指揮官ホーバスは「彼の成長に興奮しています」と絶賛
アジアカップ2022、男子日本代表はベスト8でオーストラリア代表に85-99で敗れた。ただ、第3クォーター終了時点で54-75と大量リードを許す中、最終クォーター途中には9点差に縮めるなど粘りを見せた。得点、リバウンド両方でチームの要となった絶対的エースの渡邊雄太を故障で欠く中、優勝候補を相手に食い下がることができたのは富永啓生の大爆発があったからこそだった。
第1クォーターでいきなり3ポイントシュートを3本成功など波に乗ると、前半だけで17得点をマーク。その勢いは後半になっても止まらずにハーフコート付近からの超ロングシュートを沈めるなど、試合全体で3ポイントシュートを15本中8本成功させゲームハイの33得点を記録した。
強烈なインパクトを残した富永だが、ベスト8進出決定戦のフィリピン戦では3ポイントシュートを4本全て失敗、わずか13分の出場で無得点と沈黙していた。この雪辱を果たそうと強い決意でオーストラリア戦に臨んでいたと明かす。「前回の試合、シュートタッチが合わなくてチームを救えなかったのは本当に悔しかったです。今日は切り替えてやっていくことを試合前から決めていました。そしてタッチが良くて打ったら入る感覚でした。また、中と外で得点が取れたので相手が守りにくかったと思います」
Window3、そしてアジアカップでのプレーで、富永は日本代表にとって随一のシューターであることを証明した。6月に行った若手対象のディベロップメントキャンプから1カ月半に渡って彼のプレーを見ていた指揮官トム・ホーバスは「傑出したシューターであり、自信と強い気持ちを持っています」と、富永に大きな信頼を寄せる。そして、これからの課題として、プレーの安定感を高める必要があると見ている。「彼は前の試合でシュートが入らず、今日の試合は大爆発でした。若いシューターは調子の激しいもので、彼も同じですが、それを可能な限り小さくしたいです」
実際、富永の3ポイントシュートは大会通算で46本中19本成功、成功率41.3%と見事な数字だった。しかし、23得点を挙げたシリア戦と今回のオーストラリア戦の2試合で26本中15本成功と大当たりだったのに対し、残りの3試合では20本中4本成功のみ。シュートは水物とはいえ、当たった時とそうでない時の落差が激しかった。
「もっとフィジカルを鍛えてアメリカでもやっていきたい」
ただ、そういったネガティブな面よりも、長距離砲だけでなく中に切れ込んでも得点を取れる多彩なオフェンス能力など、光る部分の方が目立っている。そして、懸念していたディフェンス面についても、良い意味で予想を裏切っていたとホーバスは続ける。
「今日は絶好調でほぼハーフコートからもシュートを決めました。彼の成長に興奮しています。良いシューターであり、ポンプフェイクを使うのもうまく、ペイントに入って得点を取ることもできる。時々、フェイクを使いすぎる時もありますけどね(笑)。(代表参加の前から)ディフェンスについてはかなり気になっていて、まだ取り組まないといけない部分はあります。でも思っていたよりも良かったです」
大きなインパクトを与えた富永はアジアカップをこう総括した。「本当に負けたのは悔しいですが、最後まであきらめずに戦い抜けたことは自信に繋がりました。この1カ月半、チームメートのみんなと一緒にやってきて日々、成長できたと思います。この経験を忘れずにこれからもやっていきたいです。みんなのことを誇りに思いますし、とても楽しかったです」
そして、今秋から始まるネブラスカ大での2シーズン目に向けてこのように意気込んだ。「5人制の代表はU18以来で久しぶりですが、この1カ月半、本当にレベルの高い環境で練習、試合をして良い成長ができました。ここで得た自信を持って、もっとフィジカルを鍛えてアメリカでもやっていきたいです」
富永の在学するネブラスカ大はNCAAでも一番レベルが高いと言えるBIG 10カンファレンスに所属する。日常で世界標準のタフさ、激しさを経験できる環境で、さらにスケールアップした彼の姿を再び代表で見れるのが今から楽しみだ。