チェコ戦では34得点を記録、新天地ジャズへの活躍に繋げたい
フィンランド代表は、NBAのオフシーズンになって加わったラウリ・マルカネンの力強い活躍もあり、ワールドカップ予選では4試合を残して来年の本大会出場を決める好調ぶりを見せています。世界ランキング35位のチームを躍進に導くマルカネンですが、ドノバン・ミッチェルとのトレードでジャズに移っており、激動のオフとなっています。
2017年のNBAドラフト1巡目7位で加入したブルズでは再建の中核としてチームに組み込まれ、2年目には平均18.7得点を記録したものの、次第にブルズは個人技中心のスタイルにシフトし、マルカネンは成績を落としていきました。キャバリアーズへ移籍した昨シーズンはスモールフォワードとして3&Dのような役割を担い、主役の座を狙っていたはずが、実際はロールプレイヤーの印象が強くなりました。彼にとって今回のジャズ移籍は、再び主役へと返り咲くチャンスかもしれません。
フィンランド代表でのマルカネンは主にセンターとしてプレーし、自身が動くことでスペースを生み出します。得意のアウトサイドシュートでディフェンスを引き出しては、ドライブやカットプレーでインサイドを攻め込む、センターでもパワープレーを挑むのではなく、マッチアップ相手が苦手とするプレーへと誘い込み、様々な手段で得点を重ねていくマルカネンは、フィンランドの絶対的なエースとして戦術の中心にいます。
マルカネンはシュート力、ドライブ力、高さ、フィジカルなど、一つひとつのプレーはNBAのスターとしては物足りない一方で、すべてがハイレベルにミックスされています。フィンランド代表ではオフボールで動き回りキャッチ&シュートを狙いつつ、シュートを打たせないようにスイッチしてきたマークマンに対して、高さやスピードのミスマッチを使ったアタックを繰り出す流動的なプレーで、止めるのが難しいオフェンス力を発揮しています。
セルビア戦ではニコラ・ヨキッチとのマッチアップになりましたが、オフボールのスピードで振り切り、次々とアウトサイドからシュートを放ちました。まさにヨキッチの弱点を突くプレーでしたが、対するヨキッチは多彩なオフェンススキルで得点を奪うだけでなく、自らが作ったスペースをチームメートに使わせ、フィンランドのディフェンダーの動きの逆を取るパスを連発して格の違いを見せつけました。ただ、マルカネンが1on1では一歩も引けを取らずに戦っても、敵味方関係なく周囲の選手を巻き込んでしまう能力でヨキッチに完敗しました。
1勝2敗と黒星先行で迎えたチェコとの試合でマルカネンは、セルビア戦とは異なりインサイドでのアタックを増やして14本のフリースローを手に入れ、試合終盤にはステップバック3ポイントシュートに速攻でのアリウープダンクで試合を決めました。負ければ5位転落の可能性もあった大一番でステップアップしたマルカネンは34得点10リバウンドの大活躍でエースの責務を果たし、フィンランドに決勝トーナメント進出をもたらしました。自らの特徴が出しやすい戦術の中で、ここまで25.5得点と得点面で明確な結果を残しています。
ジャズはフィンランド同様にビッグマンが流動的にポジションチェンジしていくイタリアから、シモーネ・フォンテッキオを獲得しており、マルカネンと似たような選手を集めています。マルカネンは自身に合った戦術で、大きな役割を担うチャンスとなりそうです。まずはユーロバスケットで結果を出し、自らのプレースタイルへの自信を深めることで、NBAでも新たな飛躍を期待したいところです。