「チームをとても誇りに思います。最後まで決してあきらめずにプレーしてくれました」
アジアカップ2022、男子日本代表はベスト8でオーストラリア代表に85-99で敗れ大会を去ることになった。優勝を目指していたチームにとって、この結果はもちろん満足できるものではない。しかし、前の試合で負傷した絶対的エースの渡邊雄太を欠き、全く同じメンバーではないにせよ、今月初めのワールドカップ予選Window3で52-98と何もできず大敗した相手に食い下がることができたのは大きな収穫だった。
特にこの試合で目立ったのは代表経験の少ない若手のステップアップだった。試合の立ち上がり、攻守ともにオーストラリアの圧力に負け3-15の悪い流れを食い止めたのは、ベンチから投入された河村勇輝、富永啓生、吉井裕鷹、井上宗一郎とWindow3でフル代表デビューを果たしたばかりの若手カルテットだった。河村の鋭いパスから富永、井上が3ポイントシュートを決め、吉井が持ち前のフィジカルを生かしディフェンスの強度を上げることで、日本は悪い流れを断ち切ることができた。
その後、オーストラリアもすぐに立て直し、第3クォーター終了時点では21点差にまで突き放されてしまう。しかし、第4クォーターに入ると本日33得点と大暴れの富永を軸に富樫勇樹、井上らが3ポイントシュートを沈め残り4分で9点差にまで縮めるなど、最後まであきらめない姿勢を見せたのはこれからに繋がる明るい兆しだ。
指揮官トム・ホーバスは敗戦の悔しさはある中でも「まず、チームをとても誇りに思います。最後まで決してあきらめずにプレーしてくれました」と、選手たちの奮闘を称えた。
そして、次のように試合を振り返った。「今日のゲームプランは速いペースで試合を進めていくことでした。そしてフィジカル、リバウンドで負けないことでした。望んだような立ち上がりとならなかったですが、ベンチメンバーたちの前半は素晴らしかったです。彼らがすべてを変えてくれて挽回し、先発メンバーも続いてくれました。ただ、オーストラリアのような相手には、自分たちのプレーを40分間続けないといけないです。それができないのならトラブルに陥ってしまいます」
「パズルを埋めるための様々なピースを見つけることができました」
さらに指揮官は、後半の追い上げについて大きな手応えを得ている。「ハーフタイムでは戦術について触れず最後まで自分たちのスタイルで戦おう。100%の気持ちを出してほしいとかなり熱い話をして、選手たちはそれに応えてくれました。後半はボールプッシュを続け、見ていて楽しかったです。試合に負けるのはいつも辛いです。ただ、チームが成長した試合で、悪い気分にはなっていないです」
6月に42名の代表候補が発表された時、ホーバスは7月のWindow3とアジアカップ、8月の強化試合とWindow4は大きくメンバーを変えて臨む方針を明らかにしている。よって1カ月以上に渡って活動した今の代表はここで一区切りとなるが、指揮官は少なくない選手の台頭があったと語る。
「富永、吉井に井上と若い選手たちが成長してくれました。また、須田は若くないですが、大きくステップアップしました。これから間違いなく彼を起用することができます。彼らが全力を出してそれぞれの役割をこなす姿は素晴らしかったです。パズルを埋めるための様々なピースを見つけることができました」
日本代表は健闘したが、一方でオーストラリアはセーフティリードといえる3ポゼッション差以上をずっとキープしており、相手を慌てさせるまでに至らなかった。また、3ポイントシュートが43本中20本成功、成功率46.5%と爆発する理想的なオフェンスができたが、サイズで上回るオーストラリアにペイント内得点で14-36とインサイドを支配されつつ、34本中16本成功、成功率47.1%と自分たちより高確率で3ポイントシュートを決められてしまった。来年のワールドカップで世界の強豪相手に勝利を挙げ、アジア最上位になってパリ五輪の出場権をつかむという目標を考えると、不安はいろいろとある。
だが、それでもこの試合はホーバスの代表チームが発足してから最も可能性を見せてくれた。指揮官は、次のような効果をもたらしてくれることを期待する。「チームとして前に進むことができたのは素晴らしいです。私たちは成長しましたし、ファンの裾野も広がってくれる。皆さんは私たちを今までより信じてくれるようになったと思います。ファンの方たち、相手からよりリスペクトされるのは日本のバスケットボールにとって大きなことです」
記者会見の最後、ホーバスは「日本バスケットボールの未来に興奮しています」と締めくくった。8月の代表チームが、この興奮がさらに高まる戦いぶりを見せてくれることで、より競争が激しくなりチーム力が底上げされることを求めたい。