「毎シーズンが逃せない機会だが、今シーズンは特別だ」
セブンティシクサーズの昨シーズンは、プレーオフのカンファレンスセミファイナルでヒートに敗れて幕を閉じた。この時、バスケットボール部門代表を務めるダリル・モーリーは「このチームはどうすれば強くなるかが分かっていて、毎試合で成長していた。だからこの時点で敗退したのは残念だ。勝ち進めば絶対にもっと強くなっていた」と悔しさを露わにした。
昨シーズン途中にジェームズ・ハーデンが加わり、ジョエル・エンビードと2本の柱ができた。タイリース・マクシーのように近い将来、新たな柱になるであろう若手の台頭もある。今オフのモーリーはこの柱に肉付けをすべく、PJ・タッカーとダニュエル・ハウスJr.、モントレズ・ハレルを補強して、NBA優勝を狙えるロスターを組んだ。そのモーリーが『NBC Sports』のポッドキャスト番組に出演した。
彼はロケッツのGMだった時期から長く一緒に戦っているハーデンについて、こう話している。「彼はシーズン終了後に『コンディションはまずまず良かった』と言った。実際はハムストリングに痛みを抱えていたが、シーズン中にはケガのことは一言も言わなかった。特にプレーオフになると相手にも味方にも問題は知られたくないものだし、言い訳を作りたがらないんだ」
「私は長くジェームズと一緒に働いてきて、『もう少し正直に痛いと言えばいいのに』と感じたことが何度もある。ロケッツ時代には、足首を痛めて何週間か休まないといけない状態でも何も言わずに連戦をこなしていた。それが彼のやり方だと敬意を持ったものだ」
モーリーは、ハーデンが「あの時の魔法をもう一度かけよう」との言葉でハレルを勧誘したことを明かしている。昨シーズン途中、ネッツでケビン・デュラントとカイリー・アービングとの『ビッグ3』を形成していたハーデンがより優勝の可能性が高いと見てシクサーズに移籍して来たのを機に、モーリーはロケッツ時代に一緒だった選手を集めている。
「あの時の魔法をもう一度かけよう」は、まさにモーリーの思いなのだろう。ヒューストンからフィラデルフィアへと場所は変わり、ハーデンのワンマンチームから『ビッグ3』が当たり前の時代に合わせてハーデンとエンビードの2本柱へとチーム構成は変わったが、NBA優勝という目標に変わりはない。
モーリーは「毎シーズンが逃せない機会だが、今シーズンは特別だ。ハーデンもそれは分かっている」と言う。シクサーズは長らく優勝候補と言われてきたが、プレーオフの経験が足りず、何より一枚岩ではなかった。だが今はその課題をどちらもクリアしている。主力選手にケガさえなければ、確実にチャンスはある。
このところケガ続きのハーデンについて、モーリーはこう擁護する。「ネッツでハムストリングを痛めるまで、ジェームズはNBA史上最もタフに働く選手だったことを忘れないでほしい。このオフ、彼はケガの問題を解決するために全力を尽くしている」
東カンファレンスはこの数年で急激に競争が激しくなったが、シクサーズはそこを勝ち抜き、NBA優勝を手にすることしか考えていない。モーリーもハーデンもエンビードも、気持ちは一つだ。