「島根ではディフェンスが8割。これまでとは真逆」
B1は2月に中断期間を迎えたが、西地区は特に熾烈な上位争いが繰り広げられている。島根スサノオマジック、琉球ゴールデンキングス、広島ドラゴンフライズ、名古屋ダイヤモンドドルフィンズがいずれも7割以上の勝率を誇り、4ゲーム差の中でひしめいている。
そんな西地区において首位を走るのが31勝7敗の島根。昨シーズンは大型補強を敢行し、西地区2位と大躍進を遂げた。チャンピオンシップのセミファイナルで琉球に敗れシーズンを終えたが、今シーズンに補強したのは津山尚大と谷口大智の日本人選手2名のみだった。
3ポイントシュートが打てる日本人ビッグマンとして貴重な存在である谷口は、昨シーズンの茨城ロボッツ所属時にそのプレースタイルを男子バスケ日本代表ヘッドコーチのトム・ホーバスに見初められて31歳にして初めての代表も経験した。そんな谷口は新天地として選択した島根でもチームにとって欠かせないロールプレーヤーとして存在感を発揮している。
現在のチームでの役割を谷口はこう考えている。「ディフェンスに関しては自分が出場すると相手が狙ってきます。そこを戦術と組み合わせてどう守るか、その戦術をしっかり遂行することが一番の役割だと思っています。メンタル的には繋ぎの役割として、良い流れをそのまま繋げていければと思ってやっています」
帰化選手としてニカ・ウィリアムスが所属する島根では谷口の出場時間は限られる。それでも、その少ない出場時間にこそ重要な役割があると谷口は言う。「ニカがいないとペリン(ビュフォード)が出られないということは十分に理解しています。ゲームの終盤にニカが出ていないと厳しい部分もあるので、ニカのファウルがかさまないように前半からしっかりと繋いで、後半にニカがファウルをしても余裕がある状態にするのがベストだと思っています」
島根は昨シーズンよりもディフェンスの良さが際立つ試合が多い。特に中断期間直前に開催されたアルバルク東京との上位対決はディフェンシブな試合を島根がモノにして連勝した。谷口の言葉からもチームがディフェンスを重視しているのが分かる。
「これまでのキャリアでは、自分のマインドはオフェンスが8割でディフェンスが2割でした。このチームでは真逆になってディフェンスのことを8割考えていて、オフェンスに関してはシンプルにキャッチアンドシュートを決めることにフォーカスするだけになっています。自分がディフェンスでミスをすることによって、それが勝負を決めてしまう失点になりかねないので、上位チームとの緊迫した試合ではワンポゼッションのミスも許されません。今の状態で満足はしておらず、チームに対してできることを突き詰めていきます」
「自分がやられたら当たり前に怒るし、止めたら褒めてくれる」
屈強な外国籍選手が凌ぎを削るBリーグのインサイドにおいて、対抗できる日本人ビッグマンは決して多くない。谷口もキャリアを通じて常に自分より身体の大きい選手を相手にしてきた。その中で、島根で期待されていることは今までとは違っていると谷口は語る。
「今まで直接言われたことはないものの『外国籍選手にやられて当たり前』と思われている節があり悔しい思いをし続けてきました。でもポール・ヘナレヘッドコーチは自分がやられたら当たり前に怒るし、止めたらめちゃくちゃ褒めてくれるので頑張りがいがあります。ペリンも自分がディフェンスをできないと試合中でも怒ってきますが『お前を怒るのは期待しているからだ。何も期待してなければ何も言わない』と言ってくれます。優勝するためには今のチームで誰一人欠けてもいけないし、誰一人仕事をサボってはいけないと常にチームで確認し合っています。
ディフェンスが8割と語る通り、強力な外国籍相手にも身体をぶつけていく姿は試合中何度も見られる。オフェンスは「シュートを決めるだけ」とシンプルに考えているが、島根ではそのシュートが武器になっている。実際、2月5日のレバンガ北海道戦では拮抗する展開の第1クォーターで3ポイントシュートを2連続で成功させてチームに勢いをもたらした。
「今シーズンは3ポイントシュートの確率が上がっていません。プロキャリアでここまで確率が良くないのは初めてのことなので、いかにいつも通り打ち続けられるか意識しています。このチームはオフェンス力の高い選手が多いですが、その中でも自分がしっかり外から打たないとディフェンスが分散されずにリズムが悪くなってしまいます。出場した時には思いきり打つと常に決めていますし、自分に限らず白濱僚祐や阿部諒は打っていいというルールの中で打つのが役割だと思っています。それによって外国籍選手たちが攻めやすい状況を作りたいです」
自身の役割を深く理解しつつ、やりがいを感じながらプレーする谷口。彼の貢献度が高ければ高いほど、島根の勝利は近づく。
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