精華女子

取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

大上晴司監督が作り出す雰囲気なのか、精華女子はどの代も学年の垣根がなく、さらには先発と控え、サポートメンバーの違いもなく『チーム一丸』であり続けている。スコアラーの三浦舞華とポイントガードの樋口鈴乃は1年生だった去年からスタメンとして活躍。インターハイにもウインターカップにも連続出場して場慣れしてきた。今年も精華女子を引っ張るのは下級生で、3年生でただ一人スタメンを務めるのが矢野聖華。ただの仲良しグループではなく、勝つために手を抜かないバスケットボールチームを引っ張るキャプテンとして奮闘している。目標は昨年に続き『全国ベスト8』。高い壁に挑む3人にウインターカップへの意気込みを聞いた。

樋口「今年は自分でも驚くぐらい緊張しなかった」

──まずは自己紹介をお願いします。

矢野 4番の矢野聖華です。二島中出身で、岩手全中でベスト16まで行きました。

樋口 2年の樋口鈴乃です。長丘中出身です。中学校の時は県でベスト4が最高です。

三浦 2年の三浦舞華です。宮城県の富谷中学校から来ました。中学校ではバスケ部がなかったので、クラブチームでバスケをしていました。そのクラブチームでは全国に行ったことでU16に選んでもらいました。今はU18の日韓中の交流大会に出させていただきました。

──矢野選手はキャプテンを務めています。このチームをどうまとめていますか?

矢野 去年すごく良いキャプテンがいたので、自分ができるのか不安が大きかったんですけど、自分は自分らしくチームメートがどう思っているかを自分の中に取り入れて、それを知った上で声を掛けてまとめるように心掛けています。

──三浦選手と樋口選手は1年生から試合に出ています。この1年でどこが成長しましたか?

三浦 高校に来て初めてウェイトトレーニングを始めたので、身体の強さが変わりました。

樋口 自分はドライブとかレイアップに行くプレーがあまり好きじゃなかったんですけど、この1年でブレイクからレイアップもできるようになりました。それと、去年のウインター予選の決勝はめっちゃ緊張してたんですけど、今年は自分でも驚くぐらい緊張しなかったです。

矢野 1年生の時は口数が少なくて、自分もどう喋っていいか分からなかったんですけど、1年間すごしたことで盛り上がった会話もできるようになって、それがコートでも出ています。

──先発の5人のうち3年生はキャプテンの矢野選手だけで、あとは2年生と1年生がスタートだと聞きましたが、嫉妬とか上下関係の大変さはないですか?

矢野 下級生でもスタートとして認められるだけ練習量をやっています。全員がチーム内でそれを見ているから、3年生が下級生に嫉妬をすることはないです。スタートじゃなくても3年生は下級生にアドバイスしているし、良い関係になれていると思います。

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三浦「チーム全体が一つにならないと勝てない」

──インターハイでは結果を出せず、仕切り直しでウインターカップの準備を始めました。そこから今まで、チームとしてどんなことを意識して練習と試合をしてきましたか?

矢野 ずっとトランジションバスケットで速く攻めると言ってたのですが、意識はあっても実際にビデオを見るとすごく遅くて。でも国体で教えてもらったブレイクを、その後もずっと練習しました。自分の役割が決まったブレイクで、実際に速くなって、コートの中の5人だけでなくベンチもサポートからも声が出るようになりました。

樋口 リバウンドを取ってからの走り出しは多分どのチームよりも意識してやっているので、ブレイクは負けないというか、負けたくないです。去年と比べるとみんなの意識が変わって、一人ひとりの役割がはっきりしてるから、だいぶ速くなりました。

──ここからウインターカップまでに修正しないといけない部分は?

三浦 一つひとつのプレーでできる人とできない人との差が激しいです。全員が同じことを当たり前にできるようになって、チーム全体が一つにならないと全国では勝てないと思います。

──ウインターカップ予選の決勝では、樋口選手がのびのびプレーして、ガンガン攻めていたのが印象的でした。

樋口 三浦はいつも厳しくマークされるので、前半は自分が攻めようという意識はいつも持っています。前半に自分が攻めて、後半に自分のマークが厳しくなったら他の選手のマークが甘くなると考えています。それからガンガン攻めるようになりました。

──三浦選手はマークがいつも厳しくて、ストレスが溜まったりすると思います。

三浦 フェイスガードされたら、スクリーンに行ってもあまりスイッチされないのでスクリーンに引っかかって、自分以外の人がノーマークになる確率が高いです。自分が付かれていることを利用して他の人を生かすことを意識しています。1年の時はとにかく無理やり行こうと考えていたんですけど、人を生かすプレーができると考えてから他の選手がどんどん攻めるようになったので、これで良かったんだと思います。

