ベッキー・ハモン

写真=Getty Images

指導者としての適性を評価するも慎重「そういう世界」

2014年からスパーズのアシスタントコーチを務めている元WNBA選手のベッキー・ハモンが、NBA史上初の女性ヘッドコーチとなる最有力候補と言われるようになって数年が経つ。

グレッグ・ポポビッチの下で経験を積むハモンは、ホーネッツのヘッドコーチに就任したジェームズ・ボーレゴのポジションに昇格。選手からの信頼も厚く、オフにはバックスの新ヘッドコーチ候補の最終選考にも残った。

女性ヘッドコーチが誕生する機運は年々高まっているが、実現には至っていない。その理由について、ポポビッチはこう語る。「それがいつになるかは分からない。これは彼女ではなく、周り次第だ。彼女の才能は生まれながらに備わっているもの。試合を感じられる指導者で、正しい姿勢で仕事に取り組んでいる。ウチの選手たちも彼女をリスペクトしている。もうチームの選手ではないが、マヌ(ジノビリ)、ティム(ダンカン)、トニー(パーカー)も彼女を尊敬している」

選手時代に両ひざの前十字靭帯を断裂しながら、オールWNBAチーム選出4回、そしてWNBA史上最も偉大な20人の一人に選出されたハモンは、2017年1月に左足アキレス腱を断裂する重傷を負ったルディ・ゲイの復活を支えたことでも知られる。

ゲイはハモンを「彼女は本物」と称える。「ベッキーはタフだ。それにバスケットボールを理解している。選手として成功を収めただけではなくて、彼女は指導をする上で性別が関係ないことを証明している」

試合中にチームを指揮し、プレーをセットし、ミスを正し、ハドルで選手たちを鼓舞する彼女にヘッドコーチが務まらないとは思えない。遅かれ早かれ、ハモンをヘッドコーチに起用するチームは現れるだろう。しかし、彼女の能力を認めているポポビッチも、簡単なことではないと言う。

「勇気があり、昔ながらの慣習にとらわれない人物がいるかどうか。簡単ではない。そういう世界に我々は生きているのだから」

NBAは、社会情勢を見つつ、必要ならばルールや規則を柔軟に変えるプロスポーツ団体の一つだ。近年ではグローバル化も進み、マイノリティ、多様性を受け入れない考えには同調しない傾向が強い。その一方で、あのポポビッチが「簡単ではない」と言葉を濁したように、女性にヘッドコーチという重職を託すことにはやはり勇気も必要なのだろう。

ハモンはこの件について何もコメントしていないが、チャンスが来るのを待っているに違いない。あとは、重たい扉を最初に開けるのがどのチームになるかだけだ。