ジェイソン・テイタム&ジェイレン・ブラウンに依存しない強さ
セルティックスはシーズン開幕前に、補強の目玉であったダニーロ・ガリナリが大ケガをしてしまい、さらにヘッドコーチのイメイ・ユドカがチームの規律違反で出場停止処分になるなど、大きく揺れ動きました。しかし、そんな影響を微塵も感じさせず、屈強なメンタリティで22勝7敗とリーグトップの成績を誇っています。
一つひとつのプレーに高い集中力で臨み、個々のマッチアップで妥協なく戦う姿勢は、昨シーズンのNBAファイナルで悔しい思いをしたチームだからこそ発揮できる強みなのかもしれません。ジェイソン・テイタムとジェイレン・ブラウンを中心に、長きに渡って積み上げてきたチーム力は、多少の事件では揺れ動かないことを示しています。
その一方でオールディフェンシブチームにも選ばれたロバート・ウィリアムズ三世が開幕から離脱していることで、多少のスタイルチェンジも見せています。昨シーズンはリーグ最高のディフェンス力が最大の武器でしたが、ビッグマン不足によってペイント内失点やセカンドチャンスでの失点が増え、守り切るのが難しくなっています。
それでもリーグトップの勝率なのは、ディフェンス力の低下を補って余りあるリーグ最強のオフェンスがあるからです。それもインサイドにビッグマンを置かないシステムのため、リーグで2番目に少ないペイントタッチ数にもかかわらず、チームとして成功率が40%近い3ポイントシュートを武器に、驚異的なオフェンスを構築しています。
テイタムやブラウンの個人技が目立ちますが、むしろ今シーズンはワイドオープンを作るパスワークが進化しました。それもパスの本数が12本減りながら、アシストは2本以上増えているように、一つひとつのパスが効率的にシュートに結び付くようになったのです。リーグで5番目に少ないターンオーバーも合わせ、正確な判断力がセルティックスのオフェンスを支えています。
特に目立つのはビッグマンがいないことで、大きくスペースができたゴール下へのカットプレーが増えたことで、パスワークで崩すというよりは、スペースへオフボールで飛び込み、そこに1本の正確なパスでフィニッシュに結び付けていることです。それもカットするのが従来はハンドラー側だったテイタムとブラウンであり、時には両エースの動きを囮にして、ディフェンスが引っ張られたところで他の選手の3ポイントシュートに繋げることもあります。
実際、セルティックスの高確率オフェンスを支えているのは、ワイドオープンで3ポイントシュートを確実に決めていくロールプレイヤーです。その中でもシューターのサム・ハウザーは、空いたスペースに動いていくポジショニングの良さと成功率43%の3ポイントシュートで、新たなオプションとなりました。個々の強さを重視した昨シーズンの戦い方では出番が与えられなかったタイプですが、スペーシングとオフボールによるチームでの崩しが重視される中で台頭してきました。
圧倒的な強さを誇るセルティックスですが、直近のロード6連戦ではアル・ホーフォードの不在もあって苦戦を強いられ、ウォリアーズとクリッパーズには大差で破れました。その理由の一つに、両チームがスモールラインナップでスペーシングとオフボールを封じ込めるディフェンス力を持っていることが挙げられます。ビッグマンを使うチームが多い東カンファレンスとの違いが明確に出てしまい、同じタイプのチームへの戦い方に課題を残しています。
オフェンスのチームへと変化した今シーズンのセルティックスですが、リムプロテクトの要であるウィリアムズ三世が戻って来れば、試合展開によってディフェンスにシフトした戦い方も可能になります。首位を走りながらも進化の余地を残しており、シーズン後半にどのようなチームになっていくのか楽しみです。