マーケル・フルツ

10年ぶりに敵地でのウォリアーズ撃破を達成

マジックが敵地でウォリアーズに勝つのは、2012年12月以来の出来事。『王朝』に負け続けた連鎖を、マジックは現地1月7日に断ち切った。ウォリアーズはステフィン・カリーが肩のケガで不在で、クレイ・トンプソンは試合開始前のウォーミングアップで膝に痛みが出て急遽の欠場となった。アンドリュー・ウィギンズが1カ月ぶりに戦線復帰したが、良いインパクトは残せなかった。

一方のマジックにとっては、派手なスタッツはなくても会心の勝利と言えるゲームだった。第1クォーターはアンソニー・ラムに4本の3ポイントシュートを決められビハインドを背負ったが、試合が進むにつれてディフェンスが良くなり、ウォリアーズのパスワークを分断して3ポイントシュートを決めさせない。後半はウォリアーズのアシストがわずか7、3ポイントシュートは25本中6本成功と抑え込んだ。

オフェンスではルーキーにしてエースのパオロ・バンケロが25得点、フランツ・バグナーが24得点、シックスマンのコール・アンソニーがベンチから16得点とバランス良く得点を挙げ、後半開始直後にリードを奪うと、そのまま点差を広げて115-101と押し切った。

ウォリアーズを率いるスティーブ・カーは「積極的にプレーする相手の勢いを押し返さなければいけないところで、ウチにはそれができなかった。試合を通じてずっと相手のペースだった」と完敗を認めている。

この試合で最も活躍したのはマーケル・フルツだ。2017年のNBAドラフト全体1位指名選手である彼は、度重なるケガと、ドラフト1位選手というプレッシャーに苦しんできた。ドラフト同期で3位指名のジェイソン・テイタム、13位のドノバン・ミッチェル、14位のバム・アデバヨに比べれば、これまでの実績では大きく劣る。それでもマジックで在籍4シーズン目を迎えた今の彼は、ようやくそのポテンシャルを発揮できるようになった。

フルツは31分のプレーで16得点5リバウンド7アシスト6スティールを記録。6スティールは彼が「チームとして高いエネルギーを持って守り、トランジションバスケットに繋がった」と評価するものだが、それを別にすれば他のスタッツが取り立てて良いわけではない。それでもフルツはポイントガードとしてバンケロやバグナー、アンソニーやウェンデル・カーターJr.のそれぞれ得意なプレーの形を作り出すことで、彼らの才能を引き出す。ビッグラインナップが機能しているのは、フルツのプレーメークがあってこそだ。

「まずはペイント内にボールを動かし、できるだけイージーレイアップのチャンスを作ること。そこからキックアウトやカットする選手への合わせといったプレーを探していく。そうすれば必ず良いシュートチャンスが作れると思っている」とフルツは言う。

サイズがあって走れるのがマジックの魅力で、それを引き出すためにフルツは力強いボールプッシュと縦への展開でペースを上げる。それでも「僕自身やチームメートが良いシュートを打てない時にはペースを落とすのも大事。そうやって一つずつ良いポゼッションを作っていったのが今日の結果に繋がった」と、ペースをあえて落とす上手さもある。

「こうやってチームは成長していくんだから、継続していかなきゃね」とフルツは言い、成功体験を積み上げることの大切さを語る。「どの試合でも勝つチャンスはあると思っている。自信を持ってゲームプランを遂行するんだ。その自信は勝たなければ手に入らないものだけど、その日その日でベストを尽くす、それを毎日積み重ねることが大事なんだと思っている」

こうしてフルツはマジックの若い選手たちのポテンシャルを引き出しているが、彼自身にもまだまだ伸びしろはあるはずだ。キャリアの最初にあった大きな挫折を乗り越えて『自分らしさ』を見いだしたフルツは、これから本当の力を発揮することになる。