八村塁

チームに連動性をもたらすベンチメンバーとのバランスが重要に

ウェス・アンセルドJr.がヘッドコーチに就任した昨シーズンは、開幕前にラッセル・ウェストブルックとのトレードでカイル・クーズマが加わり、シーズン途中にはクリスタプス・ポルジンギスを獲得するなど、チームのベースが大きく入れ替わりました。今オフはアンセルドJr. がアシスタントコーチを務めていたナゲッツからモンテ・モリスとウィル・バートンを獲得したことで、戦術面での改善も進みそうです。

ポイントガードとビッグマンのツーメンゲームを起点とするオフェンスにもかかわらず、ゲームメーカー不在が響いていたところに、アンセルフィッシュなプレーと堅実なシュート力を持ったモリスは、これ以上ない補強です。ガンガン切れ込んでチャンスを作るのではなく、一歩引いた形でパサー役に徹し、ディフェンスが隙を見せれば自ら内に行くタイプのため、エースであるブラッドリー・ビールの相棒としても適任でした。

よりアグレッシブに点を取りに行くバートンは、ポイントガードからスモールフォワードまでこなし、細身の割にリバウンドも強くオールラウンドに振舞ってくれます。複数のポジションを埋められることは、毎シーズンのように主力にケガ人が出るチーム状況では必要不可欠なベテランでした。アンセルドJr.がやりたいことを理解した2人の加入で、ウィザーズはチームとしてのバランスが良くなりました。

しかし、自ら点を取りに行くタイプの選手を並べてしまう傾向があるのは不安要素です。ビール、クーズマ、ポルジンギス、そして八村塁と得点を取れる選手はいるものの、スペースを作る動きやチームメートのための囮になる動き、ドライブコースを作るためのスクリーンなど、オフボールでの貢献が足りておらず、連動性に欠けています。

ただ、デニ・アブディヤやアンソニー・ギルは献身的な動きでオフボールでもチャンスを作ってくれ、これまでゴール下専門だったダニエル・ギャフォードはハイポストでパスを捌いてチャンスメークするなど、ベンチメンバーはチームに連動性をもたらしてくれています。選手の組み合わせを工夫すれば、これまでになかったケミストリーも生まれてくるかもしれません。

「得点能力」というわかりやすい評価軸で選手を集めていたウィザーズですが、全員でバランス良く得点を奪っていたわけでもなく、チームとしては限界がありました。単純な得点力ではない要素を求めた今オフの補強は成功しただけに、アンセルドJr.はコート上で変化を促す責任があります。狙い通りの戦術が機能するのか、それとも例年通りのバラバラなオフェンスになってしまうのか、変革すべきシーズンです。