田中大貴

文=丸山素行 写真=鈴木栄一

「フィニッシュまで持っていくことも大事」

ワールドカップアジア2次予選Window5に挑むバスケットボール男子日本代表は昨日、強化合宿の最終日を迎えた。今回のWindow5では八村塁と渡邊雄太の出場は難しいと見られている。ニック・ファジーカスが復帰したにせよ、八村と渡邊を合わせた平均39得点分の攻撃力が失われることは日本にとって大きな問題だ。

こうした状況で田中大貴は、自分に言い聞かせるようにペリメーター陣の奮起が必要と主張した。「自分にしろ、比江島(慎)選手や馬場(雄大)選手、ペリメーター陣がもっと攻撃を仕掛けないといけないと思います。彼ら(八村と渡邊)がいないので、高さの部分は補えないですけど、得点の部分は補えるようにやっていきたい」

ここまで田中は全8試合に出場し、平均20分を超えるプレータイムを与えられている。リーグトップクラスの2ウェイプレーヤーであることは疑いようがなく、指揮官の信頼も得ているが、代表ではここまで平均6.5得点とそのオフェンス力を出し切れていない印象も強い。

もちろん得点は試合への貢献度を測るものさしの一つにすぎず、「得点を取ってくれとは言われてないですけど、積極的にアタックしなさい」と指揮官のフリオ・ラマスからはアドバイスを受けたそうだ。

また田中は「チームで崩すのはもちろんなんですけど」と前置きした上で、「速い展開の時に個で行けるのであれば、どんどんペイントにアタックすることが大切で、自分たちがフィニッシュまで持っていくことも大事です」と個を強調する。

田中大貴

カタール戦に自信「我慢強いチームではない」

密集地帯やリングに近い場所へパスを通すことができればイージーシュートの機会は生まれるが、それだけ難易度も高くターンオーバーのリスクも上がる。そこでいかに正確なプレーを選択し実行できるかが選手の評価につながるが、田中は総じてこの状況判断能力に秀でる。それでもこのWindow5に関しては、「行ける時はガンガンドライブして、ファールをもらうくらいの気持ちでやっていくことも必要」と今まで以上にオフェンシブにプレーする意識を持っている。

世界レベルの個の能力を有した2人が出場できない状況ではあるが、ラマスヘッドコーチはあえて個を強調することによって「選手がいてもいなくても、レベルを落とさず維持できるように」という考えを浸透させるつもりだろう。

ホーム開催を2連勝で終えることが求められるが、田中も「まずは目の前の試合しかありません」と11月30日のカタール戦に意識を集中している。

カタールに対しては「そこまで組織的なチームという感じではない。ボールを動かし続ければどこかでミスが出てくる、あまり我慢強いチームではないと思います」と強気なコメントを残した。

冷静な状況判断から効率の良いプレーを選択する安定感が持ち味の田中。だが今回の試合では、多少リスキーでもアグレッシブにアタックする、攻撃的な田中の姿にも期待したい。