松島鴻太

2026年にスタートする新B1に入るためにも今、Bリーグでは少なくないチームが経営体制の変更など積極的に動いている。京都ハンナリーズもその内の1つで、7月1日から自動車の正規ディーラー業を中心とする株式会社マツシマホールディングス、ホテルや駐輪場の建設、運営を手掛ける株式会社アーキエムズによる共同経営体制に変わり、マツシマホールディングスの常務取締役を務めていた松島鴻太氏が新社長に就任している。自身もラグビー選手として東海大仰星高校、東海大、トップリーグのコカ・コーラレッドスパークスでプレーと素晴らしい経歴を持つ31歳の若きリーダーに、京都をどのように進化させていきたいかを聞いた。

コンディショニング部門を統括するのは武豊の専属トレーナー

──現状、京都はチーム成績の競技面、観客動員数が示すビジネス面ともにB1の中で厳しい状況に置かれていると思います。今の立ち位置をどのように見ていますか。

率直に自分たちが苦しい状況にいることは理解しています。ただ、これまでのハンナリーズは他の多くのチームと比べて半分くらいしか社員がおらず、皆さん本当に一生懸命に取り組まれていましたが、マンパワーの問題でやるべきことをやりきれていない部分がありました。しかし、経営体制が変わり人材を新たに投入したりと、経営母体の2社でできることをカバーしていくことで、様々な制約からできずにいたことを実行していきます。その中で失敗することもあると思いますが、そうやって経験を積んでいくことが大切です。

この新しいチャレンジの一つとして、これまで不足していたホームタウンとの交流を担当する部署を新設し、3名を配属しています。ここで1年365日の内、300日は地域とその子供たちとコミュニケーションを取る状態を作りたいと思っています。SNSを駆使するなどのデジタルマーケティング、プロモーションはもちろん大事なので行っていきますが、ベースとなるのはリアルな交流ができる地上戦であり、そこをまずはやり切りたいです。

――競技面でチーム編成についても聞かせてください。今シーズンの京都はロスターもより若返りを加速させた印象があります。

ロイ・ラナヘッドコーチと渡邉拓馬GMと3人で、常に優勝を狙えるチームになるための体制を作りたいと取り組んでいます。ラナヘッドコーチは経営状況、クラブの新たな文化を構築していくための初年度であることをすごく理解してくださっています。育成にも長けているコーチの下、日本人は若いメンバーで構成していますが、自分たちがチームを作っていくんだという気概を持って戦ってほしいです。一方で外国籍は実績、実力を備えた選手たちを獲得できました。彼らを中心としながら若手選手が伸び伸びと活躍できるチームを目指しています。現場としっかり意思疎通ができているので、大きくメンバーは変わりましたが不安は全くないです。

──松島社長は元トップアスリートで、『テイクフィジカルコンディショニング』というジムの代表取締役でもあります。今シーズンの京都は、トレーナーなどコンディショニング関連のスタッフを大きく強化している印象が強いです。

昨シーズンのハンナリーズはケガ人が多く、年間を通してなかなかベストメンバーで戦えなかったと聞いています。Bリーグは本当に過酷な日程で戦っているので、コンディショニングについてはすごく気になっていました。テイクフィジカルコンディショニングには、日本を代表する騎手である、武豊さんの専属トレーナーを務める長谷川(聡)がおり、彼にコンディショニング部門を統括してもらいます。また、9月からもう1人、理学療法士を常任させるつもりで、年間を通して戦えるベースをしっかり作り、そこにプラスアルファでストレングスを強化していく考えです。

トレーニング環境も以前はあまり良くなかったですが、テイクと提携している病院にスペースを借りることで、いろいろなことができるようになりました。選手たちには、しっかりと自分の身体と向き合い、追求することによって能力がより上がっていくことに気づいてほしいと思っています。他のクラブと比較しても、トレーニングとコンディショニングに対するこだわりが見えるチームにしていきたいとトレーナー陣と話をしています。そうなることで選手たちから良い評価を得られれば、いずれは選手獲得の際にもプラスに働くと思います。

松島鴻太

ファミリー層、若者層を取り込み、シーズン平均観客動員数3000人を目指す

──経営体制が代わると、オーナー会社が積極的に資金をチーム強化に使うケースも見られますが、京都はどんな方針ですか。

正直に言うと、我々にはこのようなやり方はできないです。資金力も違いますし、オーナー会社に頼らない自立した健全な経営を目指します。私に課せられているミッションとして、しっかり自分たちで稼いだお金で運営していくことがあります。応援してくれる方を増やしていき、その結果としてチケットがより売れ、パートナー収入も増加していく。それで得た資金で選手の人件費だけでなく、社員にもしっかり投資して労働環境を整えることで、クラブの価値をどんどん上げていく必要があります。まずはお金を稼げる企業にならないといけないですし、オーナー会社の力でどんどん資金を投入しても球団の力にはならないです。ただ、もちろんある程度の初期投資は必要なので行っていますし、今シーズンに関して選手の人件費も昨シーズンから増やしています。

──ビジネス面の肝となる観客動員について、具体的な目標はありますか。

新B1参入を直近の最大目標とし、来季は4000人の集客を目指し、今季は3000人と設定しています。目標達成の為の戦略は主に3つあります。まずは昨年までやり切れていなかったファミリー層についてです。ホームタウン活動によって子供たちに興味を持ってもらい、試合を観に行きたいと思ってもらう。そして、家族で週末のゲームを観戦しに来てもらうようにしていきたい。ここはホームタウン活動の推進によってかなり結果に反映されると思っています。

あと圧倒的にハンナリーズに足りないのが若い世代です。京都は大学生の街であり、インターン生を積極的に募集しチーム運営に携わってもらうことで我々の熱量を伝えていく。こういった学生向けプロジェクトを推進していくことで、学生の皆さんは情報発信力があるので、彼らの中で『京都ハンナリーズの試合は面白いらしいで』という空気感を作れば若者層のお客様も増えていきます。

もう一つはパートナー企業様に提供しているチケットの消化率が約30%とかなり低いので、そこを限りなく100%に近づけることです。応援してくださる企業の社員の皆さんは、大切な潜在的顧客だと思っています。そこに対してアプローチをかけてファンになっていただく。こうしてハンナリーズを応援する社員が増えることは、パートナー企業様にとってもうれしいことだと思います。この点に関しては営業人員を強化しており、日々の顧客フォローを続けることで必ず成果が出てきます。

──ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

我々は本気でチャンピオンを目指しますし、常にチャンピオンを狙っていけるチームを本気で目指しています。今の段階では笑われるかもしれないし、突っ込まれると思いますが、そういう問題ではなく、やはりトップがそういう夢を持ってチャレンジしないと何も始まらないと思います。その話は選手たちにもしています。

そして、京都ハンナリーズに関わる皆さん全員でこの夢を共有して、喜怒哀楽をともにしながら一緒に歩んでいきたいです。口だけにならないように今シーズンはいろいろな部分で結果を示すことはもちろん大事だと思っています。京都の街を夢と感動で巻き込み、熱狂させていく。これが地域貢献であり、恩返しだと思っているので、どうぞ温かい応援をこれからもよろしくお願いします。