阿部諒

指揮官ヘナレ「難しい話題を語りあえる団結力と忍耐強さが試合にも反映された」

島根スサノオマジックは11月27日、敵地で琉球ゴールデンキングスと激突。ビッグマンの駒不足という逆境をチームが一体となった激しいディフェンスで乗り越え80-68で勝利した。島根はこの勝利で対琉球戦の連敗を6で止め、B1通算100勝目を挙げている。

第1クォーター、島根はエースのペリン・ビュフォードがいきなり12得点と大暴れで牽引すると、ニック・ケイや津山尚大がタフショットを沈めて得点を重ねる。守っては故障離脱中のリード・トラビスに加え、前日の退場処分による出場停止でニカ・ウィリアムスが欠場とビッグマンの2人を欠く中、インサイドにボールが入ると積極的にトラップを仕掛けるなど人数をかけて抑えにかかる。そこから外にさばかれても素早いローテーションで対応する粘り強さで琉球にタフショットを打たせ、23-15と先手を取る。

しかし、第2クォーターになると、琉球の強度の高いディフェンスに苦しんで得点が伸びず追いつかれる。そこからは一進一退の攻防が続き第4クォーターに突入するが、島根はここまで不発だった3ポイントシュートがこのクォーターで6本中5本成功と爆発。そして連携の取れたチームディフェンスを継続することで怒涛の14連続得点を挙げ、残り約4分で70-57と一気に突き放す。

その後、琉球に意地を見せられ残り1分15秒には6点差にまで迫られたが、次のポゼッションで阿部諒がオフェンスリバンドを取ると、ファウルを受けながらそのままシュートを沈める値千金のバスケット・カウントに成功。これが決め手となって島根は前日に敗れたリベンジを果たした。

島根の指揮官ポール・ヘナレは、次のように選手たちを称える。「選手たちをとても誇りに思います。本当にタフさを見せてくれました。今朝のミーティングでは選手たちにとって不快に感じるような厳しい内容を伝え、映像を共有しました。そういった難しい話題を語り合える団結力と忍耐強さが試合にも反映されたと思います。琉球に6連敗中でしたが、チームとして前進するには、この相手を打破しないといけない。それができたことで自信がつきました」

阿部諒

第4クォーターだけで8得点をマーク、同地区ライバルを撃破する立役者に

この試合、島根は第4クォーターで29-14と圧倒したが、このビッグクォーターを作り出す大きな原動力となったのが阿部だった。「ヘッドコーチにはいつもディフェンスでインパクトのあることをやって欲しいと言われています」と語る得意の激しい守備に加え、このクォーターだけで8得点とオフェンスでも大きな仕事を果たした。

第3クォーター終了時点で阿部の出場時間は5分だったが、第4クォーターは8分間コートに立った。ヘナレは、勝負どころで阿部を起用した理由をこう語る。「阿部は非常に勘が良くセンスがあって、高いバスケットボールIQの持ち主です。システムをよく理解していますし、複数のポジションをプレーできるのでどんな局面でも試合に出せます。例えばインバウンドパスの場面だと、彼は他の選手がどこに行くべきかを理解していますし、プレッシャーがある中でもパスをさばくことができる。必要としていることを遂行できると自信を持っているので起用しました」

指揮官の信頼に応えた阿部は、痛恨の逆転負けを喫した前日との違いを語る。「チームとしてやるべきことを昨日は40分を通してできなかったですが、今日は全員が仕事を全うできました。昨日、残り3分で10点リードしていた中で、そこから追いつかれました。昨日と同じ結果にならないように、アグレッシブに自分の仕事をできた中でチャンスをものにできたことはうれしいです」

そして、昨シーズンのチャンピオンシップ・セミファイナル第2戦にブザービーターで敗北するなど何度も苦汁をなめた相手からの勝利をこう振り返る。「昨シーズンから琉球に6連敗していて、しかもチャンピオンシップではああいう負け方をしています。相手のホームコートで勝ちたい気持ちがあるので、一つ勝ったのは良かったです。ただ、まだ自分たちのホームで2試合ありますし、チャンピオンシップに出場したら必ず当たる相手だと思っています」

今シーズンの島根は、昨シーズンとほぼ主力が変わっていない。それによるチームの熟成は大きな強みだが、阿部は「昨シーズンできたことができていない部分が多々あります。本来なら昨シーズンから積み重ねていかなければいけないですが、そこはまだまだです。ただ、シーズンは長いので一つひとつチームとして向上させていければいいと思います」と、現状について厳しい見方をしている。しかし、そういった状態かつビッグマンの駒不足に陥った中でも難敵の琉球に勝ち切ったのは、チームの地力が上がっていることの証明だ。 他の上位チームと比較すると島根は安藤、ビュフォード、ケイ、津山などコアメンバーにプレータイムが偏っているが、他の選手たちの献身的なプレーがあってこそ中心選手たちは力を発揮できる。チームとしての厚みが着実に増していることを示す今回の勝利であり、阿部の活躍だった。