水戸健史

高岡ヘッドコーチ代行「別のチームというイメージ」

富山グラウジーズは巨漢センターのジョシュア・スミスと万能ビッグマンのブライス・ジョンソンの2人を軸とし、ハーフコートオフェンスとゾーンディフェンスを武器にこれまでのシーズンを戦ってきた。しかし、1月21日の仙台89ERS戦で負傷したスミスがインジュアリーリスト入りし、ジョンソンが右アキレス腱断裂の重傷で長期離脱と、2人の大黒柱を失ってしまった。

こうして迎えた琉球ゴールデンキングスとの第1戦は、弱体化したペイントエリアを攻め込まれ100点ゲームで敗戦。もちろん、インサイドへのダブルチームを徹底し、確率の低い選手のアウトサイドシュートは捨て気味に守るなど、勝利の道筋を探した。それでも高岡大輔ヘッドコーチ代行が「インサイドからのキックアウトで琉球さんに的確にショットを決められたことでタフな状況になりました」と振り返ったように、マークを甘くした選手に3ポイントシュートを射抜かれ、守りどころを絞れなくなったことで大差がついた。

だが、悪い部分だけが浮き彫りになったわけではない。課題のターンオーバー数は平均(15.7本)を大きく下回る5本に抑えられ、オフェンスリバウンドの本数でも9-10と肉薄した。高岡ヘッドコーチ代行も「ターンオーバーを制限できた」と収穫の一つに挙げたが、それは新戦力の効果でもあるという。「コンバートしている選手が多い中、喜志永(修斗)選手はずっとポイントガードとしてやってきた選手なのでボールが収まります。あとは(ノヴァー)ガドソン選手のプッシュもターンオーバーが少なくなった理由の一つです」

喜志永は特別指定選手ながら落ち着いたプレーを見せ、24分のプレータイムで3得点5アシストを記録し、ターンオーバーはゼロに抑えた。富山一筋、15年目の水戸健史は大学生とは思えない冷静なプレーぶりを評価し「ベテランが言うのなんですけど、チームを引っ張っていくぐらいの気持ちでやってくれたら」と背中を押す。

インサイドプレーヤーから、コントロールタイプのガードとスコアラータイプのフォワードに選手が入れ替われば、戦い方も変わる。この試合はボールをプッシュし、トランジションから3ポイントシュートを打つ場面が何度も見られた。高岡ヘッドコーチ代行も「これまでと全く違うバスケをしている」と説明した。「インサイドに強みがあるチームだったのでそこを起点にオフェンスを組み立てていましたが、今はそこのアドバンテージが全くないので、機動力を生かしたオフェンスを展開しようとシフトしています。今までの富山グラウジーズとは別のチームというイメージを僕自身も持っています」

結果的にフィニッシュの精度はそこまで上がらなかったものの、スタイルの変化によって水戸がドライブする数は増えた。「自分たちが勝てるところはスピードしかなかったので」と、苦笑いを浮かべたが、水戸はこの新しいスタイルが持つ力を信じている。

「選手も入ったばかりですし、まだまだですが、今のこのバスケットを続けていけば、ジョシュが戻ってきた時に今までとは違うバスケットが展開できると思っています。これまでにもいろいろなシーズンを経験してきました。もちろん今もタフなシチュエーションですが、チームの雰囲気は悪くありません。シーズンも約3分の1残っていますし、まだまだ終わらないです」

シーズン半ばを過ぎてのスタイル変更にアジャストすることは簡単ではない。だが、新たな武器としてこのスタイルが浸透する可能性も十分にある。怪我の功名となるか、引き続き富山の今後に注目だ。