「優勝を狙いに行けると思えるようなチームはなかった」
ウィザーズのブラッドリー・ビールが『No Chill with Gilbert Arenas』に出演した。興味深いのは今年の夏にウィザーズと結んだ契約延長について、彼が率直な思いを語ったことだ。契約最終年を破棄した上で5年2億5100万ドル(約340億円)のマックス契約に合意。10年をウィザーズ一筋で過ごした彼は、優勝できる環境を求めて移籍するのではないかと見られていたが、ウィザーズ残留を選んだ。
その背景について彼は、「フリーエージェントの立場で良いチームがなかった。優勝を狙いに行けると思えるようなチームはなかったんだ。選択できるものの中で最善だったのがウィザーズだった」と語る。こうして彼は、ウィザーズを成長させながら勝つ道を選んだ。
「KP(クリスタプス・ポルジンギス)とシーズンを通してプレーしていなかった。彼は僕が一緒にプレーした中で最高のビッグマンだ。カイル・クーズマはまだ成長できる。僕らが理想とする選手になれるだろう。それに、ウィザーズで育っているヤングコアが僕は好きだ。(八村)塁は本当に優秀で、素晴らしい夏を過ごした。デニ(アブディヤ)もこれからもっと成長できる。コーリー(キスパート)も優れたシューターで、プロ中のプロだ。良い戦いをするために十分な駒が揃っている」
もちろん、29歳のビールもまだまだ自分を高めていく気持ちを失ってはいない。2019-20シーズンに30.5得点、2020-21シーズンに31.3得点でいずれもリーグ2位の得点を記録した後、昨シーズンは23.2得点、今シーズンは24.1得点と数字を落としているが、これについて「この2年間で自分のプレースタイルを変えてきた」と説明する。
「僕は根っからのスコアラーで、自分の役割はスコアボードを動かすことだと考えてプレーしてきた。でも今は、どうやって試合に影響を及ぼすかを考えるようになった。僕にとっては大きな変化だ。一言で言えば、チームメートをいかに信頼するかを学んだということ。『君たちを信頼しているぞ、でもシュートは俺が打つ』というじゃなくてね(笑)」
自分の得点だけでチームを引っ張るのでは限界があると悟った上で、彼はチームリーダーとして若い選手たちを引き上げて、自分の望む競争力をウィザーズにもたらそうとしている。もともとロッカールームの盛り上げ役。若い頃にジョン・ウォールとプレーし、ウォールの持つ強烈なリーダーシップを補完するために明るくチームを盛り上げる形でリーダーシップを発揮してきた。ロッカールームの映像を見れば、NBA屈指のスター選手であるビールが『若手の一人』のように振る舞い、雰囲気を良くしているのが分かる。このスタイルをコート上にも持ち込み、若手をイキイキとプレーさせて成長を引き出すのが今のビールの考えだ。
「今のウィザーズは2017年のチームに似ていると思う。ウイングの層が厚く、サイズは小さいけど優れたガードが揃っていて、これまでのチームの中でもベストだ。もちろん、ジョンがいないという違いはあるけどね」と、ビールは今のチームに大きな期待を抱いている。