セルティックス

文=神高尚 写真=Getty Images

昨シーズン成績
55勝27敗(東カンファレンス2位)、東カンファレンスファイナル敗退
主な加入
なし
主な放出
グレッグ・モンロー、ショーン・ラーキン

リーグ最高の戦力でどんなオフェンスを構築するか

ここ数年のオフとは異なり、目立った補強のなかったセルティックスですが、昨シーズンの開幕戦でシーズンを棒に振るケガをしたゴードン・ヘイワード、MVP候補にも挙げられる活躍をしながら古傷の手術が必要となったカイリー・アービングが復帰したことは大幅な戦力アップです。

チームの中心であるオールスター選手2人の離脱は痛かったものの、それでプレータイムを得たジェイレン・ブラウン、テリー・ロジアー、そしてジェイソン・テイタムといった『未来の』オールスター候補がブレイクしました。その結果、今シーズンのロスターはリーグ最高の戦力と言えるものになりました。東カンファレンスファイナルまで進んだ戦力に2人のオールスターが加わり、NBAの頂点を目指すシーズンとなります。

ヘッドコーチのブラッド・スティーブンズは類い希な観察眼を持ち、選手交代、戦術変更、フォーメーションのチョイスといった試合中の的確な指示をするだけでなく、起用されたベンチメンバーが思い切りの良いプレーで活躍するなど選手のモチベーションコントロールにも優れています。スター選手が多く揃ったロスターでも、選手は不平不満を口にすることなく、与えられたプレータイムで最善を尽くそうとするでしょう。

オフェンス面でチームの強みはリーグ2位の成功率を記録した3ポイントシュート。アウトサイドシュートが得意な選手を集めただけでなく、それまで打ってこなかったアーロン・ベインズさえも高確率で決めるなどフリーの選手を作って迷わず打たせていきます。プレシーズンではさらにアテンプト数を増やしました。

一方で3ポイントシュート以外のオフェンス面は優勝を目指すには改善すべき事項が多く、リーグ21位のフィールドゴール成功率、20位のアシスト数と低い数字が並びます。3ポイントシュートを武器にしてディフェンスを広げ、そこからドライブしていくパターンを好みますが、ゴール下まで切り込んで打つ選手が少なく、ミドルシュートを選択することが多いのが難点でした。多彩かつ高確率なシュートスキルを持つアービングと、判断力に優れたヘイワードの2人には、ドライブで切り崩して得点することが期待されます。

同時にリーグ20位だったフリースローアテンプトも増やしたいところ。上位チームでセルティックスよりもアテンプトが少なかったのはウォリアーズのみです。ファウルをさせずにアウトサイドから決めきるか、インサイドへ攻め込んでファウルをもらうかは判断の分かれるところです。しかし、セルティックスの得意技は誰もが得点できる選手層を生かして、有利なマッチアップを見極め、相手の弱点を利用していくことであり、アイソレーションの機会も多くファールをもらうことも重要です。

リーグ屈指のロスターが、それに相応しいオフェンス能力を発揮できるか。NBA優勝を目指す上での一番のポイントとなります。

手薄なインサイドと豪華な布陣への悩み

不安材料はインサイドのディフェンス力。豪華な布陣である割に、ビッグマンでタレントと呼べるのがアル・ホーフォードしかいません。プレーオフ1回戦ではヤニス・アデトクンボの高さに苦戦しただけに不安が残ります。ジョエル・エンビートやマイルズ・ターナー、ドワイト・ハワードなどビッグマンで押し込む力を持つ東カンファレンスの上位チームを相手に、インサイドをどう守るのか。あるいはスピードとアウトサイドシュートを使ってオフェンスで上回ることを目指すのか、判断が分かれそうです。

また、ディフェンスで中心的な役割を果たしたマーカス・スマートとブラウンのプレータイムも気になるところ。昨シーズン、ビッグマンが不足気味だったにもかかわらず、ガードながらフィジカルなディフェンスを厭わない2人の存在がチームディフェンスを支えていました。豪華な布陣の中でディフェンスの名手がプレータイムを減らす可能性があるのです。

豪華すぎる選手層ゆえに生じる悩みがあるセルティックス。いずれもヘッドコーチのブラッド・スティーブンズの手腕が問われるところですが、そこを心配するファンは誰もいないでしょう。就任以来、毎年大きくメンバーが変わりながら、着実に成績を伸ばしてきた若き指揮官への絶大な信頼こそがセルティックス最大の武器なのです。豪華なメンバーと優秀なヘッドコーチが揃い、優勝が現実的な目標となった勝負のシーズンが始まります。

+++++注目すべき『脇役』+++++
アーロン・ベインズ 豪華なメンバーの中で地味な役割をこなすセンターだが、昨シーズンのディフェンスレーティングはチーム最高。スター達を輝かすために身体を張る役割を受け持ち、縁の下でチームを支える。