橋本竜馬

文=鈴木栄一 写真=幡原裕治

「どんな時でも前を向いて、タフな状況に向かっていく」

11月24日、琉球ゴールデンキングスは横浜ビー・コルセアーズ相手に75-58で勝利。前日に続いての白星で同一カード連勝を達成した。89-53と圧倒した23日の試合に比べ、この日はリベンジを狙う横浜の反撃に遭う。しかし、第3クォーター序盤に17連続得点のビッグランを生み出し、そのまま押し切った。

この連勝を司令塔の橋本竜馬は「もっとできるところはありましたが、何よりもフォーカスしていた勝利を挙げることができました。チームでやるべきこと、何をやらせてはいけないと区別してできたところはあります。ただ、リバウンドで相手が上回ったのは反省です」と、冷静に振り返る。

これで11月のリーグ戦は終了し、琉球は14勝5敗で西地区の首位に立っている。アルバルク東京相手に3勝1敗、千葉ジェッツに1勝1敗など上位チーム相手にしっかりと結果を残す一方で、下位チーム相手に拙攻を繰り返す自滅で敗れた試合もある。シーホース三河の司令塔として『勝利の味』を知る橋本は、チームの現状を次のように見ている。

「今の段階では、やるべきことをできる時、できない時があります。できる時は強いチームになりますが、そうでないと下位チームに負けてしまう。その波をなくすことが大切です」

そして「高いスタンダードを築くことはすごく難しいです」と、成功体験を積み重ねきたからこそ常勝チームになることの困難さを熟知している司令塔は、次のようにチームが取るべき姿勢を語る。「どんな時でも前を向いて、タフな状況に向かっていってそれを打破していく力をつけていく。そういう風になっていきたいと思い続ける、言い続けていくことはすごく大事です」

橋本竜馬

「自分の良さは何か、自問自答しながら」

橋本個人は、先発で1試合30分近く安定してプレーしてきたこれまでと違って今シーズンは控えスタートとなった。今はまだ新しい役割の中でどうプレーすべきか模索段階となっている。

佐々宜央ヘッドコーチも、「彼に対しては絶対的な信頼があります」という前提の上でこう続ける。「バックアップとして、どうやってほしいのか伝えきれていない部分はあります。橋本を控えガードとしてどう働かせるかはチームとしても次のステップに向けての課題です」

そして橋本自身は、「どんな役割でも、自分の良さを出していくことは変わりない。それが何なのかを自問自答しながらやっていきますが、まずはチームに必要なことを考えないといけない。危機感を持って毎日をやっていかないと、自分も押し出されてしまいます」と考えている。

指揮官とはすでに強固な関係が構築されている。琉球の攻勢によって相手がタイムアウトを取った時、テンションが上がった橋本と佐々がハイタッチをかわす姿は見慣れた光景になりつつある。「コミュニケーションをすごく取っていただける感情豊かなヘッドコーチで、自分の士気も高まります。ああいう姿はファンのみなさんも喜んでいただけると思っています。狙ってやることはなく、自分たちの感情がぶつかりあった時になっているので、そういうシーンが増えるようにしていきたいです」

橋本竜馬

ベンチスタートも「チャレンジを楽しんでいきたい」

新しいチーム、新しい起用といろいろな変化があるが、その中でも全く変わらないところもある。それはリーダーとしてチームを鼓舞する姿だ。「チームがやるべきことを強調し、声に出しにくいことも言っていきます。優勝したいと琉球に来ました。そのためにどういう歩みをしていくのか重要。まだまだ足りないことはたくさんあります。どういうチームになっていくのか楽しみです。また、自分自身がどれだけできるか、チームとしてどれだけ勝てるかのチャレンジを楽しんでいきたいです」

確固たる地位を確立した選手が、新しいチームで新しい役割に適応すること。また、常勝チームとなるための基盤を積み上げていくことは、ともに簡単なことではない。ただ、橋本は「難しい時ほど考え込むと落ち込んでしまいます。苦しい時こそ初心に戻る、試行錯誤する過程を楽しまないとより難しくなってきます」と楽しむことの重要性を強調する。

琉球の新戦力たちは、並里成が現在リーグ1位の平均7.8アシストを、ジョシュ・スコットはチームトップの平均17.7得点を挙げている。橋本は彼らに比べると、スタッツ面でのインパクトが小さいことは否めない。ただ、チームに与える影響力に遜色はないことは、シーズンが深まるにつれより鮮明となっていくはずだ。

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