アウトサイドとインサイド、変幻自在のアタック
11月10日、琉球ゴールデンキングスはアウェーでの千葉ジェッツとの初戦を86-84で制したが、この試合で勝利の立役者となったのが岸本隆一だ。第2クォーター中盤に3ポイントシュートを3本連続で沈めて流れを引き寄せ、後半に入っても要所でシュートを決めて約25分の出場で16得点4アシスト3リバウンドをマークする活躍だった。
「ディフェンスを激しくできました。試合の出だしで、相手にセカンドチャンスポイントを取られてしまう形だったのを試合中に修正して、みんなでリバウンドを取り切ることができたのが勝ちに繋がりました」
こう岸本は勝因について語ると、自身のパフォーマンスを次のように分析する。「前半、3ポイントシュートが何本か入ったことで主導権を取れて、後半に相手のディフェンスがスイッチで対応してきた時も、ビッグマンを相手に冷静に対処できました。スイッチされたところで、相手が当たっていた3ポイントシュートを止めに来ることを予想してドライブに行く。予定通りに進んだのは良かったです」
実際、後半の岸本はピック&ロールから千葉のギャビン・エドワーズ、ジョシュ・ダンカンと1対1になった際には、自分より約30cmは高いビッグマンを相手に外からシュートを打つと見せかけて、スピードでかわしてドライブしそのままレイアップで得点を記録。長距離砲だけでなく、ゴール下へのアタックでも攻撃に勢いを与えた。
「ここで強度を落としては自分の成長もない」
琉球は先週の土曜、日曜と王者アルバルク東京を相手にアウェーで連勝を遂げるも、水曜日にはリーグ下位に沈むライジングゼファーフクオカに痛恨の敗戦。そして岸本自身もA東京戦は2試合目の終盤に決勝3ポイントシュートを沈めるなど活躍したが、福岡戦は約10分の出場で無得点と精彩を欠いていた。
福岡戦でプレータイムが10分に終わったのはファウルトラブルが原因であり、それを考慮すれば次の試合では守備で慎重になってもおかしくない。だが、岸本にそういう気持ちはなかった。「ここで強度を落としては自分の成長もない。引き続き激しくいくことを意識しました。ファウルはむしろ4つまで使えるという考えで、あまりフラストレーションを溜めずにできました」
この積極的な姿勢は、「ディフェンスをフィジカルにやっている分、オフェンスにも生きていると思います」と攻撃にも好影響をもたらしている。そして、チームに勢いを与える持ち味のロング3ポイントシュートについて「確率を気にしないわけではない」とは言うものの、それ以上に「一発で流れを変えられる自信はあるので、決める場面を今年は特に大事にしています」と、ここ一番で決める存在になると強調する。
「強豪を相手にもっと力を証明していかなければ」
ベンチスタートが定着しつつある今、「控えで出ることが多いので藤井祐眞のように1番も2番もこなせ、試合の状況によって自分で守備をこじあけないといけないときにできるようになりたい」と、自身の目指す姿にリーグ随一のシックスマンを意識する。
琉球は先月末から来週にかけてA東京と4試合、川崎ブレイブサンダーズ、千葉と2試合と強豪との計8試合をこなすタフなスケジュールとなっている。この日の勝利で3試合を残して4勝1敗となり、少なくとも及第点の勝率5割は確定させた。だが、岸本は「千葉さんとは過去2シーズンの通算成績が1勝7敗で、明日勝ったとしてもまだまだ差は埋められない。強豪を相手にもっと自分たちの力を証明していかなければいけないです」と気をさらに引き締める。シーズン序盤とはいえ、この勝利への貪欲な姿勢を前面に押し出すことで、今日は2週連続となる強豪相手に敵地での価値ある連勝を狙っていく。