シモーネ・フォンテッキオ

チームバスケの中でエースの仕事ができる、フォンテッキオがキーマンに

イタリア代表はユーロバスケット開幕直前にダニーロ・ガリナーリを膝のケガで失うアクシデントに見舞われた。大会前のテストマッチはいずれも結果が出ず、チームで一番のビッグネームまで失ったのだから、期待をされなかったのも無理はない。ミラノ開催のホストチームとして早期敗退は許されない状況で格下のチームから堅実に勝ちを拾い、決勝トーナメント進出を決めた。

最後の試合はイギリス相手に90-56で勝利。格下相手に前半は粘られ、会心の勝利とは言い難い。グループリーグは突破したものの、3勝2敗の4位通過は物足りない。それでも代表通算100試合目を勝利で飾ったベテランのニコロ・メッリは「グループリーグを通して堅実な戦いができた。今大会最高のチームであるだろうギリシャ相手に接戦も演じることもできた。今、僕たちは何かを築きつつあると思うんだ。次のセルビア戦では完璧な試合ができると思っているよ」

決勝トーナメント1回戦の相手はセルビア。NBA2シーズン連続MVPのニコラ・ヨキッチを擁し、グループDを全勝で1位通過した優勝候補だ。ガリナーリ不在でグループCををようやく勝ち抜いたイタリアは、決勝トーナメントではホームアドバンテージもなくなり、勝ち目は薄いと見られている。

それでもメッリは「完璧な試合ができる」と語り、ヘッドコーチのジャンマルコ・ポッチェッコも「みんな気持ちの入ったプレーをし、大きなハートを持った一つのグループとして戦えている。セルビアはすべてを持ち合わせているが、私はウチの選手たちを信頼している」とコメントしている。

もともとイタリアは、1人のエースに頼らない。ガリナーリの得点力と経験は頼りになるが、それ以上にチームとして呼吸を合わせて攻守に連動できるかどうかが大事で、それを優先するがためにオリンピックではガリナーリをセカンドユニットに据えていた。グループリーグの5試合を通じて、そこに手応えを感じられているのだとしたら、セルビア相手にアップセットを起こす可能性はある。

実際、昨年春の東京オリンピックに向けた世界最終予選では、1枠しかない出場権をセルビアを倒したイタリアが手にしている。この時はヨキッチを始めNBAでプレーする選手が不在だったことを差し引くべきだが、イタリアも若い力の成長という上積みがある。

ガリナーリの穴を埋めるエースは26歳のシモーネ・フォンテッキオで、ここまで5試合で19.2得点を記録。ヤニス・アデトクンボ、ルカ・ドンチッチ、そしてヨキッチといった『NBAのモンスター』ほどのインパクトは望めないが、イタリアがイタリアらしい戦い方をする中でエースの役割を果たせる選手だ。

オリンピック最終予選の屈辱的な負けの記憶があるだけに、セルビアに油断はないだろう。だが、イタリアは相手の油断を必要としてはいない。もともとユーロバスケットはスターパワーよりも大会を通じて熟成されるチーム力がモノを言う大会。イタリアのやり方がスター軍団セルビアを上回ることはないとは言い切れないはずだ。