大半だった。この退場劇も、ヨキッチとマッチアップするコリンズを失うスパーズが、選手層が薄いためにダメージが大きいと見られた。しかし、再開後に両チームの選手が乱闘の余波でエキサイトし、勢いはあってもプレーに雑さが目立つ中で、ナゲッツのスキルの良さは削がれ、若いスパーズの勢いが増すことになった。

選手層についても、事前の予想が覆された。コリンズ退場後、控えセンターのチャールズ・バッシーが出場するもファウルトラブルとなり、センターのローテーションは崩壊したかに見えた。しかし、それまで全く出番のなかったサンドロ・マムケラシュビリがチームを救う。第4クォーターだけの出場で11得点4リバウンド2アシストを記録。こうして最終クォーターを30-27で上回り、128-120でナゲッツ相手のアップセットを成し遂げた。

一方でナゲッツのベンチメンバーで目立った活躍ができた選手はおらず、ベンチからの得点で25-58と圧倒された。それ以上に128失点を喫したディフェンスが問題だろう。ブルズ戦に続く連敗となったが、この2試合はいずれもヨキッチがペイントエリアの外に引き出され、背後のスペースを狙われる失点が目立った。『NBA Stats』によれば、スパーズはヨキッチに対するシュートを32本中19本と高確率で決めている。ヨキッチに俊敏な動きはできず、スピードのミスマッチを作られては不利だ。また彼のファウルトラブルは絶対避けなければならず、あまりフィジカルにディフェンスできない事情もある。スパーズはここを執拗に狙った。

ナゲッツ指揮官のマイケル・マローンは「ヨキッチはディフェンスも上手い。優れたアスリートでなくても、優れたディフェンダーになれる」とエースを擁護している。実際、ヨキッチは高さと腕の長さ、ポジショニングと判断力で鈍重という弱点をカバーしており、ナゲッツのディフェンスレーティングはヨキッチがコートにいる時の方が格段に高い。

相棒のジャマール・マレーも「彼は腕を伸ばすことで相手にタフショットを強いる、賢いディフェンダーだ。リバウンドやティップ、ディフレクションもすごく上手い。彼がディフェンスをできないと言う人は、見た目だけで判断しているんだろうし、バスケットボールを見ていない」と語る。

しかし、ヨキッチのスピード不足をチームディフェンスで補えていないことが、スパーズ戦での敗因になった。スパーズの選手たちはピック&ロールでヨキッチを引き出しては、強引にドライブを仕掛けていった。得点を狙うのはもちろんだが、それだけでなく常に仕掛けて疲労を誘い、あわよくばファウルを引き出したいという意図があったのは明らかだ。ここまで快調な戦いを続けて死角がないように見えるナゲッツだが、プレーオフ前に解決しなければならない課題が出てきたのは間違いない。

スパーズはこれで17勝目。今シーズンで最も会心のパフォーマンスと言っていいだろう。バックスを解雇され、スパーズに拾われたマムケラシュビリにとっては新天地で3試合目の出場。「バックスでは全くプレータイムのない試合がほとんどだったけど、僕はいつ呼ばれてもプレーできるように、そのつもりで試合を見ていた。今日もそうだった。チームが勝つために自分に何ができるか、そのすべてをやるつもりでコートに入った」と『マム』は言う。

ジョージア代表の彼は、同じヨーロッパ出身でスキルとバスケIQに長けたヨキッチを「これまでプレーした中で最高のヨーロッパ出身選手の一人」と尊敬している。そのヨキッチとマッチアップして勝利をもたらす活躍ができたことで、彼のNBAキャリアで最高の試合となった。