東藤なな子

「バスケは経験のスポーツ。経験を重ねていくごとに出る余裕がある」

トヨタ紡織サンシャインラビッツは11月5日、6日に東京羽田ヴィッキーズと対戦した。第1戦は80-56で勝利したが、第2戦は第1クォーターを16-5と圧倒したものの、その後失速し58-59での逆転負けを喫して、約1カ月間のリーグ中断期間を迎えた。

16-5とした第1クォーターは東京羽田から8本ものターンオーバーを誘発するハードな守備からの走るバスケットで主導権を握った。ハーフコートでもインサイドの河村美幸にボールを預けたり、ペイントアタックからのキックアウトなどチームでボールをシェアして得点を重ねた。しかし、第2クォーターはボールムーブが停滞し、ディフェンスでも本橋菜子を中心とした東京羽田にペイントアタックからズレを作られてしまい10-24とされ、26-29と逆転を許して前半を終えた。後半はトヨタ紡織が1、2ポゼッションを追いかける時間帯が続き、我慢の末に最終クォーターでリードを取り戻したが、残り3秒で東京羽田に逆転3ポイントシュートを決められ競り負けた。

敗れた第2戦で10得点5リバウンド2アシストを記録した東藤なな子はこのように振り返った。「最終的な点数を見てもロースコアでしたし、オフェンスが停滞していた時間が長くて、その時は共通理解がなくて、ボールが止まってしまってピックばっかりになっていました。ペイントアタックができない時間帯が多かったので、そこを早く修正していけたらもっと良い展開でバスケができたと思います」

今シーズンのトヨタ紡織は開幕から5戦全勝を記録していたが、東京羽田との第2戦でシーズン初黒星を喫した。苦境に立たされた時に、あらためて見えてくるものはある。東藤はこの敗戦での気づきとチームの修正ポイントを語った。

「オフェンスでは『こういうシチュエーションの時はここからプレーを作ろう』という共通認識を持つことが課題です。5人がバラバラにならないようにガードが指示するのか、ボールを持っている人が指示するのか。そして、得点を取れなかった時に相手に良いシュートを打たせないように、自分たちのチームディフェンスを崩さないというのが一番大事になってくると思います。あとはディフェンスとリバウンドで我慢して、オフェンスに繋げられるようにすることも成長しないといけないポイントです」

東藤なな子

「得点源としてプレーの幅を広げたい」

東藤はアーリーエントリー時代を除くと今シーズンがWリーグ4シーズン目だ。ルーキーシーズンから出場した全試合で先発を務めて新人王を受賞するなど、エースとしてトヨタ紡織を牽引している。日本代表でも東京五輪は最年少での選出となったが、今では中心メンバーの一人として代表で活躍している。

東京羽田戦でもビハインドを背負って迎えた後半の出だしで、積極的なアタックやハードな守備でチームを鼓舞する姿が目立った。東藤は知花武彦ヘッドコーチから「コートで引っ張る存在になっていかないといけない、と言われています」と自身へ課された課題を明かす。その上で今シーズンからチームメートになった河村美幸の存在が大きいと東藤は言う。「河村さんは経験がある選手ですし、すごく余裕があります。私もそういうところを盗みながら得点源としてプレーの幅を広げたいです。それに、ディフェンスが寄ってきたらすぐにパスを出してくれるし、コートの中でもすごく声を出してくれます。ベテランの人からの声はすごく落ち着くので、本当にメンタル的にもプレーでも大きい存在です」

東藤はまだ21歳と若いがWリーグ、日本代表と活躍の場を広げて多くの経験を重ねてきた。それだけに今後は今まで積んできた経験をチームに還元しつつ、さらに自身もステップアップしてきたいと意気込んだ。「バスケは経験のスポーツとも言うので、経験を重ねていくごとに出る余裕があると思います。代表では一生懸命やってきたものをもう少し頭を使いながらやることを学んだし、チームでもスタートで出させてもらう中でいろいろと経験しました。代表で学んだことをチームでも生かして、もっと視野を広げてやっていきたいです」

Wリーグは12月10日にシーズンが再開する。東京羽田戦で見つかった課題をこの中断期間中に修正することを目指し、再開明けには三菱電機コアラーズ戦と対戦する。『余裕を持ったプレー』を意識する東藤のさらなる成長に引き続き注目だ。