四日市メリノール学院の高校男子バスケ部は、創部2年目にしてインターハイとウインターカップ出場を果たした。エースの塚松奎太とチームリーダーの岩瀬宙は、もともと2020年の三重全中を目指してメリノール中に入り、そのままメリノール高へと進んでバスケを続けている。ひたむきにバスケに取り組むメリノールでの5年目、彼らに『下級生チーム』という意識はない。自分たちの成長に手応えを感じつつ、チャレンジャーとして全国の強豪校に挑む。
「もう一回全国に出て見返したい、という思いがあります」
──まずは2人の自己紹介からお願いします。
岩瀬 メリノール高校2年の岩瀬宙です。小学校から今までずっと四日市に住んでいます。両親がバスケのコーチをしている影響で小さい頃から試合会場に行っていて、小学校3年から本格的にバスケを始めました。自分たちの代が三重全中だったので、それを目標に本気でバスケをしたいと思い、メリノール中に行きました。結局コロナで中3の全中はなくなったんですけど、同じメンバーでバスケを続けたくてそのまま高校に進みました。
塚松 メリノール高校2年の塚松奎太です。小学校3年までサッカーをやっていたんですけど、4年生の時点で身長が大きかったのでバスケを始めました。6年生でミニバスの全国大会に出て、メリノール中に進みました。僕も宙と同じで、小6の時から一生懸命にバスケに向き合える環境でやりたくて、全中を目指すためにメリノールを選びました。そのまま高校もメリノールに進学して、僕らは1期生なので年上を倒すつもりでやっています。
──それぞれ、お互いがどんなキャラクターなのかを教えてください。
塚松 宙は勉強している時は真面目で、休み時間になると調子に乗ります。たまに先生に注意されるとブツブツ文句を言うところは直してほしいですけど、バスケではディフェンスで粘ったり、点の欲しいところで決めてくれたり、頼りになるチームメートです。
岩瀬 奎太は見た目が怖いんですけど中身は優しくて、オフの日にお母さんがいないと料理を作ったりする家族思いなところがあります。学校の休み時間もずっとバスケの動画を見ていたりして、バスケへの意識はすごく高いです。やっぱりチームのエースなので、勝負どころでの決定力があって、奎太がいるのといないのとでは全然違うという安心感があります。
──創部2年目の2年生チームでインターハイにもウインターカップにも出場します。中学から一緒にやってきた強みはあると思いますが、チームの成長を一番感じたのはどんな時でしたか?
岩瀬 去年のインターハイ予選決勝では四日市工業に50点差で負けました。年度末の新人戦でも30点差ぐらい、正直「これぐらい練習したんだから勝てる」と思っていたのにボコボコにされて、そこから4月と5月は体育館に閉じこもってずっとディフェンスを鍛えました。その結果、今年のインターハイ予選で僅差で勝つことができて、その時は今までバスケをやってきて一番うれしかったですね。
塚松 僕は「2年生だから負けても仕方ない」と言われるのが嫌で、今年のインターハイでも1点差で負けてそう言われたんですけど、「もう一回全国に出て見返したい」という思いがあります。インターハイが終わってからずっとその気持ちを持ちながら練習してきました。今回のウインターカップではしっかり勝って、「2年生だから仕方ない」と言われないようにしたいです。
「ずっと先輩がいなくて、年齢は意識せずにやっています」
──「2年生だから負けても仕方ない」という声を受け入れずに反骨心を持てるところが良いですね。その気持ちはどうやって出来上がったんでしょうか?
岩瀬 僕たちは中1の時点で1期生なのでずっと先輩がいなくて、年齢は意識せずにやっています。高校になると最初は年上の選手にフィジカルでやられることが多かったんですけど、「2年生だから負けても仕方ない」と言われるより「2年生しかいないのに勝つなんてすごい」と言われる方がカッコ良いと思って(笑)。下級生チームとして大会に臨むのは今回が最後なので、そこへの思いはチームとしても強いです。
──今夏のインターハイでは市立船橋を相手に激戦を繰り広げて1点差負けでした。それでも全国でも戦えるという自信にはなったのでは?
