山田愛

山田愛はキャプテンを務めた3年時に桜花学園で『高校3冠』を達成し、Wリーグの名門であるJX-ENEOSサンフラワーズ(現ENEOSサンフラワーズ)でも日本一を経験した。エリート街道を突き進んできた山田だが、以前から抱いていた海外挑戦を実現すべく、2019年にENEOSを離れ、オーストラリアリーグのオルベリー・ウォドンガ・バンディッツと契約を結んだ。新型コロナウイルスの影響で契約は白紙となったが、昨シーズンに再契約を結びオーストラリアリーグデビューを飾った。チームは優勝し、個人でもトップ5に選出される最高のシーズンを送ったが、この度スイスリーグのNyon(ニヨン)への入団を発表した。歩みを止めない山田にその思いを聞いた。

「結果を残すことが大事だと思っていたので、とても良いシーズンでした」

──素晴らしい結果を残したオーストラリアリーグでのシーズンを振り返ってもらえますか。

まず、オーストラリアリーグはサウス、イースト、ノース、セントラル、ウエストの5つに分かれています。私がいたイーストは4番目か5番目くらいのレベルですが、各チームにオーストラリア代表に入るような選手が何人かいる感じでした。

チームメートにローレン・ジャクソンというオーストラリアのレジェンド(WNBA、オリンピックでMVP。出産を経て8年ぶりに復帰)がいるんですが、私はポイントガードなのでセンターのジャクソンと一緒にやらせてもらったことがすごく光栄でしたし、学びも多かったです。チームとして士気が高く、2対2のピック&ロールだったりチームプレーが上手くハマって、優勝という成績を残すことができました。個人的にも結果を残すことが大事だと思っていたので、ポイントガードとしてトップ5を取ることができたのでとても良いシーズンでした。

──通用した部分やまだまだだと感じた部分、日本のリーグとの違いなどがあれば教えてください。

リバウンドを取った人の前で素早くボールをもらってボールプッシュをするとか、得点を決められた後すぐにオフェンスへ切り替える、トランジションの早さは通用しました。足りないと思ったのは、シュート精度ですね。大きい選手がいるので何か工夫しないとダメで、得点とアシストのバランスの部分は課題かなと思います。

オーストラリアリーグでプレーしてみて、日本のバスケットIQの高さはすごく感じました。スペーシングや合わせの部分で「ここにパスが来たらここにパスを返すのは当たり前でしょ」みたいなところが来なかったり。そういった部分で日本のバスケットのIQの高さはすごいなと思ったし、スピードの部分でも日本は速いと思います。

山田愛

「リーダーになってほしいと言われました」

──オーストラリアリーグで結果を残し、連覇を目指すと思いきやスイスリーグに挑戦ということで驚きましたが、その経緯やリーグについて教えてください。

オーストラリアで1シーズンプレーしたことで、言語の違いも含めて、バスケット感の違いなどいろいろな発見があったんです。ヨーロッパでプレーをしたらまた様々な発見があるのかなと思い、バスケット選手として成長したいと思ったのでヨーロッパに挑戦しようと。

経緯としては、岡田卓也さん(静岡ジムラッツ所属)からオーストラリアのシーズンが始まってすぐの4月ぐらいに「オランダのコーチが興味を持ってくれているよ」という連絡をもらったのがスタートです。その時はシーズンが終わった後にオーストラリアでもプレーしたかったので保留にしていました。でもヘッドコーチの方が最後まで欲しいと言ってくださったので、そこからいろいろなミーティングを重ねて結局契約まで至りました。

カントリーリーグなのでユーロリーグみたいに大きくはないですが、クリスマスに一度休みに入り、5月まである長いリーグなのでタフだなとは思っています。レベルに関してはすごく高いわけではないと思いますが、ヨーロッパのプレースタイルは経験したことがなく、分からないことが多いのでそこはチャレンジです。

──熱烈なオファーを受けたようですが、どういったプレーを求められているのですか?

求められていることはボールプッシュですね。あとは若いチームで、ローレン・ジャクソンみたいな大きいセンターがいないので、リーダーになってほしいと言われました。コーチが日本に来た時に、トム・ホーバスさん(元JX-ENEOSコーチ、現男子日本代表ヘッドコーチ)に会って、日本のメンタリティなどの話をしたようです。練習量や練習へのコミットメントなど日本の文化が気に入ったみたいで、それでずっと私に興味を持ってオファーしてくれたというのもあったんです。だから「選手たちに良い影響をもたらしてほしい。コートの中ではポイントガードとしてリーダーになってほしい。そのリーダーになる覚悟はあるか?」という感じで聞かれて、「ベストを尽くします!」って答えました。

──言葉の壁もあり見知らぬ土地でリーダーを担うとなると、不安になるのが普通かと思います。それでも挑戦できる喜びが先に来るのはなぜでしょう?

不安はないですね(笑)。ヨーロッパはバイリンガルやトリリンガルの人が多いですし、コーチもオランダ人なのでオランダ語がメインですが第2言語の英語で教えています。スイスはフランス語ですけど、英語を使う人もたくさんいるので、そこは大丈夫です。やっぱりオーストラリアでの生活がすごく大きいですね。言語どうこうよりも言いたいことをしっかり言う、もし合っていなかったとしても自分の考えをしっかり言うことの大事さを学びました。

ワクワクし続けられるのは好きだからです。好きじゃなかったらやめています。コロナでバスケができない期間に「私は何を求めているんだろう」と考え、「ハッピーでいる」しかないなと思いました。バスケができないから、次に自分が喜ぶことをやろうと思ったときに、留学でもワーホリ(ワーキングホリデー)でも何でもいいからまた海外に行きたいと思ったんです。やっぱり好きは強いなって!