前田悟

5試合連続3ポイントシュート成功なしの負のスパイラルを断ち切る

川崎ブレイブサンダースは10月21日、22日とホームでシーホース三河を迎え撃ったが痛恨の同一カード連敗を喫してしまった。第1戦では序盤から先手を取られて67-83で敗れると、第2戦は立ち上がりの悪さを修正したが、ここ一番でボールムーブが停滞しオフェンスが単調になる悪癖が再発して75-77で競り負けた。

これで川崎はここ4試合で1勝3敗と失速している。中でも問題となっているのはオフェンスの爆発力不足で、シーズン開幕早々にマット・ジャニングが故障で離脱し、新戦力のマイケル・ヤングジュニアもチームにうまくフィットせずに出場時間が伸びていかないこともあり、藤井祐眞、ニック・ファジーカスの2大エースへの依存度が高すぎる状況だ。一つの例として、藤井が1桁得点に終わった試合は3戦全敗となっている。

そんな苦しい状況において22日の試合で明るい材料となったのが前田悟の復調だ。シューターとして定評のある前田だが、開幕3試合目からの5試合で計12本の3ポイントシュートを放つもすべて失敗とスランプに陥っていた。それがこの試合では第4クォーター序盤に久しぶりの長距離砲を決めると、残り約6分半にも2本目を沈めた。

「昨日のゲームよりは良いゲームができたと思いますが、最後にターンオーバーを喫したり、リバウンドなど相手のインサイドでやられてしまいました。開幕からケガ人も出てなかなか上手くいっていないですけど、顔を上げてこういう時こそチーム一丸となって戦って行かなければいけないと思います」

こう試合を振り返った前田は、3ポイントシュート3本中2本成功だった自身のプレーについて続ける。「今まではシュートタッチが悪いというより、良いリズムでシュートを打てていない感触でした。練習でもシュートタッチは良かったです。今日みたいに動いて、自分でチャンスメークではないですが積極的にプレーすることが大事だと思います」

1本目が決まった後、珍しく雄叫びをあげた点について聞くと、次の思いがあったと明かした。「5試合連続で決めていなくて、今までこういうことはなかったので本当にやっと入ってホッとした感じでした。なるべく気にしないように毎試合しっかりやろうと思っていましたが、さすがにこれだけ入っていないとメンタル的に来る部分もありました」

前田悟

ファジーカス出場停止処分で臨む試練「チーム一丸となって乗り越えていきたい」

今シーズンは前田にとって川崎での2年目となる。第2節の広島ドラゴンフライズ戦では相手のエースシューターである辻直人へのマークを志願しハードなディフェンスを続けるなど、「オフシーズンでしっかり身体を鍛えてきて、チームのコンセプトも分かってきたのでディフェンスに関して手応えはあります」と守備の成長には好感触を得ている。

だからこそ、持ち味である3ポイントシュートで本領発揮となれば特にシューターのジャニングが離脱中の今、川崎にとって2番ポジションの中心となれる。そして、調子が悪くてもシューターとしての矜持を持って、打ち続けていきたいと前田は強い覚悟を持っている。

「ニックの方が確率は高いですけど、プライドを持つことは本当に大事だと思います。ここで遠慮をして打たなくなったら自分は何者でもなくなるし、仕事がなくなってしまいます。そこはプライドを持って、自分が決めきる。『自分にボールをよこせ』くらいの気持ちでプレーするのが一番良いのかなと思います」

そのためにも自らアクションを起こしてシュートチャンスを作りだしていきたいと、前田は強調する。「今日の後半くらいアグレッシブにプレーしないといけない。どこか遠慮してずっとコーナーにいるだけだとリズムが作れないので、自分からスクリーンをかけたり、ボールをもらいに行く動きを増やしたいです」

前回の三河戦のラストプレーにおいて、ファジーカスがダバンテ・ガードナーに悪質な行為を行ったと川崎は判断し、今日の新潟アルビレックスBB戦、週末の天皇杯3次ラウンドにおける出場停止処分をチームで科した。大黒柱の不在は川崎にとって大きな痛手であり、こういう時こそ残ったメンバー全員のステップアップが不可欠だ。

「上手くいっていない時は、ここが悪いとかいろいろと出てくると思いますが、そういう時こそベクトルを自分に向けてチームのためにプレーしていくことが大事だと思います。ズルズル引きずるのはダメです。チーム一丸となってこの壁を乗り越えていきたいと思います」

川崎がこの苦境を克服するにはこのように意気込みを語る前田が3ポイントシュートを爆発させ、チームに勢いを与えていくことが待たれる。