──大上監督は面白い先生だと聞きますが、それを示すエピソードを教えてください。

矢野 生徒との距離が近いです。練習中にギャグを言ったり、それに私たちいが反応しないと無視したり。夏の熱い時期に「体調管理をちゃんとしろ」と言ってた先生の調子が悪くて、全然体育館に来なくて、「午後の練習は休みにする」って(笑)。そんな感じなので私たちも自分たちの意見を言いやすいです。

三浦 コートに入ったらコーチと選手の関係なのですが、話し掛けやすいオーラを出してくれます。テンション高い時には「こんにちは」と言うと「ウェーイ」って返してきたり(笑)。自分の親みたいに近い関係で、何でも話しやすいです。

樋口 チームの中で一番明るいのが先生です。私はガードなので、試合中に先生と目が合うとセットプレーのサインを出したりしてくれるんですけど、新人戦の頃はまだ先生のことがよく分かってなくて、そのサインが伝わらなくてバックコートでドリブルをつきながら見ていたら、そのまま8秒バイオレーションを取られたことがあります(笑)。

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矢野「絶対にここに戻ってリベンジしようと誓った」

──今はいろんな情報があって、選手たちはYoutubeなどの動画を参考にしていると聞きました。目標としている選手やスタイルがあれば教えてください。

樋口 私はWリーグに入ることを目標にしているので、JX-ENEOSの藤岡麻菜美さんをよく見ています。クロスオーバーの緩急のつけ方を見て練習しています。

三浦 聖和の今野紀花さん、八雲の奥山理々嘉さんとか、岐阜女子の池田沙紀さん。代表で一緒だった選手たちですが、試合をやっていると輝いて見えます(笑)。自分が今できる最高のプレーに近付くために参考になると思っています。一人ひとりドリブルの緩急の付け方が違うし、それぞれのプレーを身ながら自分にもできる技を取り入れようとしています。

矢野 私は男子なんですけど、桜丘のシューターの富永啓生さんです。シュートフォームはワンハンドだから全然違うんですけど、シュートフェイクからのドライブとか、シュートタッチを見ていると良い影響をもらえます。

──キャプテンから見て樋口選手と三浦選手の良いところ、直してほしいところは?

矢野 三浦選手はすごくポジティブで、前向きになれる言葉をみんなに掛けてくれます。プレーでも頼れる部分が多くて、すごい頼りやすい後輩です。プレーで言えば、もっと無理矢理でも行ってくれればと思います。三浦選手が積極的に行くことで、シュートが入らなくてもチームに良い影響があるので。樋口選手は2年生になってやっと話すようになったんですが、今は試合中でもめっちゃ言ってくるんです。これは2人ともですが、「今はこうしてほしい」とちゃんと言ってくれたほうがありがたいです。でも樋口選手は滑舌をしっかりしてほしい。試合中、Yというプレーがあって、ずっと「Y!」って言ってるんですけど、誰にも伝わってない(笑)。

樋口 全然伝わらないんですよ。大きい会場になると歓声もすごいので、新しいセットプレーをやる時はまず手で表すサインを。それでもダメならスローインの選手に伝えます(笑)。

──お2人から見て矢野キャプテンの良いところと直してほしいところを教えてください。

樋口 プレーの面では3ポイントシュートが本当にすごいと思ってて、決めてほしい時にめっちゃ入るのは本当にすごいです。

三浦 チームの流れを変えるシュートの時はほとんど決めてくれます。そこでチームに流れが来ることが多いので本当に助かります。ウインターカップ予選の時は試合前に緊張しすぎて、いつもやらないことをやったりするので大丈夫かなと思います。

樋口 練習終わりに「ごちそうさまでした」って言ったんです。めっちゃ面白かった(笑)。

──ウインターカップに対する意気込みを教えてください。

矢野 去年のウインターカップで負けた時に「来年、絶対にここに戻ってリベンジしよう」と誓いました。もう1回もらえたチャンスは自分にとって最後のチャンスだから、悔いのないように。引退した福岡県の3年生の分まで思い切りプレーして、ベスト8という目標を達成します。

樋口 ずっとベスト8を目標にやってきて、去年はそれができなくてすごい悔しい思いをしました。自分は1年生の頃からずっと1個上の先輩と自主練をやってきて、その先輩も今年で最後だし、国体で一緒になった3年生とかの思いを背負ってコートで良いプレーをしたいです。ウインターカップは絶対にベスト8になります。

三浦 去年の負けた悔しい思いのリベンジがまずあります。また、今回のウインターカップの予選で大濠と福岡第一の試合を見て、福岡県代表としての責任をすごく感じたので、そういう人たち全員の悔しさ全部を背負って、練習していること全部を出し切れるように頑張ります。