『自分で点を取る』エースから、チームオフェンスの中心に
マイク・コンリーはグリズリーズ時代には平均20得点を超えるエースでしたが、2019年夏にジャズに移籍してからはシューター的な位置付けにプレースタイルをシフトするとともに、年齢による身体能力の衰えもあってインサイドへのドライブから点を取るのが難しくなりました。
チームが再建へと舵を切った今シーズン、平均得点はついに10点を下回っています。ところが、オフェンスの起点としてアシストは7.5を記録し、16年目にしてキャリアハイを更新しようとしています。
近年のコンリーは正しい判断でパスを回してアシストを記録するものの、自らディフェンスを切り崩してチャンスを作るプレーは減っていました。ベテランらしい落ち着きと安定したシュート力でチームに貢献するロールプレイヤーへと役割を変え、ジャズが再建へと動いた時はトレードの第一候補と考えられていました。
しかし、シーズンが始まると戦力不足と思われながら健闘している新生ジャズのキーマンとしてチームをコントロールしており、コンリーが欠場した試合は4勝7敗と負け越しています。
ラウリ・マルカネンを中心に機動力のあるインサイド陣と、ジョーダン・クラークソンやマリク・ビーズリーなどシュート能力の秀でたガード陣を揃えたジャズは、オフボールムーブによる流動的なポジションチェンジでオフェンスを作っていきます。その中でコンリーはドライブで切り崩すのではなく、絶え間なく動くポジションチェンジとテンポの良いパス交換でプレーを構築しており、決定機を生み出すプレーメークではなくてもチームのオフェンスに良いリズムを生み出しています。
またマルカネンとの相性の良さも光っており、起点であるコンリー自身が動く中で、マルカネンのパスを呼び込むオフボールムーブに対して、タイミング良くパスを出します。自分自身が止まった状態でパスを合わせるポイントガードは他にもいますが、コンリーのように動きながらタイミングの良いパスを合わせられる選手は珍しく、かつコンリーはターンオーバーが極めて少なく、的確な状況判断が光ります。
グリズリーズ時代のコンリーは、マルク・ガソルとのギブ&ゴーを中心に『自分が点を取るために』動き回るのが上手いエースでしたが、今はその動きを『チームメートに点を取らせるために』使うようになりました。個人で決めきる能力は衰えても、動きながら正確な判断ができるパサーとして新たなスタイルを構築しているのです。フィールドゴール成功率は40%を下回っているものの、アシスト/ターンオーバー率は脅威の4.3で、ジャズのオフェンスを引っ張っています。
再建へと舵を切ったチームは若手有望株を多く集め、粗削りなプレーに陥りがちですが、ジャズは信頼できるベテランポイントガードを中心にプレーシェアすることで、予想外の成績を残しています。コンリー自身も若返ったかのように新たなプレースタイルを楽しんでいるように見えるだけに、まだまだ活躍してくれそうです。