納見悠仁

パス重視の考えが強すぎて、積極的に欠けてしまったプレシーズン初戦

川崎ブレイブサンダースは8月27日、プレシーズンで福島ファイヤーボンズと対戦し106-69で快勝した。第1クォーターは両チームともに3ポイントシュートを入れ合って互角の出だしとなったが、川崎は新戦力のマイケル・ヤングジュニア、藤井祐眞のドライブで得点を重ねて抜け出す。さらに鎌田裕也の3ポイントシュートでリードを2桁に広げた。その後も1対1でしっかりと守り切ることで福島のオフェンスを抑えると、着実に得点を重ね前半で47-25と突き放した。後半に入っても個々のタレント力で上回る川崎が危なげない試合運びで勝利した。

この試合は川崎にとってヤングジュニア、納見悠仁のお披露目ゲームとなった。プロになって川崎が通算11チーム目となるヤングはその豊富な経験を生かし、合流直後にも関わらずらしさ全開で、スピードとクイックネスを生かしたドライブを仕掛け、チームが期待する攻撃の起点やハンドラーとしての持ち味を発揮して15得点5アシストを記録。一方、納見は連携ミスから来るターンオーバーなどもあって消化不良の印象が強かった。

川崎の藤井、ニック・ファジーカスの2大エースを軸にした昨シーズンからの残留組によるチームバスケットボールはリーグでも随一の完成度を誇る。ただ、それでも頂点に立てなかったからこそ、ヤング、そして納見がそれぞれの持ち味を発揮し、チームに新たな強みをどれだけ与えられるかは来るべき新シーズンにとって大きな注目点だ。

今日の納見は、「個人として前半はパス重視の考えが強くなってしまってミスに繋がり、打てるチャンスで打たずにシュートチャンスを逃してしまうことがたくさんありました」と語るように自身の強みを出すことができなかった。

もちろん、チームとして始動したばかりで、周囲との連携はこれから構築していく段階だ。特に川崎のように長く一緒にプレーしている選手が多く、すでにコンビネーションが確立されている中に新たな司令塔としてすぐにフィットするのは簡単ではない。

佐藤ヘッドコーチもこういった背景を踏まえ、今日の納見についてはこう語った。「納見に関してはポイントガードなのでいろいろなことを考えながらやっていると思います。それぞれの選手の特徴、ウチのシステムの強み、弱みだったりを整理しながらコントロールしていかなければいけないので、これからどんどん良くなっていくと思います」

ただ、そんな中でも第4クォーター途中に見られたように、ピック&ロールから積極的に3ポイントシュートを打ちにいくなど、仕掛けている時の納見は藤井、篠山竜青の2人とは違う個性を発揮し、チームの良いスパイスとなっていた。この積極性こそ納見が求められているものであり、本人も自分のやるべきプレーと意識するものだ。

「途中、3ポイントシュートを打った時は、打とうという気持ちをより持ってプレーしていた時間帯でした。それをもっと出していければ、もっと気持ち良い流れでシュートセレクションができると思います」

そして、これからの開幕に向けての取り組みで重視していきたい部分を語る。「川崎はチームとしてプレーを遂行しているところをすごく感じますし、ピック&ロールのプレーが多いことで自分の良さが生きます。そして今まで培ってきたモノ、自分の良さを出していくことで、相乗効果を生み出していきたいです。藤井さん、篠山さんも『もっとアタックしていいよ』と言ってくれています。積極的に攻めることができたらもっと噛み合うと思います」

藤井、篠山というチームを熟知し、実績十分の司令塔の中に入って出場時間を勝ち取るのは簡単なことではない。ただ、川崎の進化のためには、納見がそれを成し遂げる必要がある。まだまだこれからではあるが、納見のもたらすことのできる新たな力の片鱗も確かに感じることができた今回の一戦となった。