好調の要因は「3ポイントシュートに頼りすぎなくなったこと」
マーベリックスのルカ・ドンチッチは、開幕から8試合を終えた時点でリーグトップの36.0得点を記録している。平均30得点超えの選手は7人いるが、2位のヤニス・アデトクンボでも32.6得点で、8試合すべてで30得点超えを記録するドンチッチの独走状態だ。
先のラプターズ戦では、高さとウイングスパンのある選手を5人並べるビッグラインナップを敷き、さらにボックスワンで徹底マークに来る相手ディフェンスを、多彩なスキルを駆使して打ち破った。緩急だけでシュートに持ち込む変則ステップ、パスカル・シアカムのブロックをかわすフックシュート、ダブルチームを一瞬で割るスピンムーブ、クロスオーバーからのフェイダウェイと、魔法のタネはいくらでもあった。
唯一の弱点はプレーが上手くいかないとフラストレーションを表に出してしまうことだが、ラプターズの狙いを次々に打ち破るドンチッチは何度も笑顔を見せ、主役を演じることを楽しんでいた。こうなると、もう手の打ちようがない。身体能力の高いスコッティ・バーンズ、リーグ最高のディフェンダーの一人であるOG・アヌノビー、そして高さとインテリジェンスを兼ね備えたシアカムには揃って、悪夢のような試合となった。
ラプターズ相手に35得点8リバウンド6アシストを記録し、チームに勝利をもたらしたドンチッチは試合後「ただただプレーを楽しんでいるよ」と、コート上よりは控え目な笑顔で語る。「何と表現すべきか分からないけど、タフショットをねじ込むのは楽しいよね」
「最初の数試合は3ポイントシュートに頼りすぎていたけど、その後は自分のペースで攻めることが好調の要因だと思う」と彼は言う。開幕戦は10本、続いて9本、13本と3ポイントシュートを放ったが、25%しか決められなかった。3試合目のペリカンズ戦で13本中2本に終わった後、ドンチッチは3ポイントシュートのアテンプトを半減させ、ペイントエリアでの勝負を増やしている。
3ポイントシュート成功率はいまだ26.2%と上がらないが、2点シュートは66.7%と驚異的な確率で決めている。しかも彼は、スイッチでディフェンスの弱い選手を狙うことをあまりしない。逆に相手のエース、守備のキーマンを標的にする。これは昨シーズン中にJJ・レディックの番組に出演したドンチッチ自身が明かしたことで、レブロン・ジェームズやヤニス・アデトクンボを相手に1on1を仕掛けることで相手をディフェンスで消耗させ、ヘルプディフェンダーとしての強みを出させないことが目的だと語っている。
感情の起伏が大きすぎる弱点も、今シーズンここまでは出ていない。これはヘッドコーチのジェイソン・キッドが開幕前に「彼はもう成熟して、このチームのリーダーになった。MVPの最有力候補になるには、単に良い選手であるだけでなく優れたリーダーでなければならないが、今の彼はそうなっている」と語った言葉通りで、試合で難しい状況に陥った時にも、その声は審判への文句ではなくチームメートへの鼓舞に使われている。
ドンチッチは野心家で、2019年に新人王を受賞した際にもシーズンMVPにノミネートされなかったことに不満気だった。その後の3シーズンはオールスターとオールNBAファーストチームに選ばれているが、彼が求めているのはNBA優勝とMVPだ。最高のスタートを切ったドンチッチは「今シーズンこそは」の決意で戦っている。