若手の台頭に青木ヘッドコーチ「クラブとしてのスタイルができつつあります」
横浜ビー・コルセアーズはBリーグ初年度からB1の舞台で戦い続けているが、一方でずっとリーグ下位に沈みチャンピオンシップ戦線に絡むことはなかった。だが、今シーズンこそは今までと違うのではないか、そんな期待を抱かせる戦いぶりを見せている。11月20日に行われたアルバルク東京戦でも前日の敗戦からのリベンジで83-77と競り勝ち、これまでの横浜BCにない修正力、粘り強さを見せている。
現在、横浜BCは4勝7敗と黒星先行でこの成績だけを見ると例年通りかもしれない。しかし、この11試合のうち8試合はA東京、島根スサノオマジック、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、広島ドラゴンフライズと勝率5割以上の相手で、リーグ屈指の厳しいスケジュールとなっていることを考慮すべきだ。
かつてない可能性を見せるチームの勢いの原動力となっているのは、言うまでもなく河村勇輝だ。過去2年間はシーズン途中からの加入だったが、東海大を中退してプロ転向を果たした今シーズンは開幕からプレーし、ここまで11試合で平均16.0得点、10.6アシスト、2.4スティールとMVP級の大活躍を披露している。また、河村以外にも地元、神奈川県出身のキング開に須藤昂矢、新戦力の赤穂雷太など若手の成長が目立っているのも見逃せないポイントだ。
この若い力の台頭について青木勇人ヘッドコーチは「クラブとしてのスタイルができつつあります」と手応えを感じている。選手補強に費やせる資金力の面で横浜BCとリーグトップ級のクラブでは、差があるのが現状だ。だからこそ指揮官は、若手を育てて勝てるチームになっていくことの大切さを強調する。
「今のBリーグには出場機会に恵まれない若い選手がたくさんいます。横浜BCは育成型のチームと謳っていますし、いろいろな選手にチャンスを与えて、彼らの良さを生かしながらチームとして戦っていく。若い選手が来て活躍して巣立って行かれるばかりだと困りますが(笑)、横浜に来ればチャンスを得られて自分のプレーを表現できる。その上で、チームとして戦えることを発信できれば、それがクラブのカルチャーとなり財産となります。それによってより注目度も上がり、多くの選手が振り向いてくれる。今はクラブの方向性が見えつつあると思います」
「チャンピオンシップを目指す以上はA東京も勝たないといけない相手です」
高校時代から傑出していた河村は別格としても、チャンスを与えることで確実に成長を見せている代表的な選手はキングだ。大学界屈指の強豪、専修大のエースとして活躍したキングは、大学4年生のシーズン終了後の昨年12月末にチーム史上初となるユース出身でプロ契約を結んだ選手となった。20日のA東京戦では自身初となる先発起用に応えると、ここ一番で3ポイントシュートを沈める勝負強さを見せ、14得点4リバウンドの活躍で勝利に大きく貢献した。
20日の試合後、キングは次のように自身のプレーを振り返った。「オフェンスに関しては『アグレッシブに行け』とチームメート、コーチからも言われています。(勝負どころで決めたシュートは)いつも練習しているので自信を持って打てています。もっと欲を言えば、3ポイントシュートに加えドライブなど多くのスキルを使うことで、より厄介な選手になりたいです」
横浜BCがホームで難敵相手に第1戦の敗戦からカムバックして勝利するのは、10月16日の名古屋D戦に続いて2度目となる。どんな強敵を相手にしても、自分たちのやるべきことをやれば勝てるという自信を持てているとキングは言う。「チャンピオンシップを目指す以上はA東京も勝たないといけない相手ですし、勝てる実力を自分たちが持っていることも全員が分かっています。昨日の敗戦後も本当にチームの中で誰も下を向いていなかったです。みんな上を向いて明日は勝てるという自信があって、それをコートに出せました。これからは同一カード2連勝をできるようにやっていきたいです」
昨シーズンのキングは35試合に出場して平均プレータイム15.2分で4.8得点だったが、今シーズンはここまで平均18.0分出場で6.8得点をマーク。さらにここ6試合のうち5試合で20分以上プレーし、3試合で2桁得点と調子は右肩上がりだ。チャンスを与え続けた成果は徐々に出ており、キングもその効果を語る。「大学とBリーグではフィジカルやスピードが全然違ったので、昨シーズンは少ならからず慣れるのに時間がかかったと思います。今シーズンは初めからチームに合流できてケミストリーも高まっているので、そこは2年目の良い部分が出ていると思います」
また、先発起用によって、抜群のスピードを誇る河村と一緒にコートに立つ時間が増えることは、自身にとってプラスだとキングは言う。「自分も足の速さには自信があります。自分より大きい選手はたくさんいても、スピードのある選手はあまりいないと思っているので、そこでアドバンテージを取る。勇輝とは相性の良さもありますし、ブレイクで点を取ってチームが勢いを増せるようにしてきたいです」
そして、指揮官が言及した育成型のチームとしての存在を確立するために、ユース出身のキングが中心選手として活躍することは大きな意味を持ち、そこは本人も強く自覚している。「自分はビーコルのユースからトップチームに上がった第一号の選手です。当時は自分も将来、トップチームで戦いたいと思っていました。自分がプレーしている姿をこうやって地元で見せることで、ユースからでも努力してプロ選手になれることをこの先もユースの子たちに伝えていきたいです」
ここから横浜BCが勝ち星を増やし、チャンピオンシップ戦線に絡むなどリーグに旋風を巻き起こすことができるのか。そのためには河村の相棒としてコートを縦横無尽に駆け回るキングのさらなるステップアップも求められる。