塚松 たった1点差ですけど、その1点はすごく大きな差だと感じたし、手応えはあったんですけど自分たちに足りないところはすごくあったという思いです。インターハイの後でみんなで話し合って、やっぱり課題はシュート力とディフェンスだという結果になり、そこから個人練習を増やしました。
岩瀬 試合の前は正直「普通にやっても絶対負ける」と思っていて、途中で点差が離れた時には「勝ち目がない」と感じたんですけど、最後まで競ることができました。それは自信になった部分もありますが、悔しい気持ちも大きくて。自分もフリースローを外したりしたので、「あの1点をどう埋めて、次に勝つか」とすごく考えました。
──メリノールでは中学と高校、男子と女子の垣根を越えて練習していると聞きます。中学男子の山﨑修コーチ、中高の女子の稲垣愛コーチ、そして池田大輝ヘッドコーチの指導あってこその成長だと思いますか?
塚松 中学の頃に技術面は山﨑コーチ、精神面は愛コーチに鍛えてもらいました。大輝コーチは年齢が近いので話しやすいですし、バスケの面で指摘されることすべてが的を得ていて納得できます。
岩瀬 大輝先生は学校にいる時は先輩後輩みたいな感じですけど、体育館に入るとオンに切り替わって緊張感のある練習ができます。練習が終わると1対1をしてくれたりシューティングを見てくれたり、朝の外練で一緒に走ってくれたり。すごく自分たちと向き合ってくれていると感じます。
「ウインターカップで自分の実力をアピールしたい」
──インターハイに東海ブロックリーグと、コロナ禍で活動が制限された今までからすると今年は過密スケジュールになっていますが、大会や試合をこなす中で自分自身の成長は感じられていますか?
岩瀬 ウチは三重県の中だとちゃんとウエイトトレーニングをしている方でフィジカルも強いんですけど、全国じゃなく東海に行っただけでもフィジカルのレベルが違いました。でも最初は面食らっても試合をこなすうちに強いチームのフィジカルにも対応できてきたし、何より「僕たちよりもっと頑張っててすごい人もいる」と思うことができて、もっと上を目指して努力するきっかけになりました。
塚松 僕はパワープレーが得意なのですが、東海ブロックリーグでは留学生相手に通用しなかったりして、今までは力任せのプレーが多かったんですけど、もっと頭を使ってどう攻めるか考えだすようになりました。自分がこのチームのエースなので、相手が留学生でも逃げるわけにはいかないです。自分より上のレベルの選手がいる中で、どう攻めたらシュートに持っていけるか、どうミスマッチを作って攻めるかを考えられるようになったのが、この1年で強豪校と試合をして成長できた部分だと思います。
──2度目の全国大会出場、初めてのウインターカップになりますが、対戦してみたい相手はいますか?
岩瀬 福岡大学附属大濠です。僕にとってはあこがれのチームだし、今も目標にしているので、全国の舞台で戦ってみたいです。この前に遠征で一緒になったんですけど、夕食の時にすごく明るくて一発芸とかやっていて、でもバスケの時はすごく礼儀正しくて。次の日も朝早くからシューティングしているし、チームの雰囲気や意識の高さを真似たいです。でも、今まではあこがれの存在でしたが、全国大会に行くようになればライバルなので、いざ対戦するとなったら十分に力を発揮して倒しにいきたいです。
塚松 大濠はもちろん、福岡第一や開志国際といった全国の強豪校と当たりたいです。僕の夢はプロ選手になることなんですけど、ウインターカップで自分の実力をアピールしたい思いがあって、そのためには強豪校相手にどこまでやれるかを見せたいです。
──それでは最後に、ウインターカップへの抱負をお願いします。
岩瀬 セットプレーやミスマッチを使った大輝先生の頭を使うスタイルと、サイズが小さい分だけ粘り強く守って全員でリバウンドを狙う組織力、ファミリー感を出していくので、応援してほしいです。
塚松 プレーの面では足を動かして相手のターンオーバーを誘う泥臭い守備を見てほしいです。あとは保護者の方々も含めた自分たちの一体感、ベンチの盛り上がりにも注目してほしいです。自分のプレーとしては、やっぱり力強くアタックして得点を狙いにいくところを見てください。